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Jリーグと『DAZN』の契約で「サッカーがお茶の間から街に出て行くサービスに」

2016.07.20

会見で手を合わせるラシュトンCEO(左)、村井チェアマン(中央)、鵜浦NTT代表取締役社長(右)

 Jリーグは20日、イギリスのPerform Groupによる新たな動画配信サービス『DAZN(ダ・ゾーン)』と2017年から10年間で約2100億円の放映権契約を結んだと発表した。

 今季限りで満了するスカパーJSATなどとの年間推定50億円から4倍以上となる大型契約に、村井満チェアマンは「日本のスポーツ界にとって今までにない期間と金額の投資で画期的な内容」と大きな期待を込める。


 今年3月からスカパー!、ソフトバンクとの3社入札で水面下でのプレゼンテーションなどを行った結果、破格の条件を提示したPerformが放送権を獲得した。これによってテレビ放送が中心だったJリーグ中継が、来年以降はインターネット配信主体に変わっていく。明治安田生命J1リーグ、J2リーグ、J3リーグの全試合を生中継する『DAZN』はPC、スマートフォン、タブレット、ゲーム機などの携帯端末を使い、定額(未発表)の見放題サービスとなる。

 これからの新たな視聴スタイルについて村井チェアマンは「いつでも、どこでも、何度でも、非常に手軽に安価で見ることができる。サッカーがお茶の間から街に出て行くサービスに転換した」と表現する。従来はチャンネル数や放送時間などテレビ側の都合に左右されていたキックオフ時刻も、来年以降は原則的に主催クラブが自由に決めることができるようになる。

 競合する事業では、イングランド・プレミアリーグなどの海外サッカーを始め、プロ野球、大相撲などの動画を配信するソフトバンクの「スポナビライブ」があり、価格は月額3,000円(ソフトバンク利用者は500円)に設定されている。『DAZN』はバレーボールのVリーグ、総合格闘技のUFCを配信することをすでに発表しているが、料金設定は未公表。Perform Investment Japan 株式会社のジェームズ・ラシュトンCEO(最高経営責任者)は「ディナーではなくブランチ程度の金額」と低価格であることを強調する。

 一方で長年にわたって中継し、現在も多くのサポーターが加入しているスカパー!に関して、村井チェアマンは「今のJリーグは正直スカパーさんが育ててくれたと心底から思っている。本当に感謝している。今後もお付き合いがあるかどうかは、Performさんとスカパーさんの話し合いになると思う」と述べ、『DAZN』からサブライセンスを取得して放送を継続する可能性を示唆した。

 また、地上波、無料BS放送はPerformが獲得した放映権の範囲から外れており、NHK、TBSが来年以降も契約を更新すれば、一定の試合数は従来どおりにテレビで無料視聴できる見通しだ。この部分に関して前述のラシュトンCEOは「Jリーグが成長し、ファン層を拡大していくためには有料放送と無料放送のほどよいバランスが重要になってくる」と理解を示す。

 Jリーグは2015年度決算で計上した133億4100万円の経常収益のうち、50億4400万円を放送権料が占めた。これが大幅に増えれば、リーグの運営経費や各クラブへの配分金の増額が可能になる。また、村井氏がチェアマンに就任する前の2013年に「十数億円の減収を避けるため」という理由で、多くの反対を押し切って導入が決まったJ1の2ステージ制について「制約なしにあるべき姿で議論できるようになった。Jリーグの大きなイノベーションに舵を切っていくことができるステージに立つことができた」と、見直しを検討する可能性について言及した。

 年間1,000億円を超えるヨーロッパの主要リーグには遠く及ばないが、日本のスポーツ放映権料では過去最高額になる。村井チェアマンは今年2月に再任された際に「『お金がないからやらざるを得ない』という消去法的な考え方がないように、まずは財政基盤を強化したい」と話していた。一つの大きな目標を達成したが、今回の契約をきっかけにJリーグの魅力を高めるためには今後の取り組みが重要になる。「実力以上の期待をいただいて、多くの借りを抱えているという心境。投資に見合う価値を返していって“Win-Win”の関係になるのがビジネスなので、身の引き締まる思い」としっかり地に足を着けて話した。

文=田丸英生(共同通信社)

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