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J2昇格初年度で快進撃続くツエーゲン金沢、躍進の理由

J2昇格初年度で好成績を残している金沢 [写真]=Getty Images

文=河治良幸

 ツエーゲン金沢の「ツエーゲン」とは、ドイツ語のツヴァイ(2)とゲーン(進む)を合わせた“チームとサポーターがともに進んでいく”を意味する造語であるとともに、「つえーげん!(強いんだ)」という金沢弁の言葉も含んでいるという。

 その名前が体を成す様な快進撃を続けるツエーゲン金沢の試合を分析してみると、自分たちのチーム力を効果的に発揮できる攻守のスタイルをベースにしながら、対戦相手や試合の状況に応じたディテールのバリエーションを組み合わせていることが分かる。

 昨季のJ3で優勝し、J2に昇格してきたばかりのシーズンを控え、森下仁之監督は残留を目標に掲げたが、チームが1つになることを条件に、さらに上を目指せる可能性を示唆していた。

 金沢のベースはここまで19試合で12失点という守備力を実現している守備ブロックで、[4-4-2]の3ラインを縦にも横にもコンパクトに保ち、その背後を守護神の原田欽庸が密接に支えている。

 そのため攻守の切り替わりで高い位置からプレッシャーをかけることはあっても、基本的にはブロックで構えて相手の攻め手を限定する守備を継続する。そこに相手のストロングポイントに対して2人、3人で囲む、徹底して縦を切るなどディテールのバリエーションを加えている。

 相手は中盤まではボールを運べても、そこから中央を攻めれば秋葉勝と山藤健太のボランチコンビに行く手を阻まれ、外からクロスを上げれば作田裕次太田康介のCBコンビに大型の両サイドバックを加えた屈強なDFラインに跳ね返される。

 高い位置から常にボールを奪いにいくハイプレスを採用しない代わりに、攻めている側がなかなか崩せない状況が見えないプレッシャーを与え、相手がボールを持たされている様な雰囲気を生み出している様だ。

 そこからインターセプトやセカンドボールの奪取で攻撃に切り替われば、空中戦に滅法強いFWの水永翔馬を第一のターゲットに長短のパスを駆使してボールを運び、シンプルだが鋭い攻撃を繰り出していく。

 基本的には速い攻撃がメインとなるが、相手を押し込めば全体を押し上げ、DFラインやボランチのつなぎを織り交ぜて厚みのある攻撃を仕掛け、右サイドハーフに位置する現在チーム得点王(10得点)の清原翔平を中心に相手の守備を破りにかかる。

 辻尾真二の右足、左の山藤をメインに10番の佐藤和弘もアクセントのキッカーをつとめ、水永、作田などの高さを活かすセットプレーは金沢の大きな武器だが、効果的な攻撃の延長線上にあるものだ。

 一人ひとりを見れば非凡な能力を持っていることは間違いないが、かといってJ2で戦力が上位にあるとは言えない。あくまでベースは森下監督が植え付けた組織と戦術であり、その中で選手たちが自分の武器をうまく発揮している。つまりJ2の中でも試合巧者なのだ。

 注目に値するのは失点の少なさもさることながら、ここまで大敗した試合が1つも無いこと。ここまで大宮アルディージャとの開幕戦を含む3つの敗戦を経験しているが、全て1点差だった。ビハインドを背負ってからも接戦に持ち込める安定感は同点や逆転の可能性を高める。3つの敗戦もある意味で金沢のリバウンドメンタリティを示している。

 基本的には前半をゼロに抑え、先制して逃げ切るのが理想的なプランだが、早い時間隊で失点したとしても、そこから慌てることなく自分たちのペースを崩さず粘り強く試合を進め、攻めに出る時間帯や得点チャンスをうかがう。そうした戦いぶりからは、いかなる時も背伸びすることなく、それでも勝利を目指す金沢のスタンスが見て取れる。

 昨年は湘南ベルマーレ松本山雅FCモンテディオ山形というハードワークをベースとした3チームが昇格を勝ち取った。ひとくちにハードワークと言ってもそれぞれ特徴が違うわけだが、共通していたのは90分の中で集中力を切らせる時間が少なく、それがリスタートにも見られたことだ。

 金沢はセットプレーの得点力が注目されるが、彼らの強さはリスタートの守備に表れている。もちろんセットプレーでも高さは発揮されるわけだが、相手に早いリスタートをさせない、セカンドボールを拾わせないといった要素を90分にわたり、かなり集中してできていることが試合から分かる。

 そうした手段を合わせることでチーム力をなるべく最大化することで勝利を積み重ねている金沢だが、ここまでの戦いぶりを高く評価しても、2巡目と言われる後半戦でのさらなる躍進には懐疑的な見方も多い。

 それは夏場の疲労や主力のけがなどチームの体力的な不安もあるが、対戦相手が金沢をリスペクトし、対策を講じてくるということだ。ここまで内からも外からもあまり破られていない守備ブロックも、相手の準備によっては守り切ることが厳しくなるだろう。

 ただ、そこは森下監督も想定してトレーニングやミーティングに活かすはずだ。自分たちのチーム力に対して過信せず、統率された守備をベースに90分をコントロールできる金沢のスタンスが崩れない限り、大きく失速していく可能性は高くないと予想する。

 J1昇格のための申請手続きに向けた金沢市長の支援が約束され、周囲の期待も膨らんでいくだろうが、自分たちを見失うことなく1つになって、一歩ずつ進んでいってほしい。


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