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【インタビュー】MIYAVI<サッカー少年だった過去><世界と戦うため必要なこと>

2017.04.07

 世界に飛び出して自分の夢を叶える戦いを挑む日本人は、サッカー界に限らず数多くいる。夢を叶えて第一線で活躍する人、夢破れて他の道へ進み始める人…。夢へ向かって走る一方で、直面する現実もある。

『サッカーキング』では、エレクトリックギターをピックを使わずに全て指で弾くという独自の“スラップ奏法”でギタリストとして世界中から注目を集め、これまでに約30カ国300公演以上のライブととともに、4度のワールドツアーを成功させ、今年デビュー15周年を迎えたMIYAVIさんに、世界で日本人が活躍/戦うために必要なことを聞くとともに、セレッソ大阪のジュニアユースに所属するなど、幼少期はプロ選手を目指して練習に明け暮れていた“サッカー少年”時代の話を聞いた。

インタビュー=小松春生
写真=野口岳彦

■サッカーを始めたキッカケは「何となく」

―――まず幼少期のことからおうかがいします。中学生までサッカー少年だったとのことですが、始められたキッカケから教えてください。

MIYAVI 大きな理由はなかったですね。小学校2年生の時、仲良くしている女の子に、ふと「野球部とサッカー部、どっちに入るの?」って聞かれて。正直どっちも考えたことがなかったんですけど(笑)、「サッカーかな」って何となく、特に理由もなく。ただ練習初日、帰るタイミングの都合で、たまたま俺だけ練習を居残ったんですよ。みんなより余計に練習したんですけど、それがすごく楽しくて。深い意味があるわけでもなく、ただボールを蹴る感覚がすごく楽しくて、彼女そっちのけでサッカーにハマっていました。ギターを始めた時の感覚とすごく似ているんですよね。あとは、チームメイトが自分の知り合いばかりだったので、自分から言ったわけではなく、引っ張るタイプでもなかったんですけど、結果キャプテンになって。Jリーグが開幕したことも続けていた要因ですね。

―――Jリーグが開幕した1993年、MIYAVIさんは小学校6年生ですね。当時、好きなチームはありましたか?

MIYAVI 開幕する前、横浜マリノスのグッズをメッチャ買ってたんですよ。周りはヴェルディが多くて。それこそお年玉とか全部使うくらい。でも、開幕戦を見ている時は、自分はマリノスカラーなわけなんですけど、特にカズさん、ラモスさんにワクワクさせられていました。そこからはもう完全にヴェルディでした(笑)。

―――ポジションは主にどこでプレーを?

MIYAVI 基本はボランチですね。センターバックやセンターフォワードもやったんですけど、基本後ろ向きに振り返ってボールを受けるのがあまり好きじゃなくて。前をずっと見ていたいのと、どちらかというとパスを出してゲームを作る側がよかったので、ボランチは好きでした。

―――自分から何かが生まれるということが好きだったんですね。

MIYAVI そうですね。創造することにワクワクしていたんだと思います。

■苦悩を抱え、初めての挫折を経験したセレッソ大阪Jr.ユース時代

―――セレッソ大阪のジュニアユースにはどういった経緯で入ったのでしょうか?

MIYAVI それまで在籍していたクラブがセレッソと繋がりがあって、チームみんなでセレクションを受けに行ったんです。そしたら受かっちゃって。それまではキャプテンだったけど、チームが変わるとまた別じゃないですか。それがつらくて。尼崎のグラウンドまで行くのに、学校が終わって駅まで走って電車の中で着替えて、それでも練習に遅れる。学校での練習であれば、暗くなれば終わりですけど、クラブチームは照明があるから遅くまでやる。そして、練習が終わったら今度は満員電車に乗って帰る。そんな生活の繰り返しで、疲れで学校の休み時間も寝るじゃないですか。今度は学校の友達との距離も出てきて。フィジカル的にもメンタル的にも正直すごくつらかったし、大変でした。レベルも高かったですし。

―――プロ入りも考えてはいましたか?

