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【ライターコラムfrom仙台】苦境の中、闘志でチームを動かした富田晋伍

2017.04.20

鹿島戦では途中出場だった富田 ©J.LEAGUE PHOTOS

 4月7日の明治安田生命J1リーグ第6節・浦和レッズ戦で0-7。12日のJリーグYBCルヴァンカップ第2節・ジュビロ磐田戦で2-0。16日のJ1第7節・鹿島アントラーズ戦で1-4。

 大敗のち快勝のち大敗。浮き沈みの激しかったベガルタ仙台の一週間を終え、富田晋伍は「“球際(での強さ)”“切り替え(の速さ)”“走力”というところを、チームとしても、一人ひとりとしても、もっと意識しないといけません」と、チームが日頃から相手より上回るべき三点について、反省を口にした。


 このコメントが得られた鹿島戦では、富田は後半からピッチに投入された。2015年から主将を務め、プレー面でもボランチとしてチームを支えていた彼がベンチスタートだったのは、体調不良でトップコンディションではなかったからだった。

 浦和戦で大敗し、5日後の磐田戦で仙台の先発メンバーは7人が入れ替わった。富田がベンチから戦況を見守ったこの試合で、フレッシュな選手も加えた試合出場メンバーは勝利した。次の公式戦である鹿島戦までは中3日。この間に奥埜博亮が負傷し、富田は体調不良で試合出場が危ぶまれた。渡邉晋監督は、練習でエネルギーをみなぎらせていた磐田戦の先発メンバー11人の勢いを買い、そのまま鹿島に挑むことを決断した。

 しかし前年のJ1王者には、勢いが通じなかった。逆に仙台は勢いを押し返され、先制点を許した後はチーム内の組織力も崩れ、前半だけで3失点。なすすべなくハーフタイムを迎えた。

 そして後半から永戸勝也とともに投入されたのが、富田だった。復帰したてでのプレーを余儀なくされたが、「前でアプローチしないと相手を自由にプレーさせてしまうので、それを修正しようとしました。多少バランスを崩してでも前にかかろう、ということを心がけて試合に入りました」という意志のもとで、主将はピッチに入った。

 後半からの仙台は、前半とは全く別のチームと言ってよい。全員が猛然と鹿島に襲いかかり、高い位置でボールを奪い、何より逃げるパスやランニングよりも、相手のゴールを目指すそれらが増えた。


富田晋伍

浦和戦後、サポーターへ挨拶に行った際の富田 ©J.LEAGUE PHOTOS

 その中心にいたのが、背番号17。大敗した浦和戦では相手にゴールネットを揺らされるたびにボールを拾ってセンターサークルへ運び、試合後もサポーターの前へ、いつもより近くへチームとともに向かって頭を下げた富田だった。そしてこの試合でも、激しくボールを狩り、周りへの指示を出し、チームを前に進めた。仙台は後半開始5分でクリスランのゴールによって1点を返したが、このゴールが生まれたCKも、遡れば富田のプレッシャーからボールを奪ったところが起点だった。

 結局、この試合をひっくり返すことはできなかった。「点を取るため、流れを作るために試合に入ったのだから、あの1点以外にも作れたチャンスを決めなければならなかった」と悔やんだが、3連敗という重い事実の中にあっても、富田たちは応援を続けたサポーターの前に出て、ミックスゾーンでも誠実に対応した。

 チームが引き上げるまで力強い声援を続けてくれたサポーターに感謝する。「不甲斐ない試合が続いている中でも、自分たちを後押しし続けてくれて……こういう状況ですけれども、まずひとつ、アウェイでも勝点3を目指し、届けなければいけません」。次節のサンフレッチェ広島戦に向けて、また闘志を燃やしている。

文=板垣晴朗

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