2017.03.13

【東京五輪・2020への予習ノート】「目立たない選手」の枠にはもう収まらない? 現代型のオールラウンダー・原輝綺/第2回

原輝綺
クラブ史上初の高卒開幕スタメンデビューを飾った原。U-20日本代表での活躍にも期待がかかる [写真]=兼子愼一郎
2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

「コーナーのマーク以外は良かったんじゃない」

 開幕戦をアルビレックス新潟の選手として初めて戦い切った高卒新人、原輝綺の下にはそんな“レポート”が届けられたそうだ。差出人は市立船橋高校で3年にわたって共に汗をかき、涙を共有してきた湘南ベルマーレのDF杉岡大暉。原は自身も「やってしまった」と感じていた痛いところをサラリと突いてきた「ライバル」の一言に苦笑いを浮かべつつも、「守備の部分はできる手ごたえがある」とJ1リーグを戦っての感触を語った。

 原の特長は身体能力全般の高さ、戦術理解力の確かさ、一種の“異能”を感じさせる危機察知能力といった点だろう。また、市立船橋で徹底して仕込まれた攻守の切り替えの素早さはJリーグでもしっかり見せている。先日のU-20日本代表候補合宿で生まれた久保建英のゴールの起点となったのも、原のハイスピードな切り替えからの攻め上がりだった。またすでにプロのステージでもボランチとサイドバックをこなせるところを見せているが、市立船橋ではセンターバックとしても非凡なプレーを見せてきた。高校時代の恩師・朝岡隆蔵監督は、そんな原を「本当の意味でどこでもできる選手」と評していた。

 主に攻撃的MFをこなしていた中学時代は「無名も無名」(本人)の選手であり、年代別代表はもちろん東京都でも特に評価されてはいなかった。「厳しい競争をしたくて」選んだ市立船橋でも、当初は当然のように下のチームからのスタート。いきなりAチームに抜擢されていた杉岡の背中を追うように、努力を重ねて這い上がっていった選手でもある。

「自分は目立つ選手じゃないし、目立たなくていいと思っている」

 原の口からよく聞かれる言葉だ。新潟ではボランチの相棒、「ああいう見た目ですけれど、すごく優しい」小泉慶を前に押し出すことを意識していると言う。黒子に徹することをいとわない姿勢はここでも健在で、だからこそ多くの監督からすぐ信任を得られるのだろう。

 とはいえ、本人が思うほどには「目立たない」選手でもない。昨年、初めて年代別日本代表入りした8月のSBSカップ国際ユース大会では、早くも確かな存在感を示した。攻守にアクティブでありながら、スキを見せない現代型のオールラウンダー。内山篤監督が「(アジア最終予選へ)連れて行く選手が見つかった」と語ったのは、明らかに原のことだった。後になって指揮官に聞いたところによれば、「前から市立船橋の試合を観るたび、どうにも気になっていた」ということだった。

 昨年のU-19日本代表では、中盤の守備力を強化したい流れで投入されることが多かった。いわば守備固め要員。ヘディングで競れるボランチが不在だったチームにとって重要な駒だったのは確かだが、攻撃面では物足りない部分も見せていた。それは原自身が、最終ラインでプレーしている市立船橋と、ボランチでプレーする代表との間に意識のギャップを感じていたせいもある。ただ、アジア最終予選終了直後にひたすら自分の課題を整理して、話して聞かせてくれる様子は、レベルアップの予感を感じさせてくれるものだった。

 新潟でのプレーや先のU-20日本代表合宿での様子を観る限り、360度の視野が要求されるボランチでのプレーが、原の板に付いてきた感はある。どこまでも努力家の本人は「ちょっとはやれた」とその手ごたえを控え目に口にしつつ、またも課題を並べてくれた。その上で、こうも言う。

「もっと攻撃の部分でやれることを増やしていきたい。前に出て絡んで、ミドルシュートも決められる選手になりたい」

 もし、Jの舞台でそれをやれるようになれば、本人が言ってきた「目立たない選手」の枠には確実に収まるまい。もっとも、すでに「目立たない選手」ではなくなってきていると思うのだが、まずは5月のU-20ワールドカップで「変化の序章」を目にすることになりそうだ。

文=川端暁彦

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