2017.04.20

【ライターコラムfrom熊本】あらためてその存在を感じさせられた「ホームの力」

熊本地震から1年となる節目の試合で快勝を収めた熊本 [写真]=J.LEAGUE PHOTOS
1971年生まれ。大学卒業後、タウン情報誌の編集者を経て2005年にフリーランスとなり、ロッソ熊本(当時)の取材を開始。現在、「J’s GOAL」「EL GOLAZO」「サッカーダイジェスト」等でロアッソ熊本関連の記事を執筆。その他、webマガジン「kumamoto football journal」(http://www.targma.jp/kumamoto/)も展開中。

 熊本地震の「本震」からちょうど1年という節目の日に、「熊本地震復興支援マッチ」と題して行われた第8節の松本山雅FC戦。ロアッソ熊本はグスタボ、上里一将という今季新加入した選手の2発で連勝中の松本を下し、第4節の福岡戦から続いていた連敗を4で止めた。

 このゲームに臨む直前の状況は、やはり1年前、地震後の1カ月に渡ってゲームから遠ざかり、フクダ電子アリーナでのジェフユナイテッド千葉戦からリーグ戦に復帰した後に4連敗したときと重なるものがあった。

 昨年のこの4連敗は、当然ながらゲームから遠ざかっていたことによるコンディション面の影響もあったわけだが、「勝って地元に元気を届けなければ」という思いが強すぎたことも理由だった。

 そこで選手達は、6月8日にベストアメニティスタジアムで行われた第17節ツエーゲン金沢戦の前夜、宿泊先でミーティングを開いて意見を交わし、本来自分たちがやるべきアグレッシブな姿勢をもう一度表現しようと確認しあったという。その結果が、リーグ戦復帰後初勝利となる5−2の大勝につながった。

 前節の松本戦に臨むにあたってポイントになったのも、チームとして目指す原点のスタイル、すなわち前線から積極的にプレッシャーをかけ、1対1の球際に勝ち、セカンドボール争いで優位に立つことで流れを引き寄せること。それを90分間、ピッチに立った誰もが遂行した結果が、2−0という結果をもたらしたと言える。

 そしてもう1つ言及せねばならないのが、今季最多となる13990人の観客が作り出したホームの雰囲気による作用だ。

 先述した昨年の金沢戦も、試合会場こそ隣県のスタジアムではあったが、フクアリでの復帰戦、日立柏サッカー場での復帰後初のホーム水戸ホーリーホック戦、ノエビアスタジアム神戸でのホームFC町田ゼルビア戦、シティライトスタジアムでのファジアーノ岡山戦と続いた遠方でのゲームに足を運べなかった地元熊本のサポーター、そして鳥栖をはじめとした九州の他クラブのサポーターも訪れ、ホームの雰囲気を作り出していたことが選手達の背中を押した。

真っ赤に染まったえがおスタのスタンド。サポーターの歓声は選手の背中を押した [写真]=Getty Images

 松本戦では、「復興支援マッチ」との位置づけで集客のプロジェクトもあったとは言え、地震の影響で使われていなかったバックスタンドが開放されたこともあって、スタンドはまさしく真っ赤に染まった。松本を率いる反町康治監督は「アウェイでこういう経験をするのもそれほど多くない」と述べ、「たくさんのお客さんによる“熱”が、スタジアムに降り注いだ感じ」と表現している。

 熊本の選手たちにとっても、1年ぶりに見る光景がその足を動かし、背中を押した感覚があったはずだ。インターセプトやシュートブロック、ドリブルでの突破や決定機には大きな歓声が湧き、ジャッジの1つ1つにも反応があるような空間で、今までなら消極的なプレーを選択していたようなシチュエーションでも、より積極的で攻撃的な、思い切ったプレーを選択することにつながっただろう。

 得点こそなかったが何度も積極的な仕掛けを見せたMF嶋田慎太郎は試合後、自身のツイッター(@shin_39ss)で「スタジアムの最高の雰囲気、勝たせたいと願っていたすべての人たちの想いがこの結果に繋がったと思います」と述べている。

 あの日からまる1年が経ち、以前の光景がスタジアムにようやく戻ってきたわけだが、真価が問われるのはこれから。この日と同じような光景を本当の意味での日常にすべく、県民を引きつけスタジアムへと足を運ばせるサッカーを続けていければ、そのホームの力を受けて結果につなぐ、巻誠一郎がいう「いい循環」を生み出していける。

文=井芹貴志

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