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なぜ、世界にはユヴェントスを真似するクラブがないのか? “サッカークラブの“ブランディングとは

2020.09.14

[写真]=Kazuki Okamoto/ONELIFE

文:河内一馬
サッカー監督。1992年7月20日生まれ(28歳)東京都出身。アルゼンチン在住。アルゼンチン指導者協会監督養成学校『Escuela Osvaldo Zubeldía』在籍。Conmebol(南米サッカー連盟)Football Coach A-license所持。note『芸術としてのサッカー論』筆者。NPO法人『love.fútbol Japan』理事。フットボールカルチャーブランド『92F.C.』Founder。2021年より鎌倉インターナショナルFCにて監督兼CBO(Chief Branding Officer)に就任。

写真=Kazuki Okamoto/ONELIFE

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 自分は何者で、何がしたくて、どんな未来を望んでいるのか…。

 世の中には、それらについて深く考える人と、なんとなく考える人と、何も考えない人がいるのだと思います。同じように、世界中に有り余るほど存在している「サッカークラブ」の中にも、我々のクラブとは一体何なのか、私たちはサッカークラブを存在させることで何をしたいのか、そしてクラブがあることで、世界がどんな未来になることを望んでいるのか、を深く考えるクラブと、そうではないクラブがあるような気がしています。

 私がこのようなことに思いを巡らせるようになったのは、アジアとヨーロッパのサッカーを見るために旅をしたこと、そしてサッカー大国アルゼンチンに住んだことがきっかけでした。

「ブランディング」という言葉があります。マーケティングの概念の中にある要素のひとつとして、主にビジネスの世界で使われている言葉です。

 2017年、イタリア・セリエAの強豪ユヴェントスが伝統的なエンブレムを一新し、モダンな雰囲気を漂わせる「ロゴ」を発表したことを皮切りに、大々的な「リ・ブランディング」を行いました。サッカー界、またはスポーツ界で「ブランディング」という言葉をよく耳にするようになったのは、そのことがきっかけだったと思います。サッカーが大きなビジネスとして資本主義社会の中にある以上は、避けられないことだったのかもしれません。ただ、私たちは、本当に「ブランディング」というものを理解した上で、なおかつ「“サッカークラブの”ブランディング」を、しっかりと考えることができているのでしょうか?

 世界のどこを探してもユヴェントスのようなロゴを真似するクラブがない中で、日本には同じようなことをするクラブが出てきているのは、一体なぜなのでしょうか?

「ブランディング」には、大きく分けて「3段階」あると私は考えています。

 まずは前述したように、「我々とは何者なのか?」「何がしたいのか?」「どんな世界や未来を望んでいるのか?」などの事柄を考え、ひたすら深く掘り出し、言葉や認識可能な形にすること。

 そして2段階目は、前段階で可視化した概念を、様々な形で表現していく(≒デザインしていく)こと。

 そして最後に、それを守り続けることです。

「“サッカークラブの”ブランディング」が他の世界と違うのは、2段階目の「表現」のなかに「予測不可能なサッカー(ゲーム)」が入ってくる、ということです。そしてそのサッカーのゲームを「デザインする」のが、サッカー監督というブランディングの素人であるということが、またそれを難しくするのです。サッカークラブには、ピッチの中と外、2つの顔があります。その両面が、それぞれ別の概念を出発点として「表現」(≒デザイン)されれば、サッカークラブが真の「ブランド」になることはなく、クラブが持っている価値を最大化することができません。しかし多くの場合、ピッチの外をデザインする人と、ピッチの中をデザインする人との間には、大きな距離があります。それは「見た目をカッコよくすること」こそが、つまり「“サッカークラブの”ブランディング」なのだと、ピッチの外の人が考えてしまう原因でもあります。「見た目」でクラブの世界観を表現することは必須ですが、あくまでもそれはブランディングの一部であることを忘れてはなりません。ユヴェントスのロゴを真似できるように、「目に見える部分」はコピー可能であり、コピーとは「ブランディング」と最も遠い場所にあるものです。

 私はサッカー監督でありながら、ブランディングの責任者として日本サッカー界に戻ります。ピッチの外と中に距離があるのなら、その距離を詰められるのは中の人しかいないと、そう思ったからです。「鎌倉インターナショナルFC」は今、2段階目に足を踏み入れようとしています。

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