DF遠藤航が導き出した答えは「ボランチ」だった。日本代表、そして1年後に迫ったロシア・ワールドカップを見据えた時、自分が勝負できるのは中盤であると。今年3月のW杯アジア最終予選で追加招集を受けた遠藤は、練習後の取材エリアでこんなことを言っていた。
「(ヴァイッド・ハリルホジッチ監督に)クラブでもボランチで出てほしいと言われました。クラブの事情もあるけれど、自分もボランチをやりたいと思っている」
与えられたポジションで自分の役割を果たす。それがこれまでの遠藤のスタンスだったはずだ。あえて公の場で発した「ボランチ」宣言にはどのような意味が込められているのか。遠藤は意外なほどあっさりとその真意を明かしてくれた。

インタビュー・文=高尾太恵子
取材協力・写真=ナイキジャパン
■プロでボランチはできないと思った時期もあった
――今季は自ら「ボランチがやりたい」と発言しましたね。
はい、言いました。あえて。
――その「あえて」の部分を教えてください。
自分の中でいろいろと考えたんですよ。移籍1年目は3バックの真ん中で勝負したいという思いがありました。一方で、日本代表のことを考えるとボランチでコンスタントに試合に出ることがすごく大事だと思ったんです。ボランチでリオデジャネイロ・オリンピックを戦って、正直限界を感じました。もっと成長するためには、常にそのポジションで試合に出るしかない。昨年の後半に日本代表メンバーから落ちて、「やっぱりボランチで勝負したほうがいい」という思いが強くなりました。(ミハイロ・ペトロヴィッチ)監督にも自分の気持ちを伝えました。
――なるほど。ただ、加入1年目は3バックの真ん中に専念することで、センターバックとして磨きがかかった部分もあると思います。
守備範囲がすごく広くなりました。このチームは攻撃的でアグレッシブに前に出て行くところが特長なので、湘南ベルマーレで守っていた頃よりも、自分の後ろや横にスペースがあります。そこをしっかりカバーできると、チームとしてバランスが崩れない。カバーリングの範囲を広げる意識を持つようになりましたね。攻撃に関しては、足元の技術や長いボールの精度が高まり、ビルドアップ能力により磨きがかかったと思います。
――セレッソ大阪戦(3月4日J1第2節)での武藤雄樹選手のゴールは、遠藤選手のロングフィードから生まれました。精度の高さを示した場面だったと思います。
裏へのボールは常に狙っています。去年1年間やり続けたからこそ、前の選手が動き出すタイミングと自分の蹴るタイミングが合ってきていると感じています。
――その一方で、センターバックでのプレーに物足りなさを感じたところもある?
それはありますね。最初は「やってやろう」という高いモチベーションを持っていても、慣れてきた時にあまりいいプレーができなくなってくる。自分の中である程度うまくいくと一息ついてしまうところがあって……。これは湘南時代にチョウさん(曹貴裁監督)にもよく怒られていたところです(苦笑)。それにセンターバックとして今以上のものを求めるには、相当のモチベーションを見出さないと難しいと思っています。
――センターバックのスペシャリストになるにしても、それなりの覚悟がいると。
以前はスペシャリストが理想でした。でも、日本代表のことを考えたらやっぱりボランチだと思うんです。
――小、中学生の頃にFWやトップ下をやって、攻撃の組み立てや得点に絡むことの楽しさを知っていることも影響しているのではないでしょうか。
そうですね。ただ、プロで経験を積んでいくうちに「俺、プロでボランチはできないな」と感じたんですよ。
――それはなぜですか?
湘南ではボランチをやることも多かったんですが、自分で納得できるプレーができませんでした。ボランチよりも、センターバックのほうがプロとして活躍できるかもしれない。そんな感覚が自分の中に芽生えてきたんです。それからDFとしての経験を積んで、浦和で1年を過ごして、少し余裕が生まれてきた。そこでまたボランチの面白さや攻撃に関わる楽しさが蘇ってきたんだと思います。もちろんテグさん(手倉森誠氏:リオ五輪日本代表を指揮)がボランチで使ってくれたというのもあります。ルヴァンカップのFC東京戦(2016年10月9日の準決勝第2戦)でボランチとして先発して、ある程度いいプレーができたことで自信も持てました。そういうことが積み重なって、最近はまた「ボランチがやりたい」と思うようになりました。
――手倉森さんはボランチで起用し続けました。
すごく感謝しています。テグさんの中で僕はずっとボランチの選手でした。今でもテグさんと話すたびに「ボランチがやりたい」という気持ちが大きくなります。テグさんの期待に応えるためにも、ボランチとして試合に出なければいけない。でも、チームのことを考えると自分の欲ばかりを出してはいられませんからね(苦笑)。その辺のバランスが難しいです。
――でも、口にしないと伝わらない。
そうなんですよね。だから、今年はまず「ボランチをやりたい」という意思を知ってもらうために、発言しようと決めました。僕はすごくうまいプレーヤーではないけど、つなぎ役としての機能は果たせると思います。シンプルに前に出て味方をサポートしたり、受けたボールを縦につけたり。判断の速さは自分の持ち味だと思うので、効果的なパス出しやポジション取りは絶対にできると思っています。
――ご自身が考える理想のボランチ像とはどういったものでしょう。
守備はもちろん、攻撃でも存在感を出せる選手です。ハードワークができて、繊細なプレーもできる。攻撃の組み立てだけでなく、ミドルシュートの精度も求められますよね。だからミドルシュートの練習をしようと思っているんです。今のところまだできていないですけど(笑)。

