鳥栖戦で復帰した小川 ©J.LEAGUE PHOTOS
5月3日のルヴァンカップ・サガン鳥栖戦を1-0で勝利したヴィッセル神戸。3連勝でグループステージ突破へ大きく前進した。リーグ戦ではなかなか出場機会のなかった右SB藤谷壮やCB北本久仁衛らが出場し、長いシーズンを戦うための選手の底上げも着々と進行している。
その中で、J1リーグ第3節の仙台戦で鎖骨骨折により戦線を離れていた右SHの小川慶治朗が復帰。約20分の出場だったものの、本拠地ノエスタに詰め掛けたファン・サポーターに元気な姿を披露した。
試合後のミックスゾーンで感想を聞くと、開口一番に飛び出してきたのは「バテました(笑)」というコメントだった。
「最初のダッシュですでにバテましたね。自分のプレースタイルは走ることが欠かせないので、試合に出て、ゲーム体力を戻すようにしていきたい」
2週間ほど前から部分的に練習には合流していたが、しっかり全体練習に合流したのは試合2日前。「だから、(鳥栖戦で)試合に出るのも、ベンチに入ることさえ聞かされていなかった(笑)」と話す。
それでも試合に出れば、持ち前のスピードを生かして鳥栖にハイプレスをかけ、相手が嫌がるアタッカーの片鱗を見せた。
そんな小川の復帰をネルシーニョ監督はあたたかく見守った。試合後の経験でこう発言している。
「(復帰は)彼が一番うれしく思っているでしょうが、チームにとってもポジティブな出来事になりました。試合勘を取り戻すのは大変だと思いますが、全員でサポートしていきたい」
とはいえ、同じポジションにはライバルがひしめく。不動の左SHになりつつある大森晃太郎を除き、小川と同じ右SH候補には、コンディションを上げてきたウエスクレイ、リーグ戦で2得点を挙げている中坂勇哉、変幻自在のドリブラー小林成豪らタレントも豊富。「(鳥栖戦で)自分が復帰したことで攻撃陣にはいい刺激を与えられたと思う」と話した小川だが、スタメン復帰となるとかなりの“イバラの道”と言わざるを得ない。
だが、この試合後コメントを聞いていて、ふと思い出した言葉がある。シーズン開幕前に小川が話していた言葉だ。
「(大型補強で競争が激しくなるが)なんだかんだ僕がスタメンでピッチに立っていると思う。それを狙っているし、そうなると信じている」
小川の魅力は、スピードや運動量などいろいろあるが、その中でも最高はやはりこの“強気”である。神戸のエース番号『13』を彼が背負っている理由もここにある。
文=白井邦彦