2013.07.02

「福島の力」と「湘南の心意気」が通じて形作られた歴史的一日

福島ユナイテッド
6月30日、福島ユナイテッドFCの応援に県外に避難している人も多く駆けつけた

 日本サッカー史上でも極めて珍しい試みが、6/30(日)にShonan BMW スタジアム平塚で行われた。試合はJFL第18節「福島ユナイテッドFC vs佐川印刷SC」。福島ユナイテッドが今年提携したJ1湘南ベルマーレのホームスタジアムで、福島のホームゲームが開催された。福島県からの県外避難者を招待し、交流を図ること。福島県産の物産や観光における深刻な風評被害を払拭するため県外PRを行うこと。こうした目的のため、新しい試みを行った福島ユナイテッドの一日を追った。

■子どもたちの交流ゲーム

 福島ユナイテッドのホームゲームを湘南ベルマーレのホームスタジアムで開催する福島スペシャルマッチ。オープニングは、福島ユナイテッドFCと湘南ベルマーレの小学生たちの交流試合で、のびやかに始まった。ピッチの半面を使い5-6年生の試合、もう半面で3-4年生の試合を実施。ピッチを広く使えるU-12と、ボールに固まりがちなU-10。どちらも見ていてサッカーの楽しさが伝わるゲームであった。

 福島には女子選手が3人いて、それぞれ6年、4年、3年。ゲーム後に話をすると皆「楽しかった!」と目を輝かせながら振り返った。そして夢は「なでしこジャパン」とも。福島聖光学院のサッカー部監督で息子が福島のU-10でプレーする山田さんは、「震災を抜きにして、僕らの時代は、こんないいグランドでサッカーできなかったですからね。色んな刺激を受けるだろうし、非常にありがたいです」と、子どもたちのプレーに目を細めていた。「私たちもサッカーのつながりでいろんなところ助けてもらったり、復興支援プロジェクトなどの大会や合宿にもご招待いただきますが、福島も復興が進んでいるし、住んでいる人は前向きに頑張って生きているんだってことを、もっと当たり前に思って欲しいですね」と、県内外での認識の差を感じていると語ってくれた。

 株式会社AC福島ユナイテッドの鈴木勇人代表取締役は山田さんとの会話の中で、「こういう場所を子どもたちに提供できるのがクラブチームの意義」と語り、「一度決まった試合の会場が変わるなんてありえないのですが、JFLのチーム皆が応援してくれるのは、ありがたいことです。」と湘南でゲームを開催できたことで、子どもたちにも喜びが増えたことが嬉しいようであった。

■頑張ろう福島ブース大盛況

 今回、湘南でホームゲームを開催した目的の一つが、地域物産の風評被害払拭のためのPR。人気バラエティー番組のDASH村があることでも知られる福島県双葉郡浪江町で生まれたB級グルメ「なみえ焼きそば」のブースには長蛇の列ができた。極太麺と豚肉、もやしに濃厚なソースが絡まり美味。福島市に南接する二本松市は、地表に染み込んだ雪解け水が水脈となった「安達太良山の伏流水」があり、酒造りが盛んな地域。「近所の経営者仲間」ということで人気酒造(株)が地酒「人気一 福島ユナイテッド純米吟醸」を今回の試合会場のみで限定販売。代表の遊佐さんは「一番近い酒造会社としてサポートしなきゃな、とやって来ましたが、もっと準備してくればよかったですね」と早々の完売に驚きの様子であった。

 試合後、福島ユナイテッドの竹鼻快GMが「物産がどこも売り切れていたのが、よかったですね」と話していたように、どのブースにも人だかりができ、最後に観光ブースに寄って「八重のふるさと福島県観光ガイドブック」を手に取ってスタジアムへ、という流れができていた。また、環境省の除染情報プラザのブースでは、除染の進行状況や学校での教育についてパネル展示。リーダーの上川さんは「実際にまだ自分のふるさとに住めない方もおられますが、風評(被害)をなくし、正しい認識を持って福島を応援していただければ」ということを、除染に携わる者として、また一福島県民として思うと、話してくれた。

■福島の力と湘南の心意気

 スタジアムでは、福島ユナイテッドFCの応援歌が初めて湘南の地で歌われた。「福島のオーオー 赤き勇者よ 一つになって さぁ行こうぜ」と盛り上がったところで、オープニングセレモニーがスタート。まず、鈴木代表が震災後2年半の経過とともに、Jリーグ準加盟申請提出を報告。そして、「これから我々は福島の皆様、そして湘南の皆様とともに、前を向いて、顔を上げて頑張ってまいりたい」と宣言。さらに福島サポーターに向けては「見せましょう、福島の力を」と語りかけ、湘南サポーターに向けては「見せましょう、湘南の心意気を」と呼びかけた。