■今は我慢の時
――では、ボランチを務めるために現在取り組んでいることはありますか?
特にありませんね。僕は試合に出てなんぼの選手です。実戦でボランチをやらないことには課題も見つからないし、成長もできないと思うから。でも、自分磨きはできる。例えば、体幹トレーニングをして筋肉量を増やしたり。自分でできることは継続してやっています。体脂肪をうるさく言われていますけど(笑)。
――センターバックでプレーしていながら、ボランチとしてのイメージを持ってしまうことはありませんか?
あります。最近は頻繁にそういうイメージをしてしまっていますね。あまりいいことではないと思います(苦笑)。
――それくらい「ボランチをやりたい」という欲が湧いてきているんですね。
はい。もう抑えきれないくらいです。
――先日のタイ戦(3月28日)ではサイドバックが本職の酒井高徳選手がボランチとして出場しました。あの起用は、所属するハンブルガーSVでボランチを任されていることが大きいと思います。
やっぱりそこなんですよね。日頃からそのポジションで試合に出ているか。そこに尽きると思います。
――どうしたら浦和レッズでボランチとして出場できると思いますか?
今は難しいでしょうね。今は阿部(勇樹)さんや(柏木)陽介さんを中心にベテランの選手がチームを引っ張っていますから。でも、あと1、2年したら分からない。世代交代をしなければいけない時期が必ず訪れるし、そこで「遠藤にボランチを任せてみるか」となる可能性だってある。そうなったらいいとは思うけれど、それだとロシアW杯には間に合いません。
――チームのこと、自分がやりたいこと、日本代表やロシアW杯のこと……いろいろなことを天秤にかけるとバランスが難しいですね。
そうなんです。自分のことだけを考えるなら、「ボランチで出してください!」と監督に言い続けるだけでいい。でも、それは違うと思うので……今は我慢ですね。
――最後に、デザインが一新された『ティエンポ』の印象を聞かせてください。
フレッシュさを感じさせるカラーがいいですよね。このスパイクはレザー素材で少しずつ伸びていくので、履いていくうちに自分の足に馴染んでいく。その感じが好きです。DFでも、ボランチでも重要なボールタッチを支えてくれるスパイクだと思いますね。

※『サッカーキング』では2016シーズンより湘南ベルマーレのチョウ・キジェ監督の表記方法につきまして、クラブ側と相談の結果、「曹貴裁(チョウ・キジェ)」とすることにいたしました。
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By 高尾太恵子
サッカーキング編集部


