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鹿島黄金期を支えた熊谷氏の“体育会系指導”、ユースに徹底した“あいさつ”

2014.05.15

熊谷浩二【写真】=川端暁彦

文=川端暁彦

 “熊谷アントラーズ”が奮闘中だ。


 昨季までブラジル人のキッカ監督が指導に当たっていた鹿島アントラーズユースだが、今季から新監督を迎えた。率いるのは、そのキッカ監督の下でコーチを務めていた熊谷浩二氏である。

 熊谷氏は1975年10月23日生まれの38歳。青森県十和田市の出身で、三本木農業高校から1994年に鹿島入り。同年のアジアユース選手権では、中田英寿氏らと共に日本サッカー史上初めてFIFA主催の公式大会でアジア予選を突破するという快挙に貢献すると、翌年のワールドユースではこちらもベスト8進出という快挙を為し遂げた。

 鹿島では渋みのある堅実なボランチとして重宝され、特に2000年シーズンでは3冠達成の原動力となった。2005年に移籍先の仙台で引退すると、鹿島に戻ってスカウトへ転身。2011年から鹿島ユースコーチになると、スカウト時代の経験も踏まえた熱血指導で後進の指導に当たり、今季から監督へ就任している。

 その指導スタイルは、誤解を恐れずに一言で表してしまえば、“体育会系”ということになるだろうか。高円宮杯U-18プレミアリーグEAST第5節で対戦した清水ユースの大榎克己監督が「ウォーミングアップから圧倒されたよ」と苦笑を浮かべたように、大きな声を出しながら全員一斉に戦いの姿勢を示す“和式”のスタイルを押し出す。コーチ時代から徹底した指導を行ってきた“あいさつ”の指導も行き届いており、初めて取材に来る記者などは、しっかりあいさつをしてくる選手たちに面食らうほど。それも指導者の見ているところでだけやってくるのではなく(残念ながら、よくあるパターンである)、誰も観ていないところでもキチンとしたあいさつをしてくるのだから、かなりの徹底ぶりだ。

 これについて熊谷監督は「サッカーの指導ができないだけですよ」と笑ってはぐらかすが、これも選手を育てる上での明確なポリシーあってのものだろう。そうでなくては、ここまで徹底できない。もともと鹿島はクラブユースの中では比較的礼儀にうるさいチームではあったのだが、熊谷氏の着任以降はその傾向がより鮮明になった。

 戦い方も無骨な“部活スタイル”。眼前の敵をガッツリと潰しに行くことを基本としつつ、迷いのない縦への鋭い攻撃が光るチームに仕上げてきている。戦術的にはキッカ前監督のそれから大きな変更は感じられないが、MF垣田裕暉は「去年までは練習でも“ケガするようなプレーはするな”という感じだったけれど、熊谷監督は“練習でも球際に行け!”と言ってくれる。去年より練習からピリピリしているし、走りの練習も増えてキツくなったけれど、僕はこっちのほうがいいですね」と笑顔で変化を語る。

 かつて“アジアの壁”を切り崩し、鹿島の黄金時代形成に貢献した青森の若武者は、スカウト時代とコーチ時代の経験を踏まえてクラブユースの中では異端とも言える方向性へチームの舵を切っている。その指導からどんな個性が伸びてくるのか。楽しみに待ちたい。

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