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清水が直面したJ2の難しさ…求められるのは得点力アップとメンタルの回復

2016.02.29

大前は決定機を決めきれず、不発に終わった [写真]=青山知雄

 クラブ史上初のJ2開幕戦。清水エスパルスは2016明治安田生命J2リーグ第1節で愛媛FCをホームで迎え撃ち、守りを固める相手を崩せずスコアレスドローに終わった。

 クラブの至上命題である「1年でのJ1復帰」に向け、小林伸二新監督の下、始動から昨季リーグワーストの65失点を喫した守備の立て直しを重点的に取り組んできた。


 迎えた愛媛戦、守備では無失点に抑えてさっそく結果を残した。序盤から大前元紀や白崎凌兵、石毛秀樹らが高い位置で猛プレスを掛けてボールを奪い、主導権を握る。中盤で攻守に渡って効果的なプレーを見せた本田拓也は、「切り替えは素早くできたと思う。ボールを取られた後に、2人、3人で囲んでボールを奪い返すことができた」と手応えを口にした。

 センターバックの三浦弦太が「前半の最後にセットプレーでピンチがあったけど、それ以外は全員でコミュニケーション取りながらしっかりと守れた。無失点は評価できるし、今後も続けていきたい」と振り返ったように、危ない場面はほとんど作らせなかった。

 その一方で、攻撃面では課題を露呈した。終始ボールを支配しながら、6本にとどまったシュート数が証明するように、FW阪野豊史を前線に残して10人で守りに徹する相手を崩し切れなかった。

 勝たなければならないJ2開幕戦という独特の緊張感も影響したのか。小林監督は「試合前とハーフタイムにピッチに水を撒くのは昨年から徹底していたことだが、今日、芝に足を取られる場面が多かったのは、緊張からだと思う」と総括したが、FWの軸である鄭大世をケガで欠いたこともあって前線でポイントを作れず、クロスやトラップの精度といった“個の技術”の部分に課題を残した。

 愛媛の木山隆之監督は、試合前に「エスパルスとのアウェイ戦だということを考えると、もし勝ち点3を取れたら6以上、仮に勝ち点1だったとしても3に匹敵するくらいの価値が我々にはある」と選手たちに伝えていた。Jリーグ創設時から“オリジナル10”としてトップリーグで戦い続けてきた清水に対しては、今後も同じようなモチベーションと戦術で挑んでくるチームは増えることが予想される。今季からキャプテンを務める大前は、厳しいゲームを振り返って、「J1のチームでも引いてくる相手はいるけど、今日やってみて、より徹底しているなと思った。それでもブレずに戦って、こういう試合をコントロールできるチームにならなければいけない」と成長を誓った。

「勝ち点1は悪くない」と語った小林監督を始め、選手たちも口々に前向きな発言をしており、チームの雰囲気は良好だ。しかし、「負けない」ことだけでは前へは進めない。昨季リーグ戦34試合で5勝しか挙げられなかったチームのメンバーは大半が残っている。それは悔しさからの巻き返しを期す者同士である一方で、勝ち方を忘れかけてしまった選手たちとも言える。

 カテゴリーが変わってもクラブを愛するファン・サポーターの熱気は変わらず、この日のIAIスタジアム日本平には15,453人の観客が詰めかけ、試合前にはコレオグラフィーが実施された。ホームスタジアムの後押しに小林監督は「これだけ期待されてピッチに立つのはうれしいこと。反面、昨季は苦しい思いをしているので、(勝たないと)手応えがつかめないと思う」と課題を口にしている。

 技術面や戦術理解の向上はもちろんだが、今のチームには一刻も早く“1勝”を挙げて自信を取り戻すことが不可欠。今後は相手の出方に応じた臨機応変な戦い方も求められるだろう。守備を再整備しながら攻撃面を構築していく小林エスパルス。ここから遂げていくであろう進化と変化に注目だ。

文=平柳麻衣

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