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「可能性がある限り」…JPFAトライアウト、40歳盛田らベテラン勢も存在感

2016.12.09

平均年齢約26歳の中で盛田剛平(28番)や佐々木勇人(14番)らベテラン勢の存在感も光った

 毎年恒例の「JPFAトライアウト」が8、9日の2日間にわたって千葉市のフクダ電子アリーナで行われ、100人を超える参加者が7対7と11対11のゲーム形式を行った。JPFAによると平均年齢は26.3歳。J2やJ3クラブの若手選手も多い中、J1経験豊富なベテランも現役続行へアピールした。

 かつてFC東京などで活躍し、U-20日本代表として2003年のワールドユース選手権(現U-20ワールドカップ)にも出場した鈴木規郎は、3年ぶりのJリーグ復帰を目指して参加した。左サイドハーフと本職でないボランチとしてプレーし、ゴール前のこぼれ球を得意の左足で合わせてゴールも決めた。元ブラジル代表のロベルト・カルロス氏にちなんで「ノリカル」と呼ばれた強烈なFKやミドルシュートを披露する場面こそなかったが、健在ぶりを示した。

鈴木規郎

Jリーグ復帰を目指す鈴木規郎

 2014シーズン限りでベガルタ仙台との契約が満了すると、新天地にフィリピンを選んだ。「J1で(試合に)出ていて東南アジアに行こうと思う人はなかなかいない。だから行きたいと思った。フランス(2009~10年にアンジェ所属)に行った時も『日本代表じゃないと海外に行けない』というイメージがあったから挑戦した。その気持ちがまた出てきた」と、フィリピンの強豪グローバルFCに移籍した理由を説明する。その挑戦は1シーズンで終わり、今年は所属クラブのないまま浪人生活を送った。春にはJ2のジェフユナイテッド千葉やザスパクサツ群馬で練習参加したが契約に至らず、関東リーグ1部のVONDS市原で練習しながらコンディションを整えてきたという。

「日本サッカーのマーケットから外れてしまい、なかなか厳しい世界だと思う。32歳なので第二の人生も考えないといけない」と現実的に話すが、再びJリーグのピッチに立つ夢は諦めていない。「仙台をアウト(戦力外)になってから日本のチームでずっとやっていれば苦労はなかったかもしれないけど、いい経験になった。これでどこかのチームに入れたらすごいと思う。まだシーズンは始まっていないし、もっと言えばキャンプもチャンスだと思っている」と、長期戦になってもチームを探し続ける覚悟を決めている。

 アルビレックス新潟や仙台などでJ1通算234試合の実績を持つ横浜FCの松下年宏は「ある程度、自分のプレーは分かってもらえていると思うけれど、新しい部分を見せられたらいいと思って参加した」と同じ33歳のチームメート、内田智也とともにエントリーした。だが、11対11のゲームが始まってすぐに右ふくらはぎを痛めるアクシデントに見舞われ、自らの判断で交代した。そのままピッチに戻ることなく不完全燃焼に終わり「30歳を過ぎると動けないと思われる。そういう意味でも参加して、まだ全然やれるというのをアピールするつもりが、逆にケガをしてしまって悔しい。すごくもったいない」と肩を落とした。

松下年宏

7対7のゲームでボールを追う松下年宏

 7日には妻が第2子の男児を出産したばかり。「生まれてきた子どものためにもっと頑張りたいという思いでここに参加した。ただ、指導者のB級ライセンスに行ったり、出産があったり、あとは(7対7を行ったフクダ電子フィールドの)人工芝に慣れていないのもあった。見えないところでいろいろな蓄積があったのかな」と複雑な表情を浮かべた。

 ガンバ大阪で2008年のAFCチャンピオンズリーグ(ACL)優勝に貢献し、FIFAクラブワールドカップ(クラブW杯)も経験した栃木SCの佐々木勇人は、右サイドから得意のクロスでオウンゴールを誘うなど167センチの小さな体で積極的に走り回った。34歳のドリブラーは「まだできると思う。ドリブルだけでなくクロスや鋭い縦パスとか、いろんなプレーを見てもらいたい」と、個性あふれるプレースタイルに自信を漂わせる。

 4日に行われたツエーゲン金沢とのJ2・J3の入れ替え戦にも出場したが、その2日後に契約を更新しないと通知された。「この時期は神経質になる。本当にショックだったけれど、その時にトライアウトの申し込みをした」と、気持ちを切り替えて2度目の参加を決断した。これまでACLや天皇杯のビッグタイトルを獲得し、J1からJ3まで全カテゴリーで通算301試合に出場。妻と9歳の長男、4歳の次男からは「悔いのないようにやって」と後押しされたという。現在開催中のクラブW杯に出場したのがちょうど8年前の12月。「あそこに立っていたなんてびっくり。でもああいう舞台はいいですね」と、もう一花咲かせる決意を新たにした。

佐々木勇人

クロスを上げる佐々木勇人(左)。8年前のクラブW杯では準々決勝のアデレード・ユナイテッド戦に出場した

 参加最年長となる40歳、ヴァンフォーレ甲府の盛田剛平は2トップの一角としてプレー。189センチの長身を生かして長くセンターバックも務めてきたベテランは「これでどこかにDFとして入ったら面白いですね」と冗談交じりに語った。プロ18年目の今季はリーグ戦で出場6試合にとどまった。「生活できない金額でやろうとは思わない。仕事としてのサッカーを続けられるうちはやりたい。(選択肢を)アジアとかに広げても40歳という年齢だけで興味を持ってもらえないかもしれないけど、可能性がある限り頑張ります」と宣言した。

 無類のラーメン好きとして知られ、退団を知らせるクラブのリリースにも「濃厚コテコテの旨味のつまった5年間でした(中略)ラーメン屋始めたら、行くところなかったんだなと思ってもらえれば」とユーモアを交えてコメントした。これまでJリーグの6クラブでプレーしてきた空中戦のスペシャリストは「全国どこにでもラーメンは絶対にある。もし(新天地が)決まったら、それも楽しみの一つ。現役が一番いいと思っているので、とりあえずあがいています」と悲壮感を漂わせることなく、明るい表情で意欲を口にした。

文・写真=田丸英生(共同通信社)

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