2015.06.10

決戦間近の脳性まひ者7人制サッカー、パラリンピック出場なるか

脳性まひ者7人制サッカー日本代表の面々

 間もなく、CPサッカー日本代表が夢舞台の切符をかけたラストチャンスに挑む。

「Cerebral Palsy」。「脳からのまひ」という頭文字をとった同競技は、日本で脳性まひ者7人制サッカーと呼ばれている。ピッチとゴールが小さいことやオフサイドがない点、片手でのアンダースローインが認められている点、30分ハーフという試合時間を除けば、国際サッカー連盟の定める11人制のルールに準じている。

 選手たちは、脳性まひや脳卒中などの脳血管障害、交通事故などでの脳外傷や頭部外傷により身体にまひを持つが、ヘディングは言うに及ばず体をぶつけ合うフィジカルコンタクトも当たり前に繰り広げる。ピッチを疾走し、シュートを打つべく足を振り抜く姿は、健常者のサッカーと全く変わらない。選手たちが障害を負った時期、状態は異なるが、ボールを追いかける情熱にも違いはない。

 日本代表の加賀山直義ヘンリーは、12年前に脳梗塞を患った際に右上半身がまひした。日系二世としてブラジルで生まれ、幼少の頃からボールを蹴ってきた。25歳で来日した後も草サッカーを楽しんでいただけに、「自分のサッカー人生はここで終わったなと諦めていた」と当時を振り返る。しかし、自身と同じ障害を持ちながらも、サッカーを楽しんでいる人々をインターネットで知るとすぐさま参加。現在も日本のゴールマウスを守っている。

 キャプテンである芳野竜太は、先天性の脳性まひを抱えている。高校2年生のときにひざをけがしたことで、それまで打ち込んでいた野球を引退せざるをえなかった。やることのない状態が続いていたが、ひざの負傷が治り、友達に誘われたことでCPサッカーと出会った。23歳で初招集されてから、10年以上に渡って日本代表を支え続けている。

 初のパラリンピック出場を狙う日本は、昨年に韓国で行われたアジアパラ競技大会で銀メダルを獲得。今月にイングランドで開催される世界選手権に出場し、来年のリオデジャネイロ・パラリンピックへの切符に挑むことになる。

 パラリンピックに出場するためには、世界選手権で16カ国中8位以内に入らなければならない。現在の世界ランキングが14位、世界選手権で未勝利の日本にとって越えなければいけないハードルは高い。佐野潤一監督も、「障害の一番軽いC8クラスの選手は日本にいない。一方で、世界ではJFAでもプレーできるC8クラスの選手がいる」と他国との力の差を認める。

 とは言え、11人制同様、CPサッカーでも実力差がそのまま結果に繋がるわけではない。2011年から代表スタッフとなり、その後に監督に就任した指揮官はこう語る。

「攻められてもゴールを許さなければいい。最後の球際の一歩をやりきる。諦めない。それは彼らに障害があろうとなかろうと同じ。最後まで諦めないという一歩、数センチでも足に当たっていれば枠に入らない。そういう基本的なことをやり切れば、もしかしたらチャンスがくるのではないかと」

「自分の人生をかけてやらないと、パラリンピックには手が届かないのかなと思っている。一日一日成長できるように一所懸命やっている」と芳野が言うように、道のりは簡単ではない。しかし、出場権獲得のラストチャンスに向け、選手たちの気持ちは強い。

 奇しくも自身の生まれた国でパラリンピックが開催されることになったヘンリーは、「モチベーションはすごく高い」と語るが、「それよりもパラリンピックに出たい」と続ける。

「たまたまリオでやるが、元々パラリンピックへの憧れがすごくある。それがリオということで重なった。パラリンピックに出たい、雰囲気を肌で感じたい」

 そして何より、ラストチャンスとは、リオへの道だけではない。

 1988年からパラリンピックの正式種目として採用されているCPサッカーだが、リオを最後に除外が決まっている。将来的な復活の可能性はあるものの、2020年の東京パラリンピックで実施されることはない。

 だからこそ、という気持ちは当然ある。自腹で代表活動を支えていた支援者として関わりはじめ、今では指導者に立場が変わった佐野監督は、熱っぽく口にする。

「可能性を信じて進みます。キャプテンが常に言っている言葉ですが、同じ障害を持った子供たちに生きがい、やりがいを持ってもらいたい。将来こういう世界があるということを伝えたい。未来の子供たちのために戦う。そういうことを、僕たちは一番近くにいるサポーターなので、選手の夢を叶えることを応援したい」

 当のキャプテンである芳野は、思いをこう明かす。

「パラリンピックに出て、未来の子供たちがサッカーをやっていけるように。脳性まひがあってもサッカーをできる環境を作っていきたい。サッカーをやりたい小さい子供たちもいっぱいいて、本当にやる場を探していて。(健常者に)ついていけなくなってやれなくなる子供たちもいる。環境がないとサッカーをやりたくてもやれなかったりすることが多い。一人でも多くの方にこういうサッカーを知って頂いて、一般の方にもどんどん入ってきて頂いて、みんなで盛り上げていければ。サッカーを通じて障害の理解が進めばいい」

 様々な思いを抱いて臨む、夢舞台へのラストチャンス。CPサッカー日本代表の戦いは、6月16日に開催国イングランドとの開幕戦から始まる。

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