2013.08.09

主審の裁量が増したオフサイド新解釈、選手はより集中が必要に

大迫勇也
サンパウロ戦でハットトリックの活躍を見せた大迫 [写真]=Getty Images

 8月7日のスルガ銀行チャンピオンシップ2013で、鹿島アントラーズの大迫勇也が決めた決勝点に関係して書いたオフサイドの新解釈について、様々な議論がなされている。

 大迫のポジションがそもそもオフサイドでなかったことは、映像を確認したクラブ関係者から試合後のスタジアムで確認済みだったが、仮にオフサイドだったとしてもゴールが認められたのではないかという話題が記者室で起こったことを受け、新解釈についてのコラムを書くに至ったのが前回の経緯だ。

 その後、編集部にも複数の問い合わせがあり、図らずも議論活性化の一端を担ってしまった身として、ここで改めてオフサイドの新解釈について整理したいと考え、レフェリー関係者に追加取材を試みた。

 まずはもう一度、今回の新解釈について確認しておこう。日本サッカー協会(JFA)のホームページでは、2013/2014年 競技規則の改正(第11条-オフサイド競技規則の解釈の変更)について、以下のように説明されている。

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“その位置にいることで利益を得る”ことの解釈では、
(i)ゴールポストやクロスバー、相手競技者からはね返った、またはそれらに当たって方向が変わってきたボールをプレーした場合
(ii)相手競技者によって意図的にセーブされたボールをプレーした場合
 と、試合の状況によって2つに分けた文章となったが、どちらの場合も既にオフサイドポジションにいる競技者がプレーした場合にはその位置にいることによって利益を得たことによりオフサイドとなり、現行と変わることはない。

 また、守備側競技者が意図的にプレーした場合(それが思いどおりのプレーでなかったとしても)、そのボールを既にオフサイドポジションにいる攻撃側競技者が受けたケースでは利益を得たという判断をしないことが明確に示された。これは改正理由にあるように、解釈の幅を狭めてより明確にすることを意味していると考えられるが、現行の日本での解釈や適用についても、一部修正が求められることになる。

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 これを簡単にまとめると、「意図的なセーブ」と「意図的なプレー」によって、オフサイドの適用が異なるということ。守備側の「意図的なプレー」があった場合は、オフサイドは取られない。

 そこでポイントになるのが、守備側の「意図のあるセーブ」と「意図のあるプレー」の違いについてだ。

 JFAの説明では、「意図的なセーブ」はクロスバーやポストに当たったのと同じ扱いになり、その瞬間にオフサイドポジションにいた選手は利益を得ることになるが、「意図的にプレーした場合(それが思いどおりのプレーでなかったとしても)、そのボールを既にオフサイドポジションにいる攻撃側競技者が受けたケースでは利益を得たという判断をしない」とされている。同時に「現行の日本での解釈や適応についても一部修正が求められる」ともしている。

 では、何をもって「意図のあるプレー」とするのだろうか。

 その判断をするのは主審だ。

 「意図のあるプレー」の定義については特に明記されておらず、もちろん一概にできるものではない。当然ながら主審は一つひとつのプレーに関して選手に意図の有無をヒアリングするわけでも、映像を見直して確認するわけでもない。

 例えば、攻撃側選手のシュートが守備側選手に当たってコースが変わった場合、主審が「意図的なセーブだった」、もしくは「DFの意図的なプレーではなかった」と判断すればオフサイド、「思いどおりではないが、意図のあるプレーだった」と見ればオフサイドではなく、オフサイドポジションにいた選手がゴールを決めても問題はないことになる。

 守備側の選手が足を出してシュートコースを変えた場合や、FKの守備で壁に入った選手がジャンプしたところにボールが当たったケースで、それが意図的なプレーにあたるのかどうか。いわゆる「未必の故意」をどう見るかも判断の分かれ目だ。

 一般的に守備側の選手は「ゴールを守ろうとする意図」を持ってプレーするわけだが、そこでのプレーが「意図的なセーブ」もしくは「意図のないプレー」だったのか、「思いどおりではないが意図のあるプレー」だったのかどうかの判断は主審の裁量に任される。

 先のコラムでは、意図のある「プレー」すべきところを「セーブ」と書いたことで混乱をきたしてしまった。また、「新解釈では大迫のゴールは仮にオフサイドポジションだったとしても認められた」としたが、より誤解を招かないよう、「新解釈では主審の判断で認められる可能性があった」とすべきだった。

 では、実際にピッチ上で判断しなければならないレフェリーは、今回の新解釈をどう感じているのだろうか。

 JFAのホームページでは映像を使って説明しているが、その説明映像や「意図のあるプレー」については、プロフェッショナルレフェリーを含むレフェリー間でも意見が分かれているという。やはり現場でも判断の難しさが見られるようだ。

 解釈の難しさを感じているのはJクラブも同じだ。今回の新解釈を受け、クラブ側は選手たちに「自分たちで勝手にオフサイドと判断せず、絶対に笛が鳴るまで集中を切らさずプレーするように」と強調している。

 攻撃側は「オフサイドかもしれない」と思ってもプレーを続けてゴールを決めれば得点が認められるかもしれないし、守備側はオフサイドと思ってプレーを止めたら相手の得点が認められてしまう可能性がある。守備側の選手が副審に向けて手を上げてオフサイドをアピールするシーンをよく目にするが、主審の笛が鳴るまでプレーすることはサッカーの大前提。攻撃側も守備側も今まで以上に笛が鳴るまで集中したプレーが求められる。

 なお、オフサイドの新解釈に際しての副審の役割についてもお知らせしておきたい。攻撃側の選手がオフサイドポジションにいた場合、副審はこれまでどおりフラッグを上げることになっている。ただし、副審が攻撃側のオフサイドを示した場合でも、主審が守備側の動きを「意図のあるプレー」と判断すれば笛を吹くことはない。新解釈における副審の役割と、フラッグが上がったからといって必ずオフサイドとなるわけではないことは知っておくべきだろう。

 あるレフェリーに聞いたところ、「今回の新解釈は攻撃側にとってはラッキーな、守備側にとっては不利な解釈になるかもしれない」とのこと。オフサイドの新解釈に関しては、今まで以上に主審の裁量がポイントになることを頭の片隅に置いておきたい。

 丁寧な整理をする上で、いささか長文となってしまったが、今回の追加取材を通じて現場の声を聞き、オフサイドルールの新解釈が非常に難しいものであると改めて感じさせられた。本件を通じて、普段はスポットの当たりづらい「サッカーのルール」や「主審の判断の難しさ」について一人でも多くの方が関心を寄せてくれたのであれば幸いに思う。

文=青山知雄(Jリーグサッカーキング編集長)

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