2013.01.01

[高校サッカー選手権1回戦 青森山田-野洲]強豪同士の白熱の一戦、お互いに譲らず、PK戦で決着

1回戦屈指の好カードを制したのは青森山田 [写真]=鷹羽康博

第91回全国高校サッカー選手権大会 1回戦 青森山田-野洲
2012年12月31日(月)/14:10キックオフ/東京都・駒沢陸上競技場/観客15008人/試合時間80分

青森山田 1(1-0、0-1、PK4-2)1 野洲

(得点)
青森山田
池上(前半40+8分)

野洲
大本(後半14分)

立ち上がりから、青森山田が鋭い出足と統制のとれたディンフェンスで主導権を握る。GKが負傷交代するアクシデントを乗り越えながらも、前半アディショナルタイムに(8)池上のゴールで先制する。後半に入ると、野洲が(10)望月、(7)武田を中心にショートパスとドリブルを織りまぜた強烈なアタックで青森山田ゴールに襲いかかる。そして後半14分、(7)武田のチャンスメイクから(11)大本がゴールを決めて同点に追いつく。その後も野洲が攻め立てるも、ゴールが遠い。決着はPK戦に委ねられ、PK4-2で青森山田が野洲を下した。

◆強豪同士の白熱の一戦、お互いに譲らず、PK戦で決着

 年の瀬の駒沢競技場で繰り広げられた一戦は、両チームのプライドがぶつかり合う好ゲームだった。野洲のプライド。それは「攻撃的で積極的、技術を武器にした連動性のあるサッカー」(山本佳司監督)。野洲の監督コーチ、選手たちは「高校サッカーを変えたい」と公言し、攻撃性と個の魅力を全面に押し出したスタイルを貫いてきた。対する青森山田のプライド。それは「勝ちたい気持ちでは相手に絶対に負けるな。気持ちの強さに自信を持っていけ」(黒田剛監督)という、勝利への飽くなき執念だ。これは16年連続の青森王者にして、高円宮杯プレミアリーグで上位(4位)につけた勝者のプライドでもある。

 15008人の観衆が詰めかけた注目カード。立ち上がりから攻勢に出たのは青森山田だった。前線の(3)縣翔平と(9)林雄紀が恵まれた体格を生かしてボールをキープし、両サイドの(8)池上丈二、(11)丹代爽弥が積極的に攻め上がる。対する野洲はショートパスを主体に2人、3人とパスをつなぐが、素早い帰陣で守備ブロックを形成する青森山田ディフェンスの前に、突破口を見出すことができない。

 ゴールが生まれたのは、前半のアディショナルタイム。青森山田GK(1)野坂浩亮の負傷により大幅に中断し、9分という長いアディショナルタイムが終わりに差し掛かるころだった。青森山田の(8)池上がペナルティエリアの外から強烈なミドルシュートを沈め、先制点を奪取した。

 後半に入ると1点のビハインドを背負った野洲が、「開き直って、負けを恐れずにできた」((10)望月嶺臣)こともあり、野洲らしいアイデアとテクニックあふれるプレーでリズムを作り始める。ショートパス、スイッチ、ヒールパス、高速ドリブルなど、選手それぞれが持ち味を発揮し始め、青森山田のディフェンスを自陣にくぎづけにする。青森山田の黒田監督をして、「高円宮杯プレミアリーグでJクラブと対戦しましたが、ボールを動かすことについては野洲のほうがうまかった」と脱帽するプレーを繰り広げた。

 野洲ペースで進み、ついにゴールをこじ開けたのが後半14分。右SBから右ウイングへとポジションを変えた(7)武田侑也がドリブルで切れ込み、中央へパスを送る。それをファーサイドで(11)大本祐槻が詰めて同点に追いついた。

 その後も野洲がボールを支配し攻め立てたが、青森山田も辛抱強く守り、追加点を許さず。野洲の強力な槍と青森山田の盾が真っ向からぶつかった激戦は、1対1のままPK戦に突入。5人中4人が決めた青森山田に対し、野洲は2人が失敗。PK4対2で青森山田が2回戦進出を決めた。