MIYAVI それはずっと、ですね。やるからにはと思っていました。ただ、ケガがあってチームを離れて、それまでもコーチがコロコロ変わったりして、一つを変えたら、全部が変わることもあった。実際にケガをして離れて、帰ってきたら全然違うんですよ。練習についていけない部分もありました。あとは離れている時間にいろいろな友達とも出会って、サッカー以外のことも知り、いろいろなことを覚えた時期でもありました。サッカーへの情熱が100%ではなくなっていたんですね。

 それまでは朝起きて、学校に行くまでボールを蹴っていたし、休み時間も、昼飯も早く食べてグラウンド取ってサッカーをして。学校が終わったら、みんなで公園に行ってサッカーをして。でも、それまで楽しかったボールを蹴るということが、いつの間にか楽しくなくなったんです。「何のためにサッカーをやっているんだろうな」って。そしてケガから復帰したらガラッとチームが変わっているし、練習にはついていけてないし。生まれて初めて挫折を経験しました。まだ自分が弱かったんだと思います。子どもながらにも本当につらくて。何でつらい思いをしてボールを蹴りに行っているんだろうと思って辞めました。中2くらいかな。

■ギターとサッカー、シンクロする感覚

―――そしてギターと出会う。

MIYAVI それもたまたまなんです。サッカーを辞めてから彼女にもフラれて。人ってワクワクしている時が未来を感じる時だと思うんです。女の子から見ても、男はそういう時が輝いているんだろうなと。サッカーを辞めて自分の中の軸がなくなり、心の中にドカッて大きな穴が開いて。それまであった自信がなくなり、あまり自分をまっすぐ見ることができなくなった。彼女にフラれるわ、友達もいないわで。でも学校の外に友達はいて、本当に打ち込む事がなかったので、何気なくバンドを始めたんです。それでギターを手に取り、ドレミを弾いた時に気づけばマラカナンスタジアムにいました(笑)。

 サッカー選手の時に自分がパサーだったこともあって、創作する喜びをすぐ覚えられたんですよね。適当に指一本でコードのようなコードでないような、それでも何となくのポジションで弾いていると曲のような流れが作れてくる。それってボランチだった時の感じにすごく似ていて。「あ、これ自分で作れるかも」と思ってから、そこからはずっとギターですね。ライブをした時はゴールを決めた時のような感覚に近いものがあって。ゴールを決めた時は本当に頭が真っ白になる。その瞬間というのを、はじめて文化祭とかのステージでやった時に、すごく感じて。毎日とにかくギターだけを弾いていました。

―――サッカーをやっていたからこそ、という部分もありますか?

MIYAVI どうですかね。サッカーをやっていて役立ったことは、ちょっと足腰が強くなったくらいかな(笑)。ステージでパフォーマンスをする時、音楽だけをやってきた人たちと比べた場合、どちらかというとアスリートのような感覚ではいます。「見せる」ということ、「パフォーマンスを最大限発揮する」という意味ではフィジカルの部分もすごく大きくて。でも音楽はメンタルなんです。目に見えないものだし。一方で“ロックスター”にはフィジカルな部分もあって。

 サッカーでも上手い人は腐るほどいるけど、“スター”は限られているじゃないですか。日本ではカズさんはすごく格好良かった。ラモスさんも好きだったけど、試合ではカズダンスとかしていましたね。

 カズさんは今、50歳になっても現役でやられている。格好いいですよね。生き方ってアートだと思っていて。ゴッホにしてもピカソにしても死んで初めて、生き方含めてアートになるというか。僕たちも一緒だと思うんです。カズさんも一緒だと思う。彼の生き方はすごいアートだなって思いますし、僕も自分の生き方を含めて、作品や表現にしたいとは思っていますね。

■MIYAVIが考える「世界で戦うために必要なこと」

―――ここからは「海外で戦っていくために」をテーマにお話をうかがいます。拠点を現在はアメリカに置くMIYAVIさんが、海外で戦うために一番大切にされていることは何でしょうか?

