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J1昇格POに一歩届かず…“智将”反町監督率いる山雅のパワーアップに期待

試合後、インタビューに応える反町監督

 アルウィンに鳴り響く勝利のホイッスル。だが、「90パーセントくらいは手にしたと思った」(大月弘士社長)というプレーオフ進出の夢は惜しくも叶わなかった。

 ハーフタイム、智将はある策略をめぐらせた。

「うちの試合終了時間が最後になるように」

 船山貴之のPKで前半を1-0とした松本山雅。反町康治監督は前半からスタッフをベンチ横に置き、細かく他会場の途中経過を入手しながらプレーオフ進出に必要な条件を周到にシミュレーションしていた。

 前半を終えた時点で松本山雅の暫定順位は5位。そのまま全会場が終われば、逆転でのプレーオフ進出が決まる。少しでも優位な立場で試合を進めたいと考えた指揮官は、選手たちがロッカーアウトする時間を通常より2分ほど引き伸ばし、後半開始を他会場よりも遅らせるように配慮した。そうすればライバルたちの動向を窺いつつ、自分たちの試合終了と同時に答えが出る。まさに深謀遠慮。もちろん選手たちには得点経過やロッカーアウトを遅らせた理由は伝えず、狙いどおりの形になるようにベストを尽くした。

 後半、松本山雅イレブンは虎の子の1点を体を張って守り抜く。コンサドーレ札幌はギラヴァンツ北九州から1点が奪えず、ジェフユナイテッド千葉はガイナーレ鳥取に2点を先行されながら何とか1点を返した状態。時間が経過しても、松本山雅の暫定順位は5位から動くことはなかった。

 アルウィンの4thオフィシャルが掲げたアディショナルタイムは3分。

 あと少しで念願が叶う。

 松本山雅の関係者、そしてスタジアムにいた誰もがそう思った。だが、とりぎんバードスタジアムでは劇的なドラマが起こっていた。昨年のJ1昇格プレーオフ決勝で敗れた悔しさをバネにするかのように、千葉MF兵働昭弘がアディショナルタイム2分が過ぎたところで試合を降り出しに戻す豪快な左足ミドル弾。松本から約350キロ離れた地で決まった同点ゴールをスタッフから聞かされた反町監督は、口角を上げながら「フッ」と意味深な笑みを浮かべた。

 直後、松本山雅は愛媛FCを1-0で下し、1万6885人で埋まったスタジアムは大歓声に包まれた。だが、そこから千葉の結果待ちとなり、勝ち点66で千葉、長崎と並びながら、得失点差でプレーオフ進出を逃すという無念の場内アナウンスを耳にすることとなる。

 「(ロッカーアウトを2分遅らせたが)それでも向こうのほうが終わるのが遅かったのは、何かしら時間がかかったのかなと。それはしょうがないかなと思います」とコメントした反町監督だが、勝利に向けて微に入り細を穿つ取り組みはさすがと言うべきだろう。

「千葉が1点返した段階で同点になる可能性は十二分にあると思っていました。V・ファーレン長崎と徳島ヴォルティスの試合は長崎に退場者が出て、徳島が1-0のまま行くんじゃないかと考え、あとは千葉と鳥取の結果次第だと思った。(松本山雅の)試合終了の段階では2-1だったので少なからずチャンスはあるかと思っていましたが、やはり伝統のあるクラブはこういう時こそ力を発揮するんじゃないでしょうか」

 反町監督は記者会見でこうコメントした。終了間際にベンチで浮かべた意味深な笑み。それはサッカーというスポーツの難しさを身を持って熟知しているからこそ出たものだったのかもしれない。

「全体的に最後に一歩届かなかった部分は非常に残念。できればこのメンバーであと1試合、2試合やりたかったのが率直な気持ちです。選手たちは“勝ち点1の重み”を十分に感じたと思いますし、それをどう生かすかがこれから大事になってくる。それは反省材料として来シーズンに取っておきたいと思います。我々は残念ながら正直まだプレーオフに出るような力はありません。足りない部分はありますし、まだまだやらなきゃいけないこと、課題はたくさんあります。それを消化していかなければならない。もちろんこのメンバーでプレーオフに出て、いろいろ経験させたかった気持ちはありますが、この結果を真摯に受け止めて、よりパワーアップしてやるしかないかなと感じています」

 悔しい結果を前に「こう自分に言い聞かせている部分もある」と苦笑いしながら語った反町監督は、来シーズンも松本山雅で指揮を執ることが発表されている。昇格2年目でプレーオフ進出寸前まで成長したチームに、智将はいかなるエッセンスを加えていくのだろうか。

 選手たちは口々に「これを糧にしなければ意味がない」と話した。反町監督も「終盤戦の戦いが最初からできていれば、J1に昇格できていたはず」と場内インタビューで言い切っている。この悔しさを晴らすためには、自分たちが結果を出すしかない。

 天皇杯はすでに敗退し、プレーオフ進出も逃したが、年内は12月8日まで練習を続ける予定となっている。

 わずかな差で逃した大目標を手にするために。3シーズン目の“反町山雅”は早くも動き出している。

文=青山知雄(Jリーグサッカーキング編集長)

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