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【ライターコラムfrom清水】483日ぶりのJ1白星 第2節での初勝利の意味とは

2017.03.09

広島戦で勝利をサポーターと喜ぶ清水の選手たち ©J.LEAGUE PHOTOS

「早く1勝したいですね」

 開幕前からそう言い続けていたのは、角田誠や鄭大世といったベテランたちだった。


 昨年の最後に9連勝して自動昇格をつかみとった攻撃サッカーに対する自信はある。ただ、それが本当にJ1で通用するかどうか考えると、一抹の不安もある。自信を得るには時間がかかるが、失うのは早い。

 若い選手が多いチームだけに、勝てない時期が長くなると、自信を失って、せっかく積み上げてきた自分たちのサッカーを見失ってしまう可能性もある。だからこそ、勝負の厳しさを知るベテランたちは、早く1勝することの重要さを強く感じていた。

 開幕前から不安を増大させるトラブルも続いていた。もっとも痛かったのは、始動時から非常に動きが良く、攻守の要となっていたボランチの竹内涼が、開幕直前に負傷離脱してしまったことだ。そのため攻撃のリズムが停滞し、開幕のヴィッセル神戸戦では硬さやミスも目立って、得点の匂いがしないまま90分を終えた。守備では手応えがあったものの、セットプレーからの失点で0-1の黒星スタート。

 そこに追い打ちをかけたのが、神戸戦で河井陽介が左アキレス腱を断裂し、長期離脱(全治6カ月)になってしまったこと。ボランチの主軸であり、パスの出し手として重要な2人を欠き、非常に苦しい状況に追い込まれた。

 そんな中で迎えた第2節・サンフレッチェ広島戦では、右サイドバックとして起用されていた六平光成をボランチに戻し、まだチームに馴染みきれていないフレイレとの急造コンビでスタートした。アウェイということもあって、本来やりたいボールを支配しながらの戦いはできなかったが、後半立ち上がりで多くのチャンスを作り、その中で得たPKを新キャプテンのエース・鄭大世が決め、今季初得点。虎の子の1点を全員で粘り強く守り切って、2015年11月7日以来のJ1での勝利を挙げた。

 静岡に帰ってきた角田に、ひとつ勝てたことの意味を聞くと、「精神的にも少し落ち着けたと思います。守備に関しては、2試合で1失点は悪くないし、全員で守れば通用するという手応えはあります。ビビることなく落ち着いた精神状態で試合ができると思いますね」と語る。

 新たな10番・白崎凌兵も「(広島戦に向けて)回せないなら回せないで、これでやるしかないという吹っ切れた感じがみんなにありました。我慢する時間は長かったけど、チャンスは何度か作れていたし、あとは数十センチのパスのズレが合ってくれば、チャンスも増えると思います」と晴れやかな表情を見せる。

 開幕前に鄭大世が「組織がしっかりしていれば大崩れしない」と語っていたが、そこはここ2試合で確認できた。GK六反勇治の加入、犬飼智也の成長、角田誠のコンディションの良さなどで、最後の砦も強固になった。攻め込まれても慌てることなく、我慢強く守り切れるようになったことは、降格した2015年とは大きな違いだ。

 だからこそ「あとは攻撃が良くなっていくだけ」(鄭)と言い切れる。「あまり考えすぎずにやれば、ミスも減ってくると思うし、ミスが減れば攻撃が良くなる」(鄭)という感触があるため、試合を重ねるごとに「良くなっていく」という言い方になるわけだ。

 もうひとつ重要なのは、順位的に上と離されないことだ。チームとしての今季の目標は「一桁順位」で、現在は9位。

「16位とか下位にいると、勝つためにおもしろくないサッカーをしないといけなくなる。逆に5位とか6位に上がったら、そういうチームの戦い方になっていく。順位によってサッカーが全然変わるから、広島に勝てたことは大きい」(鄭)

 清水エスパルスは昇格1年目とはいえ、自分たちで主導権を握る攻撃的なサッカーを志している。サッカーの質を上げるという意味でも、早めにひとつ勝てたことは非常に大きいと言える。

 小林伸二監督も「カツカツでもいいから勝点を拾いながら上位グループについていくことが大事です。離されると、ゲームの集中力も落ちていくし、追いついていくのは相当力がないと難しい。その分かれ目が5,6試合やったあたりで来ると思うので、そこで上(トップハーフ)に入っておきたいですね」と言う。

 次のアルビレックス新潟戦は、内容を向上させていくトライを続けながらも、しぶとく、したたかに勝点を拾っていくことが求められる試合。ひとつ勝てた自信を、良い方向に生かせるかどうか。清水にとっては大きな意味のある試合が続く。

文=前島芳雄

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