MIYAVI 自分を保つ、維持するという意味でいくと、言語と食事ですね。アーティストに限らず、すごく大事だと思います。日本の周りに海があるように、まず壁があるのは言語です。翻訳を待たないとすぐに情報が入ってこない。例えば極端な話、「今地球が爆発しますよ」という情報が流れていても、気付かない。爆発する寸前に、一拍あいて日本語が流れてきても逃げられないじゃないですか。それくらい言語の壁はデカいと思います。サッカーも音楽も、言語の壁を越えられるものなんですけど、やはりコミュニケーションにおいて言語力は大きい。

―――サッカーでも例えば練習やミーティングにも通訳をつけることで、監督に嫌われてしまうケースもあります。

MIYAVI 結局そうなんですよね。僕らもそう。直接的なコミュニケーションってすごくデカいんですよ。自分の言葉で自分の思いを伝えるということ。音楽で言えば、プレーするだけならいいんだけど、音楽を作る時、プロデューサーと会話が成り立たなくなるんですよ。細かい意思疎通ができなくなる。通訳の人から出てくる言葉は、そこに生まれる情熱が薄くなっているものになる。互いに酔っぱらっているときでも、間に人がいるといろいろな与太話にもならないですし、コミュニケーションが深まらない。

―――そこで意思疎通ができなくて、結局日本人で集まってしまうこともありますね。

MIYAVI そう。だから俺はロスにいる日本の人たちとはあまり会ってないです。嫌いなわけではなく、仲間として、逃げ場であってほしくないというか。互いが戦った上で集う、であればいいんです。サッカーを辞めた時に俺はそうだったので。友達とつるむのが逃げ場だった。でもそこに意味はない。何もやってないから。そういう意味で、俺はギターに救われたんです。ギターが救い出してくれて、ここまで連れてきてくれた。なので新しいことに挑戦するのもギターに対しての恩返しでもあります。

■海外にベースを置くことの厳しさ

―――言語以外には食事の大切さも挙げられました。

MIYAVI 腸の長さも日本人と欧米人を比べれば違うし、消化活動だって違う。やっぱり米やうどんを食べてきた人種と赤肉を食べてきた人種は違いますよ。僕らが欧米の牛肉を食べると消化不良を起こしやすいし。逆もしかりですね。食はすごく気にしています。あとは日本と海外を行き来するので、時差はすごく気にかけていますね。

―――生活の違いからメンタルに影響が出て、いいパフォーマンスを発揮できないケースも多くあります。

MIYAVI そういうメンテナンスをした上で、どこに志を置くかですよね。海外に行ってやることが目的ではない。その先を見ていないとキツいですよ。俺も正直キツかったし。

―――それを支えるのは自分の信念ですか?

MIYAVI 何を成し遂げたいのかが明確になってないとキツい。音楽でも挫折しかけたんですよ、最近。海外でパフォーマンスすることは、ずっとやっていたんですけど、「日本から海外に行く」のと、「海外でやる」ことって違うんですよね。サッカーも日本代表として協賛がついて海外に行くことと、向こうにベースを置いて活動することは違う。2、3年前に渡米した時がある種、地元のクラブチームからセレッソに入った時の感じと被っていたんですよね。レベルも高い上に、環境も違う。レベルが高いだけであれば、そこに対してチャレンジ、努力をすればいいけど、環境も違うからそこからまず始めないといけないというのはデカかったですね。

―――それを乗り越えられたのは?

MIYAVI 家族です。セレッソに行ってケガをして挫折した時と、今違うものがあるとするならば、自分の家族。当時はもちろん親はいましたが、今は自分の娘がいて嫁がいて、応援してくれるファンもいる。そこが決定的に違う。守るべき存在がいることは大きいです。もう戻れないですから。アメリカに行って、娘たちは学校に通っている。娘たちの学校の教育方法も違うわけですよ。そういうプレッシャーはメチャメチャありました。でも、やるしかない。

 違ったことは、一度挫折しているということです。何となくですけど、挫折の味は知っていて、そこから学べたことを含めると、サッカーをやっていて良かったと思いますよ。サッカーと音楽は違いますが、サッカーをやっていたことで挫折を経験して、その挫折を今また乗り越える。同じ人生の中の話ですけど、何かが見えてきた、峠を越えたという感じはすごくしていますね。

■MIYAVIが描く“これから”

——今後のビジョンはありますか?

