2017.04.10

【ライターコラムfrom浦和】“子どもたちを笑顔に” 「日本でももっと」李忠成の思いと行動が形に

李忠成
仙台戦、得点後の李忠成のゴールパフォーマンスには“笑顔”の意味が込められていた [写真]=Getty Images for DAZN
東京都出身。大学卒業後、フリーランスとして活動を開始。現在は主に浦和レッズ、日本代表を定期的に取材しており、翻訳も手がける。

 李忠成の願いが一つの形となって結実した。4月4日、学校給食支援を行う国連の世界食糧計画(WFP)への寄付を目的とした団体「SPOON FOUNDATION(スプーン・ファウンデーション)」がローンチされた。飢餓と貧困に苦しむ世界中の子どもたちをWFPを通じてサポートするのが主な目的となる。

 自分にも何かできることがあるのではないか。元来の熱血漢はそういった思いをずっと抱いていた。

 海外では、社会的に成功を収めた者が利益を社会に還元するのが一般的となっており、サッカー界も例外ではない。李はそういったことが当たり前のように行われているのを実際に目の当たりにしてきた。2012年から14年にかけて在籍していたサウサンプトンで、チームメートが積極的に慈善活動を行っていたのだ。

「僕がサウサンプトンにいた時、ザンビアやケニアの選手がいて、試合が終わった後に自分たちの国に行ってサッカースクールをやったり、スパイクを送ったり、お金や食料を送ったり、そういったことをマメにしていた。それを見ていて、日本でももっとできる人がやっていいと思っていた」

 自分も子どもたちの助けとなれるのなら……。まずは親しい人、チームメートにその考えをぶつけてみた。すると、多くの人たちが好意的に受け止めてくれた。李の熱意は周囲にどんどん波及し、気がつけば志を同じくする者が100人にもなっていた。偉い人たちに言われてやらされるのではなく、自らの意思で仲間が集った。それが李には何よりも頼もしかった。

「この活動は選手から始まった。一つの力はすごく弱いけど、集まって大きな力になれば、何か大きなものが作れるんじゃないかと思ってみんなに声をかけたところ、立ち上がる前に100人の選手たちから賛同を得た。それは奇跡だと思う。J1だけで今、12チームの選手たちが賛同してくれているし、ここからさらに増えていく」

 もう後戻りはできないし、するつもりもない。李は「立ち上がったからこれで終わりじゃなくて、長く続くものを作っていきたい。今回ローンチしたことで寄付金も募れるし、それで助かる子どもたちがいる。長く続ければ続けるほど、多くの子ども達の笑顔が見れるので、本当に楽しみ」と力を込める。

 子どもたちに夢を与えられる存在でありたい。その思いも彼の背中を押している。かつての自分がそうだったからだ。

 今でもはっきりと覚えている。「小学校2年生の時、僕はカズさんに会ったことがある。それは鮮明に覚えている。ホテルで出待ちしてね。その時、カズさんはすごく輝いていた。その姿を見て、僕もスポーツ選手に、かっこいい選手になりたいと思った」。そう話す李の目はやはり子どものように輝いていた。

 李は生粋のストライカーだ。エゴイストでは決してないが、ゴールへの色気は隠そうとしない。「ゴールを決めてヒーローになる」。その実直な欲求が彼を突き動かしてきた。だからこそ、泥に塗れながらも走ることをやめない。ゴールという結果でサッカー人生を切り開いてきた矜持もある。団体設立後の最初の試合となったベガルタ仙台戦では自ら祝砲をあげ、1ゴールごとに5万円を寄付する考えを表明した。

 ゴールを決めたい理由がまた一つ増えた。

文=神谷正明

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