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【平畠啓史氏はこう見る!】柔軟な戦い方で着実に勝ち点を獲得 …“飽きない味”が魅力の讃岐を堪能せよ

2015.07.23

北野監督率いる讃岐 [写真]=Getty Images

「あら、来てたの? 連絡してよ!」。

 いやいや、連絡先知らないし。というか、そもそも初対面だし。スタジアムで初めて会った時の会話があまりにも印象的で忘れられないのは、その当時は熊本を、そして現在はカマタマーレ讃岐を指揮する北野誠監督だ。その人柄は魅力的で、いきなり心をつかまれた。J2初年度の昨シーズンは思うように成績が伸びずに苦労した。とあるスタジアムで、こんな感情を吐露してくれた。「なかなか大変よ。予算で言うと、うちはJ3で4番目か5番目ぐらいだから」。一つ下のカテゴリーのチームよりも少ない予算で、J2を戦わなければならない。それでも粘り強く戦った。人間味あふれる指導と反骨心と、相手を研究して緻密に、そしてしたたかに企てられた戦術と戦略で、21位でシーズンを終え、入れ替え戦の末にJ2残留を果たした。


 今シーズンはピンポイントで経験のある選手を補強し、チーム力を上げた。第25節終了時点で7勝9分9敗の勝ち点30。得点18、失点21、得失点差は-3で15位。昨シーズンの第25節終了時点での成績は、3勝6分16敗の勝ち点15。得点20、失点49、得失点-29で21位だった。失点が激減している。そして、失点が減ったことによって勝利数が増え、順位を上げることになった。GKの清水健太が山形から加入したことが、守備が安定した要因の一つであることは間違いないが、ディフェンスラインのメンバーを見ると、昨シーズンとそれほど変わりがない。ということは、チーム全体での守備意識の向上と統一性が上がったというだろう。

 現在の讃岐に大量失点や大崩れする雰囲気はまるでない。守り方もいつも同じというわけではなく、相手チームによって戦い方を絶妙に変化させる。ある程度前からプレッシャーをかけることもあれば、ラインを下げてブロックを作り、うまく相手を引き込んでからカウンターを仕掛けることもある。このあたりが実にしたたかである。北野監督は見た目とは違い非常に緻密な(これは失礼)サッカーを繰り広げる。例えば、一度ラインを下げてブロックを作ると決めたら、それを徹底する。相手がディフェンスラインでボールを回していても、ブロックを固め、無理にボールを取りにいったりしない。そのさじ加減が絶妙なのだ。

 もちろん、サッカー選手はサッカーボールに触るのが大好きだ。相手守備陣はいつもより余裕を持ってボールを触れることに嫌な気はしない。ところがである。そろそろ縦にボールを入れようとすると、そのコースは讃岐の選手が埋めている。再び、ボールを持つ。そうすると、普段ボールをあまり持たない選手がボールを持つことによって、リズムが狂ってくる。普段ボールを持てないのに持てると勘違いしてしまう。持てるはずのないポジションの選手に、持てるのではないかという幻影を抱かせる。これこそ、美人局作戦である。それも、「財産目当てですよ」と言った感じで、あからさまに近づくのではなく、ごく自然に、したたかに実行し、気付けば相手から財産(勝ち点3)を奪ってしまう。

 そのしたたかさは、もちろん攻撃にも表れている。札幌戦の決定的なシーンのうち、2回はスローインから。そのうち一度をゴールに結びつけている。J2で実績を残す監督ほど、スローインのようなリスタートを無駄にしないし、ディテールを大事にする。一見すると地味なことを徹底する選手とそれを徹底させる監督が披露するサッカーは、しっかりと結果を残し始めている。北野監督率いる讃岐のサッカーは、焼肉や寿司のような派手なおいしさはないかもしれないが、讃岐うどんのように、独特のコシがあって、毎日食べても飽きない味が魅力だ。

【平畠啓史(ひらはた・けいじ)】よしもとクリエイティブ・エージェンシー所属。国内外を問わずサッカー情報に精通する芸能界屈指のサッカー通で、J1はもちろんJ2への造詣も深く、ピッチ内外での硬軟織り交ぜたサッカー愛溢れるコメントが好評を博している。大阪府立阿武野高時代には主将としてインターハイに出場。愛称は平ちゃん。

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