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磐田が好調金沢をストップ! 完勝劇を支えた3つの要因

2015.06.07

得点を喜ぶ磐田の選手たち [写真]=長江由美子

文=青山知雄

 6日に行われた明治安田生命J2リーグ第17節。昇格1年目にしてリーグ戦13戦無敗と快進撃を続けるツエーゲン金沢を迎え撃ったジュビロ磐田は、櫻内渚ジェイのゴールで2-1と勝利。上位争いのライバルの無敗記録に土をつけ、金沢と入れ替わる形で2位浮上に成功した。


 まさに完勝だった。金沢の森下仁志監督、キャプテンの清原翔平が「ジュビロは本当に強かった」と口をそろえるほどの好内容。決勝点となるPKを決めたジェイは「今シーズン一番の出来」と笑顔を浮かべ、名波浩監督は「終了間際の失点で喜びは半減」と苦言を呈しながらも「守備時に密集する早さは相手も面食らったのではないかと思う。ここ何試合かでは一番の内容」と評価した。

 上位対決で完勝を収めた裏側には、3つの要因があった。それが3戦未勝利の危機感、原点回帰のチャレンジャー精神、そして金沢に対する的確なスカウティングだ。

 磐田は立ち上がりから金沢が武器にしてきた攻守の切り替えで上回り、球際の強さや寄せのスピード、一つのボールに対する予測や動き出しで圧倒。さらに相手のサッカーを的確に分析し、すばやくプレスを仕掛けて一方のサイド攻め切る攻撃を徹底した。シンプルにジェイへ託すスタイルも奏功し、昨シーズン途中の監督就任から求め続けてきた「密集(=ボールへの寄せ)と分散(=奪ってからの鋭い攻撃)」で素晴らしい出来を披露。3試合で2分け1敗という結果が幻だったかのように、選手全員が連動して気持ちのこもったプレーを見せた。

 “眠れる獅子”を呼び起こしたのは、試合前日の練習後にヤマハスタジアムに行われた選手だけでの青空ミーティングだった。

 3戦未勝利の間、ピッチ上では開幕当初に見せていた細かな動き直しによるサポートが少なくなり、球際の強さも影を潜め、チーム一丸となって戦えていない状況に陥っていた。そこでゲームキャプテンの上田康太らの発案もあり、自然発生的に選手だけで話し合うことになった。ここで彼らが確認し合ったのは、戦う姿勢を出し、チームのために戦うというサッカーの原点。そして攻守におけるピッチ上での意思統一だった。ベテランの松井大輔は「開幕した頃に連勝していた時期は、みんながボールへのアプローチをサボらなかったし、それぞれが役割を果たしていた。そういったメンタルやモチベーションを維持していくのがプロ。そこを青空ミーティングで再確認できた。これをやり続けていかないと」と手応えと課題を口にした。

 気持ちを引き締め直した磐田は、敵将の言葉どおり本当に強かった。名波監督は「相手が13戦無敗で来てくれたことが我々のモチベーションを一つ上げてくれたし、そういった相手に濃い内容で勝ちたいと思った。チームミーティングで『金沢をJ3から昇格してきたチームとして考えず、チャレンジャーとして戦おう』と言ってきた」と、キャンプから言い続けてきた「チャレンジャー精神」を再強調して大事なゲームに必勝を期していた。そして選手たちは青空ミーティングと指揮官の言葉どおりに気迫のプレーを見せた。局面で負けることはほとんどなく、個の力で上回る選手たちがメンタル面でも充実したことで完全にピッチを制圧した。シュート本数でも19対4と圧倒。相手が得意とするショートカウンターを封じ込めただけでなく、得点源の一つと分析していたCKも2本に抑えた。ここもすべて狙いどおりだった。

「この試合がいつもできれば全部勝てる」

 上位対決を振り返った指揮官は試合後、力強くこう語った。

 チャレンジャー精神を取り戻し、選手たちがスカウティングどおりに相手の武器をつぶす。上田が「今日は相手の良さを消しながら、自分たちの良さを出せた」と笑顔で振り返ったように、あらゆる部分で前進することに成功した磐田が、名波監督の目指したとおりの「濃い内容」で貴重な勝ち点3を手にした。

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