2014.11.22

地道な活動が実ったブラサカ世界選手権の日本開催、リオへ道は続く

日本は今大会で、初勝利と初の決勝トーナメント進出を果たした

 ブラインドサッカー世界選手権の準々決勝、中国と対戦した日本は、0-0の末に迎えたPK戦に惜しくも1-2で敗れた。目標としたベスト4には、あと一歩届かず。22日(土)からは順位決定トーナメントに臨む。

 試合後、ディフェンスの要として君臨した田中章仁は、押し寄せる悔しさに耐えながら、語ってくれた。

「中国は格上なので、日本の守備をしっかりと、まずは失点ゼロに抑えるのを目標にしていました。その中で、ワンチャンスで1点取れればという戦いをしていたんですけど、最後はPKで…。もう一回、力をつけてこいということだと思うので、今までやって来たことをベースに、2年後のリオ・パラリンピックに向けてがんばっていきたいと思います。まだ大会は終わっていないし、流れの中では点を取られていないので、日本の守備は間違ってないです。今までやってきたことをあと2試合続けながら、2連勝して5位になりたいと思います」

 日本の守備は間違っていないと、胸を張る田中。2011年に就任した魚住稿監督の下、日本代表は世界の舞台で結果を残すためのチーム作りに着手した。システムは『1-2-1』のダイヤモンド型。中央のすき間を抜かれないようにコンパクトに締めつつ、サイドへ追い出す。また、可能な限りこの形を崩さないように、ファーストディフェンスは相手を自陣に引き込んでから、先端のポジションに立つ川村怜、黒田智成、落合啓士らがボールにアプローチする。

 そこから攻撃に出るのは、基本的に1人。ボールを奪った選手がドリブルで進攻したら、他の3人は自陣に残り、『1-2』のゾーンを作って構える。

「日本はもっと人数をかけて攻められないの?」と思った人もいるかもしれない。

 しかし、実際に試合を見るとわかるが、世界の選手たちは本当にレベルが高い。体が大きく、テクニックがあり、ボール感知力も優れている。この舞台で結果を残すためには、日本が示した堅守速攻スタイルが正解であることは疑いようもない。

 ロンドン・パラリンピックで銀メダルに輝いたフランスが、まさかの最下位でグループリーグ敗退の憂き目にあったことからもわかるように、この大会には楽に勝てるような試合がひとつもない。にもかかわらず、準々決勝までの4試合で日本が許した失点は、フランス戦で喫した第2PKの1点のみ。チームとして成し遂げたことは100点満点に近いパフォーマンスだろう。

 また、それができたのも、今回の日本開催というホームアドバンテージが充分に生かされたからだ。

「(声援は)すごく大きな力になりました。ひとつひとつのプレーが切れたとき、本当に苦しい場面ってあるんですね。そのときに拍手だったり、ニッポンコールだったり。がんばらなきゃ、みんなが見てるから、一歩踏み出さなきゃ。そういうところで背中を押してもらえたなと思います。メディアのみなさんを通して、ブラインドサッカーをひとつのスポーツとして取り上げてくれたこの大会、本当に素晴らしいなと思います」(落合啓士)

 キャプテンを務める落合は、ここ数年、ブラインドサッカーの魅力を伝える周知活動に懸命に取り組んできた。SNSはもちろんのこと、サッカー系のトークイベントやサポーターの集まりなど、さまざまな場所に顔を出し、「ブラインドサッカー日本代表の落合です」と自己紹介して周った。筆者とも、そのひとつで出会っている。

 何も知らないときは「アクティブな人だなあ」と思ったものだが、ある忘年会の席では、もうひとつの本心も覗かせた。全盲の視覚障がい者である落合は、自分の家や職場など、知っている場所には自分ひとりの力でたどり着けるが、初めての場所を訪れようとすると、他人のサポートが必要になる。「(イベントなど)こういう場に来ると、他の人に迷惑をかけてしまう。だから、来ようと思うこと自体、僕らにはすごく勇気がいるんだ」と。

 そんな気持ちを内包しつつも、落合は足を運び続け、いつも気さくな笑顔を絶やさなかった。今大会でこれほど多くのファンに支えられたのも、そうした日々の活動があったからではないだろうか。

 日本サッカー協会も後援する今回の世界選手権だが、ブラインドサッカー日本代表のユニフォームには、サッカー日本代表のシンボルである八咫烏(やたがらす)がデザインされていない。それについて、落合は次のように語ってくれた。

「僕個人としては、小さい頃にサッカー選手を夢見ていたので、一度は八咫烏のユニフォームにあこがれたし、そういう意味では着たいという気持ちはあります。(落合が徐々に視力を失っていく難病を発症したのは10歳の頃。小学生の頃は、晴眼者としてサッカーをプレーしていた)。
だけど、僕らは今のユニフォームに誇りを持っています。というのも、これはブラインドサッカーが無名だった頃に、事務局が苦労して、スポンサーに頭を下げて作ってもらった大切なユニフォームです。そういうところから僕ら日本代表は出発しているので、本当に、事務局の苦労が詰まっているこのユニフォームに、僕らは誇りを持っています」

 この言葉を伝えると、事務局のスタッフはにっこりと、うれしそうな顔をした。それは今大会の裏のハイライトだ。また、事務局だけでなく、今大会には数百人単位のボランティアスタッフが参加している。彼らの力なくして、大会の成功はあり得ない。また、そうした協力は大会中だけでなく、普段から必要とされている。

「日本が上位に行くためには、普段の練習のサポート、そういうところからみんなで力を合わせないと、たどり着けないと思います」(落合)

 世界の舞台で活躍するために、もっとうまく、もっと強くなりたいと励む選手たちだが、そもそも自主トレーニングというものが難しい。昔の話だが、落合は公園で自主トレをして、見失ったボールを数十分も探し回ったことがあったそうだ。ボール出し、ボール拾いなど、やはり試合と同様、ブラインドサッカーは晴眼者とタッグを組まなければならない。それこそが、このスポーツの意義でもある。

 今大会でブラインドサッカーに魅せられ、日本代表にもっと関わりたいと思った方は、新たなドアをノックしてみるのもいいだろう。もちろん、無理のない範囲で。もしかすると、2016年リオ・パラリンピック、2020年東京パラリンピックを、他人とは違う気持ちで迎えられるかもしれない。

文=清水英斗

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