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“大卒・即ブンデス”から2年…長澤和輝、千葉への地元愛を胸にJ初挑戦へ

2016.01.25

今季、千葉に加入した長澤和輝 [写真]=内藤悠史

 17日、ジェフユナイテッド千葉の新体制発表イベント「キックオフフェスタ2016」がフクダ電子アリーナで行われた。24選手が退団、19選手が新加入という大改革を断行したチームにあって、サポーターからひときわ大きな歓声を浴びていたのが長澤和輝だ。2009年のJ2降格から早7年。J1の舞台へ帰還できずに苦しみ続ける中、“ドイツ帰りの新10番”にかかる期待はとても大きい。

 2013年12月。専修大学での最後のシーズンを終えた長澤は、プロキャリアをドイツでスタートする決断をした。当時、ブンデスリーガ2部に所属していたケルンへの加入。ユニバーシアード代表を除けば年代別代表選出経験を持たない長澤だが、ドイツの複数クラブから興味を持たれるほど、その能力は高く評価されていた。


「ケルンの練習に参加して印象に残ったのは、日本のチームと全く違って(身体が)大きくて速くて強い選手が多いということ。日本ではできない経験ができたと思う。本当に悩んだ」という長澤。「日本とドイツ、どちらのクラブに行っても自分が成長できる環境があると思うけど、選手としてチャレンジしてみたいという思いで」ドイツ行きを決断した。“大卒・即ブンデス”という挑戦に、多くの注目が集まった。

 2014年1月に渡独。「少しでも早く試合に絡んで勝利に貢献できるように」との言葉通り、長澤はすぐにポジションをつかみ取る。2013-14シーズン、リーグ戦10試合に出場して1アシストを記録。1部昇格と2部優勝に貢献した長澤に、ケルン首脳陣は早くも契約延長を打診した。加入からわずか4カ月後、当初は2年半だった契約期間が2018年6月まで延長された。

 しかし、ここから厳しい道のりが待っていた。1部リーグでの戦いに満を持して臨むはずだったが、2014-15シーズン開幕前の練習試合で左ひざ内側じん帯を断裂。長期離脱を強いられ、リーグ戦初出場は10月まで待たなければならなかった。プロ2年目に残した数字は、リーグ戦10試合出場。「次のシーズンでもう1回チャレンジしよう」と、プロ3年目での奮起を誓った。

 迎えた2015-16シーズン。長澤はなかなかピッチに立つことができなかった。先発どころかベンチにも入れない試合が増え、ウインターブレイクまでのリーグ戦出場はわずか1試合。「環境を変えたほうが良いのではないか」。出場機会を渇望する中、“移籍”という選択肢が現実味を帯びていった。

 そして昨年12月18日、浦和レッズへの完全移籍と、2016シーズンの千葉への期限付き移籍が発表された。ドイツ国内の他クラブという選択肢もあったようだが、長澤が選んだのは国内復帰、地元・千葉でのプレー。八千代高校出身の長澤は、「情報をチェックしていたので状況は知っていた。なんで昇格できないのかと思ってしまうこともあった」と、地元のクラブの動向を気にかけていた。そこへ舞い込んだオファー。「ここでチャレンジしたい。停滞を打破しようというビジョンを聞いて、一緒にやりたいと思った」と、24歳は意を決した。

「ジェフをJ1へ昇格させることに集中している。それしか今は考えていない」

「キックオフフェスタ2016」から4日後。厳しい冷え込みに見舞われる中、千葉の練習場・ユナイテッドパークでは密度の濃いトレーニングが繰り広げられていた。メンバーの半数以上が入れ替わり、始動から10日ほどの段階。自身の存在をアピールしようという思いがぶつかり合い、グラウンドは熱を帯びる。この日は紅白戦も実施されたが、まだチームとしての輪郭は見えていなかった。関塚隆監督は「“名前”でメンバーを選ぶことはない」と、実績や経験、ネームバリューにとらわれない選手起用を明言。横一線での競争を通じて、「勝つ集団」を作り上げようとしている。

 長澤もまた、ひたむきにボールを追っていた。紅白戦では右サイドハーフに入り、絶えず指示を出しながらピッチを駆け回った。「コミュニケーションを取れてきているし、選手たちの特長も少しずつわかってきたけど、まだ何とも言えない。コンディションもこれから」という段階だが、期待感を抱かせるプレーだったことは確かだ。

 専修大学の1年後輩で、3年ぶりに同じチームでプレーすることとなったDF北爪健吾は「ドリブルの推進力が以前より高まっている」と評す。長澤自身は「特にウエイトトレーニングに励んだわけではない」と言うが、2年前と比べて身体は一回り大きくなり、フィジカルは明らかに強くなっている。北爪も「フィジカルをやらないと、向こう(ドイツ)では戦えないんだろうなと。身体を見てそう思った」と、その変化に言及。「あとは、自分を含めた周囲の選手がどれだけサポートできるか、だと思っている」と、絶対的な信頼を口にしていた。

 そしてもう一つ、北爪は長澤加入がチームにもたらすポジティブな要素を語った。「練習に取り組む姿勢ですね。“和輝くん、相変わらずだな”という感じ」。

 専修大学の源平貴久監督は以前、長澤について「練習に取り組む態度や試合に臨む準備、そういった部分の全てでチームをけん引できる選手。専修大学はもともと弱小チームで、彼1人の力で強豪になったと言っても過言ではない」と、サッカーへ取り組む姿勢を称賛していた。大幅なメンバーの入れ替えを経て、組織としての成熟が急がれる中、真摯な態度とリーダーシップをもってプレーに打ち込む長澤が存在感を示していけば、チーム作りに好影響を与えることは間違いないはずだ。

 ドイツでの2年間は、思うような結果を残せた時間ではなかっただろう。それでも長澤は「今までとは違った視点でサッカーを捉えることができるようになった。サッカーのスタイルだったり、基本的な攻守のやり方だったり、パスの出し方一つをとっても、全く異なる文化の国に行っていたので、違う視点でモノを考えられるようになった。そういう経験をすることができて良かった」と、前を向いている。

 千葉は24日から沖縄キャンプをスタート。宮崎での2次キャンプ、スカパー!ニューイヤーカップを経て、2月28日の明治安田生命J2リーグ開幕節、徳島ヴォルティス戦に向けた準備を進めていく。

 異国での経験を糧に、地元への愛着を胸に――。千葉の悲願成就へ、2009年以来のJ1復帰へ。ドイツ帰りの背番号10から目が離せない。

文=内藤悠史

By 内藤悠史

元サッカーキング編集部。育成年代や女子、国内サッカー、海外サッカーなど幅広く執筆。退職後はJリーグのクラブ広報に。

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