2013.08.12

46歳のカズがJリーグ500試合出場達成…「なぜ、キング・カズは走り続けられるのか?」

三浦知良
サッカーの枠に収まらず、いちアスリートという面でも驚異の存在と言えるキング・カズ。その肉体の秘密とは [写真]=Getty Images

横浜FCの三浦知良が、8月11日に行われたJ2第28節の札幌戦でJリーグ通算500試合出場を達成した。サッカーの枠に収まらず、いちアスリートという面でも驚異の存在と言えるキング・カズ。46歳になった彼が現役でいられる理由を、超一流のアスリートに関わってきたトレーナー曽我武史(そが・たけし)氏がスポーツ医学の観点から探る。

■自分の身体を見極める内観力、客観視してくれるスタッフ

 為末大、末續慎吾、朝原宣治など超一流と言われるアスリートのコンディショニングに関わってきた私は、彼らに一つの共通点を見出だしています。

 一つは、内観力。つまり自分の身体を客観視できる感覚です。自分の身体がどんな状態なのか、どう操るとどういうパフォーマンスを発揮するのか、どんなトレーニングをすると身体がどう変化していくのかなど、トップアスリートは正確に把握しています。

 この内観力は、コーチに言われるままトレーニングしてきた状態から、「こう変えれば、もっと上手くなるんじゃないか」と自ら工夫を加え始めることで更に養われていきます。 自分を客観視することができないと、パフォーマンスが衰え始めた時点で「何かがおかしい」と苦悩するばかり。そうしている間にフェードアウトしてしまう選手をたくさん見てきました。

 カズ選手は、2003年頃に自分の衰えを正確に把握したのではないかと推測しています。そのままの身体でピッチには立てても、思い描くパフォーマンスはできない。そこで客観的かつ専門的に自分の身体を評価してくれるフィジカルコーチを雇い入れたんだと思います。

 室伏広治選手もそうです。彼自身、運動学に詳しいアスリートですが、優秀な理学療法士を加えて、自分の身体を客観視することでパフォーマンスを更に引き上げてトップの座を守り続けています。

 アスリートは30代に入ると回復力の衰えを感じ始めます。そんな自身のパフォーマンス低下に気付くためには、内観力を持つことと、自分では把握できない部分をサポートしてもらうスタンスを取れるかどうか。それが選手寿命を左右すると言えるのかもしれません。

■高く維持したモチベーション、淡々と続ける日々のトレーニング

 現在、サッカーのトップ選手と言えば、ヨーロッパ主要リーグのレギュラークラスでしょう。46歳になったカズ選手の競技パフォーマンスはそのレベルは厳しい。しかし、現時点でも横浜FCに所属しているように、カズ選手の能力(プロとして質の高い動き、精神面、行動、考え方など)を求めるプロリーグはあります。しかも、常に最大限のパフォーマンスを発揮しようとするモチベーションを維持できる。そこがカズ選手のすごさだと思います。

 チーム練習では先頭を切ってランニングをする。若手選手以上のトレーニングができるフィジカルを維持する。更に、その時々に見合った自分のトレーニングの質と量も熟知しているはずです。

 私が関わってきたトップアスリートも質の高いトレーニングを効率の良い身体の使い方で取り組んでいました。トップになるほどムダなことはしない。ダッシュ1本を大切に走ります。時には嘔吐するところまで自分を追い込める集中力も持っています。そこまでのトレーニングができるのもトップアスリートの条件なのかもしれません。

 カズ選手も同じだと推測します。高いモチベーションで自分を追い込み、厳しいトレーニングをこなしても「こうすれば、まだ上手くなるんじゃないか」と素直に思う。現役を続ける限り、トップアスリートと呼ばれる選手はこの思いが消えないと言います。だからこそ、地道なトレーニングでも淡々と続けられるのではないでしょうか。多分、ピッチ上の結果は自分が積み上げたものの先にしかないと分かっているんだと思います。

■驚異的なケガに対する強さ、プレーを安定させる体幹

 46歳で現役を続けられる肉体的な理由を挙げれば、まずケガに強いことだと思います。

 サッカーやラグビーなど、主に下半身を使うスポーツでは足首、膝のケガは仕方がない部分です。 特に、打撲系のケガなどは競技をしていれば許容範囲だと思います。ただ、運に左右される部分もありますが、カズ選手はひどく靭帯を傷めたり、半月板を損傷するといった致命傷になりかねないケガもしていないのがここまで現役を続けられてきた理由の一つでしょう。

 もう一つは、近年よく言われる体幹の強さ。トップアスリートには絶対的に必要なことです。身体の軸や重心をしっかり保つことで、バランスを崩されそうになっても崩さないで安定したプレーができます。特に対人スポーツのサッカーでは、思わぬことで相手に振り回されたり、振り回したりするので身体の動きの軸がブレないことは非常に大切です。

 ただ、カバーできないのは、腱や軟骨といった年月とともに摩耗していく部分です。消耗してしまって耐えきれなくなり、ケガにつながることがありますが、カズ選手のすごさはここにもあると思います。

 近年、アスリートの選手寿命は飛躍的に伸びていますが、同じ種目を長く続けるとある特定の部位にずっとストレスがかかり、30代前半で今後どうするかを考えなくてはいけない出来事が起きる可能性があります。カズ選手はサッカー一筋。しかも、トップ選手として他の選手よりも質・量ともに激しいトレーニングをしています。もちろん試合では観客を魅了するパフォーマンスを発揮してきたわけですから、摩耗の度合いも激しいはずです。それでも大きなケガもなく、30代を飛び越えて40代に入っても現役を続けている。まさに、超人と言ってもいいんじゃないでしょうか。

 仮に、カズ選手の身体に触れる機会があるとすれば、お尻を含む股関節まわりと背中の筋肉、柔軟性、反応を見てみたいです。これまで関わってきた力のある選手のほとんどが、競技種目に合わせた動きをコントロールできる股関節の強さや安定した背中の筋量、稼働性を持っていたからです。もちろんサッカー選手なので膝周辺の安定感や硬さ、膝下の張りや足も気になります。質の高いパフォーマンスを発揮するには、筋肉はやわらかすぎる状態よりも適度な張りと緊張感があったほうが良い動きができるからです。これからも観客を魅了するパフォーマンスを発揮するであろうカズ選手が持っている潜在能力には何があるのか、スポーツ医学の観点からも興味は深まるばかりです。

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曽我武史(そが・たけし) TKC BODY DESIGN アスレティックトレーナー。2004年アテネ、さらに陸上男子が4×100mリレーで銅メダルを獲得した08年北京オリンピックにも帯同。07年からは為末大選手のパーソナル・トレーナーも務めるなど、20年以上のキャリアを生かしてアスリートやユース世代のフィジカル向上を探究し続けている。

文●洗川コージ サムライサッカーキング掲載

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