 勝った青森山田は統制の取れたディフェンスが見事だった。「ブロックの形成から、攻撃後の修正は年間を通じて何回もやってきた。CBの(5)小松崎(雄太)、(4)山田(将之)を中心に声を出してやってくれた」とは黒田監督の弁。野洲の波状攻撃に対して集中を切らすことなく闘い抜いた姿勢は、高円宮杯プレミアリーグで強豪と対じしながらも、4位につけたのもうなずける完成度だった。

 そして敗れてなお、強烈なインパクトを残した野洲。ときに最終ラインが2人になるリスクを背負いながらも、ボールを保持して攻めることにこだわり、密集をショートパスとドリブルでかいくぐっていった。2人、3人と人数をかけてボールを動かしているからこそ、ボールを失っても素早いプレスですぐに奪い返すことができる。攻守に強度が高く、連動したスタイルは、山本監督が「技術の高い、今年のメンバーだからできるサッカー」と胸を張るのもうなずけるクオリティーだった。

 2005年大会の鮮烈な優勝から7年。(10)望月を筆頭にタレントをそろえ、「前回の優勝を越えるインパクトで結果を残し、日本サッカーの方向性を示したい」(山本監督)という志を持って挑んだ大会。PK戦の末に敗れはしたが、スタンドに詰めかけた15008人が、野洲が示した日本サッカーの方向性、そして育成に対する志を目撃したに違いない。野洲のように育成哲学を持ち、自らのスタイルを貫く姿勢を持ったチームが増えていくことが、日本サッカーの土壌を芳醇(ほうじゅん)にする一因になるだろう。

◆試合後コメント
青森山田・黒田剛監督
「苦しい展開になるのは予想していましたが、想像以上でした。相手のポゼッション能力が高く苦戦しましたが、選手たちがバランスを崩さずにやってくれました。失点を1以内に抑えるのがポイントで、PK戦は練習、準備もしてきたので、PKまで行けば勝てると思っていました。野洲の右サイドにボールを入れさせないようにして、左サイドにボールを動かして奪う考えを持っていたのですが、後半に(7)武田君が前に出てきてやられました。我々の得点場面は、GKのポジションが甘かったのもあると思いますが、(ミドルシュートという)思い切りのよいプレーの有効性を改めて感じました。最後は、選手たちが勝ちたい気持ちを出してくれたおかげで、PKで勝てたのではないかと思います」

野洲・山本佳司監督
「青森山田との初戦に向けて準備をしてきて、注目された中で試合ができたことに感謝しています。高校サッカーは一発勝負で、負けたら終わり。プリンスリーグと違って、気持ちがこもった大会になるのはいいところだけど、その反面、自分たちの力を出し切れなかったり、メンタルの部分で、マスコミのみなさんが一戦必勝ということで取り上げるので、サッカーの質やサッカーの素晴らしさみたいなものが、もっと伝わる文化になればいいなと思います。それを示したかったけど、できなくて残念です。前半の出来が悪く、後半の20分間ぐらいしか野洲スタイルを表現できませんでした。前半から、後半の立ち上がりのようなゲームをしていたら、相手に力を出させなかったと思います。ただ、よそにはできないサッカーは表現したんじゃないかなと。負けたくないからといって、守備ブロックを形成してショートカウンターを狙うのではなく、主導権を握って攻めていく。ブラジルやスペインは、どんな相手でも主導権を握ろうとしています。そういうことにチャレンジすることが、育成年代の最後で必要なことではないかなと思います」

野洲・(10)望月嶺臣
「自分たちのサッカーができた時間が短かったので、満足はしていません。でも悔いはないです。後半はいい意味で開き直って、負けを恐れずにできました。前半からそれができればよかったんですけど、チーム全体がテンパッてしまったというか。相手の粘り強い対応、球際の強さはさすが青森山田だなと感じました。個人的にはスルーパスの精度もまだまだでミスも多かった。ゲーム全体を落ち着かせられるようなMFにならないと、プロでは通用しないと思いますし、世界にも出て行けないと思います」

鈴木智之(スポーツライター)取材・文

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