MIYAVI 今年がMIYAVIの15周年で、ベストアルバムを出しますが、15年前の自分が今の自分を想像できたかと言ったら、できていない。それは今も同じで、15年後の自分は全く想像できない。けれど、こっちだという方向は確信している。アーティストとして、音楽や映画、ファッション、演技も含めて多角的にブランディングをして表現していく、そういう時代になると思うので、そこへアプローチしていきたいと思っています。もしかしたら5年後、10年後は音楽をやっていないかもしれない。娘もいますし、自分たちが死んだ後の世界も良くなければいけないし、より良いものであってほしいですから。将来は、教育や農業、リサイクルといった、もっとダイレクトな活動をしているかもしれません。

―――実際にそういった活動も増えてきていらっしゃいますね。

MIYAVI それこそ、マラカナンスタジアムのようなデカいアリーナでチケットを売ってライブをやるのも、もちろん大きな価値ですけど、難民キャンプに行ってマイクとアコギ1本でやることも、同じ意味になってきたというか。ライフワークとして、どっちがどう、ではない。そういう意味では価値観が変わってきたかもしれません。成功の価値観、人生の価値観。サッカーもそうですけど、何事もつらい時に乗り越えられるまで向き合い続けることが大切だと思います。

■PHOTO GALLERY

■Information■

【アルバム情報】
ベストアルバム『ALL TIME BEST “DAY 2”』 2017年4月5日リリース

MIYAVIのデビュー15周年を飾る集大成ベストアルバム! 過去のシングル楽曲から新たに録音した楽曲、新曲となる映画『無限の住人』主題歌「Live to Die Another Day -存在証明-」を含む2枚組全33曲収録(初回盤)

◆初回限定盤(2CD+DVD)価格: \7,800(tax out)TYCT-69114
【2CD】DISC 1(オリジナル14曲+新録5曲+新曲1曲=20曲)/ DISC 2 (13曲)全33曲
【スリーブケース付き】
【DVD】MIYAVI Japan Tour 2016“NEW BEAT, NEW FUTURE” Tour Final 幕張メッセLIVE映像(約87分)
【特典Booklet】
・MIYAVI Japan Tour 2016“NEW BEAT, NEW FUTURE” スチール集(20ページ予定)

【ライブ情報】
MIYAVIデビュー15周年を記念して都内で15本の対バンライブが開催!!
「MIYAVI 15th Anniversary Live “NEO TOKYO 15”」
5/21(日)赤坂 BLITZ(GUEST:THE ORAL CIGARETTES)
5/25(木)代官山 UNIT(GUEST:GLIM SPANKY)
5/26(金)Zepp DiverCity(GUEST:ゆるめるモ!)
5/28(日)下北沢 GARDEN(GUEST:LOCAL CONNECT)
6/6(火)赤坂 BLITZ(GUEST:金子ノブアキ)
6/10(土)duo MUSIC EXCHANGE(GUEST:coldrain)
6/11(日)LIQUIDROOM(GUEST:04 Limited Sazabys、魔法少女になり隊)
6/12(月)LIQUIDROOM(GUEST:SiM)
6/15(木)TSUTAYA O-EAST(GUEST:Crossfaith)
6/21(水)clubasia(GUEST:Crystal Lake)
6/22(木)TSUTAYA O-WEST(GUEST:OKAMOTO’S)
6/24(土)渋谷 WWW(GUEST:Charisma.com)
6/25(日)渋谷 WWW X(GUEST:ちゃんみな)
6/27(火)渋谷 CLUB QUATTRO(GUEST:ACIDMAN)
6/29(木)新木場 STUDIO COAST(GUEST:三浦大知)

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