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足掛け10年、6人のA代表監督に信頼された今野泰幸の飽くなき向上心

2015.04.20

G大阪の快進撃を支える今野[写真]=Getty Images

文=元川悦子

 まさかのJ2降格からから1年でJ1復帰した2014年にJリーグ、Jリーグヤマザキナビスコカップ、天皇杯の3冠を獲得したガンバ大阪。しかしアジア王者を狙った今季はアジアチャンピオンズリーグ(ACL)でも黒星が先行するなど序盤からかなり苦しんだ。


 しかし、3月22日のJ1第1ステージ第3節・ヴァンフォーレ甲府戦の後半から不動のボランチ・今野泰幸が復帰すると、攻守のバランスが劇的に安定。コンスタントに勝ち星を蓄積できるようになる。甲府戦の2-0での勝利を皮切りに、4月突入後は名古屋グランパス、ブリーラム・ユナイテッド、清水エスパルス、湘南ベルマーレに勝って公式戦5連勝。J1の勝ち点を13に伸ばし、浦和レッズと1差の2位に浮上した。

 この快進撃の立役者としてJ1・4戦連続ゴールを挙げ、通算得点7でランキングトップに立っているエースの宇佐美貴史が注目されているが、今野の老獪なパフォーマンスなくしてガンバの復調はなかったはずだ。

 4月18日の湘南戦は相手が激しいプレスをかけてくる相手ということで慎重な入りを余儀なくされたが、今野は「相手が攻める時にバランスを崩してきてくれるんで、ボールを奪うとスペースがすごくあった」と逆に相手の裏をかく巧みな戦術眼を披露。3月のヴァイッド・ハリルホジッチ新監督の初陣2連戦で叩き込まれたタテに速い攻めをクラブでも実践しようという意識も色濃く伺えた。

「代表のことは頭のどこかにあるし、監督の求めることをしっかりJリーグでも出してかないと選ばれ続けることは難しいんじゃないかと意識してます。タテパスの有効性、攻撃のスイッチになることの大切さは今までも理解したつもりだし、そんなに大きくは変わってないけど、タテパスの距離を長くすることができれば自分も変われると思いますね。取った瞬間に近い選手につなぐことはできるけど、1こ飛ばしてFWに当てるとか、FWの裏に一発で蹴っちゃうとか、そういうところがまだ見えてないんで」

 ハリルホジッチ監督効果が表れているのは今野だけではない。若い宇佐美は効果てきめんだ。今野から見ても代表デビュー後の宇佐美の変貌ぶりは凄まじいものがあるようだ。

「意識も走りも以前とは全然違う。特にフリーランがそうですね。自分が動くことによってスペースが空いたり、そういう動きも増えてきてるのかな。貴史がサイドに流れるだけでバイタルが空いて、他の選手が入り込めたり、パスコースが増えたりしている。それは後ろで見てて全く違います」

「守備になった時もボールを寄せるところも変わりましたね。ボールを奪う回数も少しずつ増えてきているので、後ろにいてありがたい。攻撃の部分はホントにスーパーだし、いつも助けられてるけど、守備でも貢献してくれるようになれば、100%の確率で日本代表のエースになる。そうならなきゃいけない存在ですね」

 今野は自ら「怪物」とリスペクトを込めて言い切る若きエースの迫力と勢いに大いなるいい刺激を受けている。

 2003年ワールドユース(UAE)、2004年アテネ五輪を経て、2005年夏の東アジア選手権(韓国)で国際Aマッチデビューを飾った頃の若かった今野にも、似たような勢いがあった。そこからコンスタントに最低ライン以上のパフォーマンスを出し続けてきたからこそ、ジーコ、イビチャ・オシム、岡田武史、アルベルト・ザッケローニ、ハビエル・アギーレ、ハリルホジッチと6人の指揮官から信頼を寄せられ、足掛け10年以上もA代表に定着し、2010年南アフリカ、2014年ブラジルと2度のワールドカップのピッチに立つことができたのだ。宇佐美がそうなるためには現在の急成長を本物の力にして、絶対的な安定感を身に着ける必要がある。

「今の状態に満足したら、代表にずっと居続けられないと思うんです。少しでもいいから成長してかないとホントに生き残れない。貴史もそれを感じたんじゃないですか」と今野は前向きな感触を口にする。

 同じガンバのキャプテンマークを巻く遠藤保仁が世代交代のために招集見送りとなっている今、A代表最年長の男・今野に託される役割は少なくない。身近なチームメートである宇佐美や藤春廣輝東口順昭らは彼の背中から多くのことを吸収するだろう。

「自分もちょっとずつでも成長し続けますよ」と目を輝かせた32歳の今野泰幸の飽くなき向上心を、この先もしっかりとピッチ内外で示し続けてほしいものである。

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