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【平畠啓史氏はこう見る!】4連勝でJ1昇格PO圏内に浮上した愛媛 、“伊予魂”を宿す選手たちが輝きを放つ!

2015.08.19

秋山(中央)ら多くの選手を育てた愛媛は、J1昇格PO圏内に浮上と好調を維持 [写真]=Getty Images

 7月12日、うまかな・よかなスタジアム。試合終了後、アウェーゴール裏のサポーターに向けて、涙を浮かべながら感謝の言葉を伝える選手がいた。現在C大阪所属の秋山大地だ。彼は、3月23日から7月12日の短い間、期限付き移籍で愛媛FCに所属していた。シーズン途中の、それも初めての移籍。アウェーの地、熊本で、たくさんというわけではない愛媛サポーターに向けて、心から感謝を伝えていた。その表情を見るだけで、ピッチ内外で愛媛に関わる人たちに温かく迎え入れられていたことが容易に想像できる。

 秋山と同じく、たくさんの選手が愛媛で経験を積み、プレーヤーとして大きく成長した。高萩洋次郎、森脇良太堀米勇輝横谷繁などなど。その中でも、現在横浜FMで活躍する齋藤学は、愛媛で試合に出ることにより、一気に才能が開花した。在籍したのは、2011年のたった1年間だけであったが、そのインパクトは大きく、36試合で14ゴールを記録。愛媛のメッシ、“エヒメッシ”とも呼ばれていた。齋藤は、しばしば愛媛への感謝の言葉を述べるし、非公認ながら愛媛の熱烈サポーターである一平くん(カエルのキャラクター)との関係も良好で、J1通算100試合出場記念セレモニーでは、一平くん(改めて、もう一度言います。カエルのキャラクターです)がプレゼンターを務めた。秋山と同様に、齋藤も愛媛の人たちに温かく迎えてもらったに違いない。そして、彼は現在も、ことあるごとに愛媛の地に足を運ぶと聞く。愛媛という土地と愛媛の人たちの温かさが、サッカー選手をプレーヤーとして、そして人として成長させるのだ。


 ただ、なぜこれだけ多くの選手が愛媛経由で成長したかというと、愛媛の財政面に一つの理由がある。潤沢ではない資金の中で、いかにしてチームをやりくりするか。その手段の一つが、期限付き移籍の活用ということになる。選手には活躍してほしい。しかし、活躍すれば元の所属チームに復帰するか、他のチームに引き抜かれてしまう――。痛しかゆし。

 このジレンマをどうすればいいのか? 以前、指揮官を務めていたバルバリッチ監督に聞くと、同監督は私の阿呆な質問に真摯に答えてくれた。サッカー界は自然界と同じだという。小さな魚を大きな魚が食べる。大きな魚をさらに大きな魚が食べる。その大きな魚を人間が食べる。食物連鎖に例えてくれた。その流れには逆らえないと。だが、小さな魚も食べられるからと言って、いい加減に生きてはいけない。小さな魚は団結して精一杯生きなければならないのだ。

 そして2015年、愛媛は木山隆之監督を迎え、強い団結を見せ始めた。シーズン前には粉飾決算問題が明るみになり、クラブに暗雲が垂れ込めた。キャンプにも行けなかった。そんな逆境の中で迎えたシーズンで、ひたむきに守り、ひたむきに攻める愛媛のサッカーが輝き始めた。大量の鰯が群れを作って、大きな魚に対抗するかのごとく。そして、強い団結の群れは、キラキラと美しく光り輝く。

「さあ行こうぜ愛媛 戦いの時がきた 輝く未来は俺たちのもの 魅せてくれよ 伊予魂♪」

 愛媛出身の選手は少ないけれど、ひたむきな選手の姿には伊予魂が宿っているように見えてくる。心温かな愛媛の地で、伊予魂を持った選手たちが今、輝きを放っている。

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