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市川大祐氏、引退試合「夢のような時間」…肉離れで強行出場も最後まで“自分らしく”

2018.01.10

市川氏の呼びかけによって豪華メンバーがアイスタに集結した [写真]=平柳麻衣

 8日、2016シーズン限りで現役を引退した元日本代表DF市川大祐氏の引退試合がIAIスタジアム日本平で開催。清水エスパルスの黄金期を築いたメンバーが中心となって構成された「S-PULSE ALL STARS」と、1998年フランスワールドカップ、2002年日韓W杯のメンバーが集結した「JAPAN ALL STARS」が対戦した。

「この瞬間が終わらなければいいのに」。ピッチに立つ者も、見る者も、みんながこの日の主役と同じ気持ちだっただろう。日本サッカー界を彩ってきた豪華メンバーによる夢の共演。市川氏は「これだけ豪華なメンバーが集まってくれて、みんな本当にうまくて、プレーを見ているだけで笑顔になれる。夢のような時間、最高に楽しい時間でした」と感慨に浸った。


 この試合、本来の定位置である右サイドバックよりも前線でプレーした市川氏。その理由は、昨年12月20日に負ったけがの影響だった。

「右の内転筋を肉離れしてしまい、ずっとボールを蹴っていませんでした。だいぶよくなったと思って1月1日に少し蹴ってみたのですが、そうしたらまた傷んでしまって。試合の2日前にMRIを撮ったら少し出血していて、今回の引退試合を迎えるに当たっては本当に不安しかなくて……」

 試合前とハーフタイムに注射を打ちながらの強行出場だった。実際、プレー中も痛みはあったと明かし、「ダッシュもしなかったし、クロスも蹴りたかったけど、蹴って痛みが出てしまったらその後が大変なので」と代名詞とも言えるクロスを封印した。

 振り返れば、現役時代もけがに悩まされる時間が長かった。「最後は気持ちよくプレーしたかった」というのが本音だが、これも“らしい”自分の姿だと語った表情に曇りはない。

「最後にまたけがに悩みながらピッチに立つというのは……“らしい”なと思いました(苦笑)。本当は余裕がないくらいに不安が大きかったですけど、トレーナーやドクターがどうすればピッチに立てるか考えてくれたので、それがまた僕の力になりましたし、スタジアムに来て懐かしのメンバーと顔を合わせた時に、『今日はなんかできるんじゃないか』と思って。オージー(アルディレス)や岡田(武史)さん、大木(武)さんとかの顔を見たら、優しく包み込まれているような感覚になったんです」

 清水ジュニアユースの1期生で、高校2年時にトップチームデビュー。17歳322日で果たした日本代表最年少デビュー記録はいまだに破られていない。突然与えられた環境に戸惑いながらも、時に周囲の助けを得ながら伸び伸びとプレーしてきた。10年末で清水を離れてからはヴァンフォーレ甲府、水戸ホーリーホック、藤枝MYFC、FC今治、ヴァンラーレ八戸でプレー。どのカテゴリーでも努力を惜しまず、ボールを追いかけ続けてきた。

 前を向いてボールを持つと、観客席の熱量が一瞬でぐんと増す。サッカーが大好きだという彼の純粋な思いが、躍動感となってあふれ、人々の胸を高鳴らせる。19年間の現役時代と変わらない光景を、最後の舞台でも見せてくれた。

 17シーズンから清水の普及部スタッフとしてすでに第2の人生を歩み始めている市川氏。「エスパルスが誕生してから僕の夢は明確になりました。エスパルスは夢や希望を与え続けるチームでなければならないですし、僕自身もスタッフとして、そういうものを皆さんに伝えていきたい」。愛するクラブと日本サッカー界の発展を願って、これからも走り続ける。

【スコア】
S-PULSE ALL STARS 2-3 JAPAN ALL STARS

【得点者】
6分 1-0 澤登正朗(S-PULSE)
38分 2-0 市川大祐(S-PULSE)
51分 2-1 市川大祐(JAPAN)
86分 2-2 市川大祐(JAPAN)※PK
90+2分 2-3 市川大祐(JAPAN)

【参加メンバー】
オズワルド アルディレス(監督)
市川大祐
長谷川健太
堀池巧
大榎克己
澤登正朗
永井秀樹
齊藤俊秀
伊東輝悦
森岡隆三
久保山由清
安永聡太郎
戸田和幸
三都主アレサンドロ
石田博行
高木和道
谷川烈
和田雄三
平松康平
高木純平
岩下敬輔
眞田貴永(故 眞田雅則氏ご令息)
眞田勲良(故 眞田雅則氏ご令息)
西部洋平
杉山浩太
枝村匠馬
北川航也
松原后
兵働昭弘
山本海人
藤本淳吾(※けがのため出場せず)
福岡重雄(チームドクター)
羽生直行(通訳)

《JAPAN ALL STARS》
岡田武史(監督)
大木武(ヘッドコーチ)
市川大祐(※後半JAPAN ALL STARSにて出場)
小島伸幸
井原正巳
中山雅史
北澤豪
山口素弘
小村徳男
秋田豊
名良橋晃
相馬直樹
名波浩
岡野雅行
森島寛晃
服部年宏
中西永輔
平野孝
山田卓也
川口能活
楢崎正剛
西澤明訓
鈴木隆行
柳沢敦
宮本恒靖
明神智和
中田浩二
小笠原満男
曽ヶ端準
小野伸二
稲本潤一
齊藤俊秀(※後半JAPAN ALL STARSにて出場)
三都主アレサンドロ(※後半JAPAN ALL STARSにて出場)
石橋恭之(チームドクター)

 試合は市川氏が先発出場したS-PULSE ALL STARSがリードする展開となった。6分、市川氏からの横パスを受けた澤登正朗氏がDFをかわしてシュートを決め、先制点を挙げる。

 清水で、日本代表で市川氏とともに両翼を担った三都主アレサンドロ氏は、「右サイドのイチが上がるから、自分も『もっと上がらないと』と思っていた」と当時の心境を明かす。この日もキレのあるドリブルでアイスタの観客を沸かせた。

 積極果敢にゴールを狙った市川氏だが、川口能活のセーブに遭う。主役の得点を期待するスタンドからはブーイングが起こり、川口が謝罪のポーズをする場面も。

 市川氏に待望のゴールが生まれたのは38分。クラブのレジェンドの一人である故・眞田雅則氏の息子、眞田勲良さんが粘って市川氏へパスを送ると、冷静にシュート。

 勲良さんの兄・貴永さんは父と同じくGKを務め、名波浩氏の直接FKをセーブするなど好プレーを見せた。

 選手として、監督として市川氏とともに戦った長谷川健太氏も出場。短い出場時間ながら、場内を沸かせた。

 S-PULSE ALL STARSの2点リードで折り返した後半、市川氏はJAPAN ALL STARSの一員としてプレー。日韓W杯の時に着用していた22番をつけた。

 51分、ゴール前に入っていた市川氏がダイビングヘッドでゴール。

 小笠原満男がペナルティエリア内で倒されると、判定を巡ってヒートアップ(!?) かつてのチームメイトとの再会を誰もが喜んでいた。そのPKを市川氏が決め、スコアは2-2の同点に。

 17シーズン限りでの引退を発表した杉山浩太、高木純平も残り時間を惜しむようにプレーした。

 市川氏がつけた25番の継承者・松原后は後半から出場。左サイドを駆け上がり、持ち味を発揮した。

 90+2分に勝ち越し点が生まれ、JAPAN ALL STARSが3-2で逆転勝利。市川氏は4ゴール1アシストを記録した。

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