 オープニングムービーがサポーター、選手の気持ちを高め、ジュニアの選手たちと選手が手をつないで入場し、いよいよキックオフ。福島のスタジアムDJ藤原さんは、いつでも「GOAL!」と絶叫できるように、ピッチ横でスタンバイ。「今回は湘南のDJロンドさんも助けてくれまして、特に心配もなくゲームを迎えられました。それに今季の福島のホームゲームには毎試合湘南のスタッフさんが来てくれて、お互い顔も分かっていましたし、僕たち裏方も、伸び伸びと今日を迎えることができました」と両チームの提携が着々と進んでいることを教えてくれた。

■俺たちの誇り 福島ユナイテッド

 そんな話をピッチサイドでしている最中、このゲーム最大のピンチが訪れる。ペナルティーエリア内に抜け出した佐川印刷の選手を背後から倒したとして、福島DFに対して一発レッド。PKはGK内藤の気迫もあり、ボールはポスト左に外れるものの、開始10分で10対11というハンディを背負った福島。間髪入れず、サポーターからチャントが届けられる。「聖者の行進」(When The Saints Go Marching In)という黒人霊歌のメロディーに合わせたチャントは、まさに選手へのメッセージ。「福島ユナイテッド 俺たちの誇り オレオレ (オレオレ) オレオレ (オレオレ) オレオレ オレ オレー 福島ユナイテッド 俺たちの誇り」。

 スタジアムに詰めかけた観客は1324名。赤のユニフォームを着た福島サポーターにグリーンのユニフォームを着た湘南サポーターが混ざりあう。単身赴任先から新幹線でやって来たという福島県民もいれば、時崎監督の選手時代から知っているという神奈川県民も。湘南サポーターは、福島との提携に好意的なようだ。「ちょうどJリーグ中断期間ですし、サッカーが見たくて来ました。ちょっと湘南のユニフォーム着るかどうか悩んだんですよね」「若手の出場機会も増えてWIN WINの関係になれていいですよね」「もっと湘南サポがいてもいいのにな、と思いました」「若手が実践を積むと全然違うので、福島で鍛えてベルマーレのレギュラーに戻って来られる選手になって欲しい」などなど。東京出身で、福島で働いている女性は、「両方の場所にいる者として、来なきゃいけないなと思って。すごい楽しかったです」とコラボマフラーを首にかけ、選手のご家族は「今年からJFLなので、すぐには難しいですが、讃岐や長野と戦えるようにならないとだめ。Jリーグに是非上がってほしいですね」と話しながら、ピッチで戦う息子を教えてくれた。

 10人で戦った福島は、終盤疲れが見えた選手を交代。左サイドでチャンスを作ったMF白井とワントップで体を張り、テクニックも見せたFW吉濱は、今季湘南からレンタル移籍してきた選手。二人の交代時にはスタジアムから大きな拍手が送られたが、試合はお互い決定機がありながらも決めることができずスコアレスドローに終わった。

■次回、湘南での試合開催に向けて

 福島の時崎悠監督は「前半10分で一人少なくなって、勝ち点1でも納得しないといけないのかな、とも思うのですが、チャンスもあったんでね。決められずに、勝つことができずに悔しいですね。でも、僕自身一番多くプレーしたグランドに監督として立てたことは、非常に大きな経験にはなりました」と悔しさをにじませながら、試合を振り返った。

 竹鼻GMは「試合単体で見ると、ゲームの内容も、来場者数も課題はあったかと思いますが、初めてのクラブ提携で、J1のスタジアムで福島のホームゲームを開催することができて、クラブとしては得るものがありました。スタンドの雰囲気もいいものがありましたし、今後さらに新しい可能性を模索していきたいですね」と、早くも次回の湘南での試合開催に目を向けていた。

 そして、この日一番のハイライトは、試合終了後に訪れた。福島サポーターはスタジアムのゴール側に、湘南サポーターはスタジアムやや中央寄りに、座って(あるいは立って)観戦していたのでが、そのサポーター間で「ベッールマーレ」、「ふっくーしまー」とエールが交換された。キックオフ前の鈴木代表の言葉が脳裏に浮かぶ。「福島の力」と「湘南の心意気」が、一試合の応援を通じて、既に形作られていたのだった。

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