2013.06.21

「福島から明るいニュースを!」福島ユナイテッドFCの日本初の試み

福島ユナイテッドFC
6月30日、JFL第18節の福島ユナイテッドFC(写真)vs佐川印刷SCは、湘南の本拠地Shonan BMW スタジアム平塚で行われる

 福島に明るいニュースを届けるため、福島の子どもたちが未来に希望を持ってくれるように、といったサッカー以上に大きな願いが込められたチームがある。名は実を現すという言葉のとおり、福島が一つになったという意味の名がついたフットボールクラブ「福島ユナイテッドFC」である。今シーズンからJFLにその戦いの場を移し、J1の湘南ベルマーレとの提携など、新しい取り組みを始める福島。6月30日(日)には、福島県からの県外避難者を招待し、交流を図ること、深刻な風評被害払拭のため、福島県産の物産や観光PRを行うことを大きな目的とし、ホームゲームを湘南のホームタウン平塚で開催する。Jリーグのホームタウンで、他チームが自ら望んでホームゲームを開催することは、日本サッカー史上初めての試みである。福島ユナイテッドが次々と発表する、日本サッカー史上初という事の真相を聞くために、桃の葉が雨に打たれる5月下旬、福島を訪ねた。

■日本サッカー史上初めての業務提携

 2012シーズン、東北社会人リーグで優勝し、JFL昇格を決めた福島ユナイテッドFCは、今年1月、J1昇格を決めた湘南ベルマーレとの業務提携を発表しました。JリーグのクラブとJFLのクラブが提携するのは日本サッカー史上初めての試みであり、選手の育成や強化、営業部門での連携などを目的としている。また、東日本大震災直後から、子どもたちのための支援物資の提供やサッカー教室の開催、福島の子どもたちを湘南の海へ招待するなど、2チームが交流を行ってきた中で育まれてきた一つの成果でもあった。

 2013シーズンが3月に開幕し、期限付き移籍で湘南の吉濱遼平選手と白井康介選手が福島に加わったり、グッズ販売や運営で協力体制が敷かれ、業務提携が形として現れている。さらに、大きな取り組みとして、JFL第18節の福島ユナイテッドFCのホームゲームを湘南ベルマーレのShonan BMW スタジアム平塚で開催することが決まっている。

■福島のホームゲームをShonan BMW スタジアム平塚で開催!

 この開催の意図について尋ねると、福島ユナイテッドFCの竹鼻快GMは、まずチームが持つ特異性について語った。もちろん3.11東日本大震災による影響である。「一番は我々がどういうクラブでいなければいけないのかという点です。福島は今、復興に向かっているわけですが、復興っていうのは震災が起こる前の状態に戻ることではないと思っています。震災が起こる前よりも良くなることで初めて復興と言えると思うんです。福島がチャレンジをしているところですので、私たちも復興の一つのシンボルになれるとするならば、やはり前に向かって、チャレンジし続ける姿を見せることが一番必要なことだと思っています」

 もちろん、平塚でホームゲームを開催することも、前に向かっていくチャレンジの一つである。Jリーグのホームタウンで、他チームがホームゲームを行うことも、また日本サッカー史上初めての試みとなる。「ホームタウン以外でホームゲームを行うということは前例がないことですけど、そこにメリットがあるのならばチャレンジしよう、と。この話が出た時に選手たちとも話をしましたが、チームもクラブも後ろに体重を掛けてやるのではなくて、前に向かってチャレンジしなければならない。今年で言えばJ3にチャレンジすることと同じくらい大きなことになると思います。誰もしたことはないけれどメリットがあるのであれば、チャレンジしている姿を見せられる、そんな大きなきっかけになると思います」

■がんばろう福島スペシャルマッチ

「具体的な目的は、県外に避難されている方がたくさんいらっしゃるので、その人たちに対して何かできないのか、ということへの一つの回答です。県外へ1万世帯以上の人たちが避難しているんです。自主避難を加えるともっと多くの人が避難している。その人たちに、福島ユナイテッドの元気な姿を見てもらって、楽しんでもらえいたいなと思っています。がんばろう福島スペシャルマッチのような形で開催して、交流を図ることができたらいいですね」

 福島県が県外避難者に向けて広報誌を郵送しており、その1万7千通の郵便物に試合のチラシを同封。会場で招待券と引き換えるという形で、福島に暮らしていた人を招待する。実際にアウェイゲームでも、福島ユナイテッドを応援しに、全国各地に避難している福島県民が集まっている。

「あとは風評被害払拭のために観光や食べ物など、県外でPRしたいっていうのがあるんですよね。湘南で試合をすることでベルマーレのお客さんも足を運んでくださるだろうし、ブースを出して福島の特産物を販売したりできます。風評被害は本当に深刻で、これが湘南でホームゲームを行う、最大のメリットだと思います。あとは福島の人たちにもJ1クラブのスタジアムで、オーロラビジョンがあって、こういうところに向かっているんだってことを見てもらいたいと思います。提携っていうのが形だけにならないようにしたいですね」

■福島からポジティブなニュースを

 福島ユナイテッドFCの時崎悠監督は、選手時代、最も長い期間を湘南でプレーした。古い湘南のファンにとっては、かつて声援を送っていた選手が監督として手腕を振るう凱旋試合、と見ることもできる。「日本全国に避難している福島の人たちに感謝の言葉しかないですね。負けたら寒いと思いますからプレッシャーもありますが、やりがいはその分ありますよね。お客さんの数じゃなくて、元気をもらいに来た人が、笑顔で帰れるようにしたいです。ただの勝ち点じゃなく、ただのホームゲームでもない。だからこそ、福島のサッカーを見せたいと思っています」と7年半選手として過ごした地でのホームゲームについて、時崎監督は語ってくれた。

 平塚で開催されるこのゲームの存在価値は、竹鼻GMの「福島からポジティブなニュースを配信する」という言葉に集約される。「震災後に福島を見る全国的な目が変わりました。原発の話とか、放射能の話とか。福島から発信されるニュースでポジティブなものがなかったんですよね。昨年、特に天皇杯で話題になったことで、多くの注目を集めました。正直に言えば福島っていうことがあるから、3月10日のJFL開幕戦でもたくさんの方に取材に来てもらえました。ちょうど震災から2年になる前日に、町田に勝てたことは、大きなニュースになりました。福島ユナイテッドがポジティブなニュースを発信できる、発信する可能性があるという点では私たちができることの一つだと思っています。東京の企業さんで全く福島と関係がなくてもスポンサーになっていただけるのは、やっぱり福島だからっていう部分があると思いますし、今回、湘南のスタジアムで試合ができるのも、やはり福島だからっていう部分が大きいと思うんです。これを追い風だと思って、どんどん風に乗って行こうと思います」

【試合概要】
日本フットボールリーグ第18節 福島ユナイテッドFC vs 佐川印刷SC
日時:2013年6月30日(日)13:00キックオフ
会場:Shonan BMW スタジアム平塚(平塚競技場)

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