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【インタビュー】安斎颯馬(早稲田大・青森山田OB) 選手権得点王は大学新人王に「あの舞台は財産」

2022.01.07

早稲田大で活躍する安斎 [写真]=安藤隆人

 第99回全国高校サッカー選手権大会決勝、山梨学院vs青森山田の一戦、2-2の白熱の攻防は延長戦の末にPK戦までもつれ込んだ。

 先攻の青森山田の2人目、安斎颯馬のキックは山梨学院GK熊倉匠に弾かれた。全員が成功をした山梨学院に対し、4人目のDF三輪椋平も外した青森山田は2大会連続の準優勝に終わった。表彰式が終わっても泣きじゃくる安斎と、その側にずっと寄り添う当時2年のMF松木玖生の姿は多くの人たちの感動を呼んだ。

 選手権得点王にも輝いた安斎は、早稲田大学に進学し、今年の関東大学リーグ1部の新人王に輝く活躍を見せた。あれから1年、安斎は今回の選手権、そして母校をどう見ているのか。思い出話を交えて想いを聞いた。

インタビュー=安藤隆人

選手権4強決定後にインタビューに応じてくれた安斎

―――今大会の青森山田を客観的に見てみてどう感じていますか?

安斎 「高校サッカーはいいな」と思う一方で、青森山田は本当に全方位からマークされるので、そこはかなりプレッシャーがあると思います。初戦の大社戦でスタジアムに行きましたが、前半が0-0で硬さを感じました。僕らの時も初戦は広島皆実が6バックにしてきて、僕と玖生にマンマークを当ててきて、これまで体験したことがないような状況になって、思うようにプレーができずに苦しみました。準々決勝の東山戦でもかなり苦しんでいましたが、その中でも勝ちきってベスト4まで来るのは青森山田の強みだなと思いますね。それに1年前はスタンドで応援していた選手も、あれだけ堂々とピッチに立ってプレーしている姿を見て、感慨深いというか、これだけ強くなったんだなと感じます。

―――昨年からレギュラーの選手たちには特に思い入れがあると思います。

安斎 ありますね。玖生と(宇野)禅斗は当時から本当に頼もしかったですが、一緒にコンビを組んでいた名須川真光は昨年も良かったのですが、どこか自分を表現しきれていないように感じていました。でも、今は「俺が点を取る」という強い意志をプレーを通じて感じていますね。

―――昨年度の山梨学院との決勝戦ではPK戦までもつれ込みましたが、2人目のキッカーを務めた安斎選手のキックが止められて、さらに3人目の三輪椋平選手も外して準優勝に終わりました。

安斎 ちょうど1年経ちますが、一度も忘れたことはないですし、本当に悔しかった。でもあの悔しさが今の僕の原動力になっているので、いい経験をさせてもらったなと思います。あのPKは本当に静寂の中でしたし、整列している場所からペナルティーエリアスポットに行くまでの距離がもの凄く遠く感じました。今まで体験したことがないくらい、スポットまでの時間が長く感じました。多分、その時点で僕は後手に回ってしまっていたのだと思います。

決勝戦、安斎のPKは熊倉がストップ [写真]=野口岳彦

 ペナルティースポットにボールを置いた時、ちょっと嫌な予感がしたんです。僕はGKを見て蹴るタイプだったのですが、山梨学院のGKがFC東京U-15深川でチームメイトだった熊倉匠だったというのもあって、ちょっと意識をしてしまいました。それに熊は多分、中学の時に僕がPKを苦手にしていて、10人目とかに蹴っていたことを知っていたと思うんです。それも静寂の中で考え込んでしまったことで、いっぱいいっぱいになった状態で助走を始めてしまいました。足踏みしてから蹴ったのですが、熊も多分それを知っていて、ギリギリまで動かなかったんです。それで右に蹴ったら、完全に読まれて止められました。そのあとの高校選抜で熊に「お前は絶対にこっちに蹴ると思っていた」と言われて、「やっぱりか」と思いましたね。

―――安斎選手がPKを止められて、負けた後に泣きじゃくっているときにずっと松木選手が側にいて慰めていたシーンが印象的でした。

安斎 ずっと「安斎のせいじゃない」と言ってくれましたし、それでも僕がずっと泣いていたので、寄り添い続けてくれていました。その時はもう頭の中が真っ白でしたが、今思うとあそこまで寄り添ってくれる仲間がいたということは本当に嬉しかったし、助かったなと思いました。もしあのまま僕1人で泣いていたら、もっと引きずっていたかもしれないですが、玖生もそうだし、仲間がいたからこそ立ち直れました。仲間の大切さを本当に感じました。

―――青森山田以外のチームを見て何か感じることはありますか?

安斎 本当に上手い選手が揃っていると思いました。大社はもっとベタ引きしてくるのかなと思ったのですが、積極的に前からプレスに来ていましたし、要所ではきちんと繋いでチャンスを作っていたんです。もの凄くいいチームだなと思いました。他にも高川学園はセットプレーという強烈な武器を持っていますし、静岡学園、大津、前橋育英、関東第一は技術レベルが高い選手が揃っていて、それぞれの特徴に合わせたサッカーをしています。自分たちのスタイルを持ったチームが勝ち上がってきた印象を受けますね。

最終学年の選手権は5得点で大会得点王に [写真]=野口岳彦

―――第100回大会、新国立での準決勝、決勝。うらやましさはありますか?

安斎 今の高3は“持っています”ね。あとは有観客なのがうらやましいです。僕らの時は保護者の人たちすら入れなかったので、そこはお世話になった人たちに戦っている姿を見せたかったなという気持ちは正直あります。無観客の埼玉スタジアムは凄く不思議な感覚がありました。その1年前に静岡学園と5万6000人の観客が詰めかけた決勝の舞台でプレーしているので、余計にギャップを感じましたね。

―――早稲田大では1年から出番を掴んで、新人王を取る大活躍を見せました。

安斎 こんなに早く試合に出られるとは思いませんでした。高校選抜から3月にチームに合流したのですが、最初の2、3週間は本当に何もできなくて、かなりショックを受けました。でも、デビュー戦でゴールを決めたことで自信につながって、自分でも予想以上に試合に絡めて賞までいただけて、本当に嬉しかったです。

 来年、再来年と試合に出られる保証はないですし、必ず壁にぶつかると思うので、そこで自分が何をすべきかを考えて、挫けないようにやりたいです。それにまだ『選手権得点王の安斎颯馬』、『青森山田の安斎颯馬』の印象が強いですが、『早稲田の安斎颯馬』と思われるようにしたいです。

早稲田大での最初の1年は好スタートを切った [写真]=安藤隆人

―――改めて高校の3年間はどういう時間でしたか?

安斎 かけがえのないというか、密度の濃い3年間でした。やっているときの3年間はつらいこともあったし、雪中サッカーも本当にしんどかったですし、プレッシャーもありましたが、今思うと自分たちだけの高校生活でしたし、それがあっての今。楽しいだけの高校生活よりも濃かったし、僕らにだけしかできなかった3年間でした。

―――最後にベスト4に残っている選手たちにメッセージをお願いします。

安斎 選手権は一生の宝物になると思います。やっている側からすると優勝を目指しているので、なかなかそこまで考えられる余裕はありませんが、1年経って、あの舞台はもう本当に財産だなと感じています。ピッチに立てることの幸せさを感じて戦ってほしいですし、特に3年生には頑張ってほしいです。スーパールーキーとか、2年生エースとかいると思うのですが、なんだかんだ最後に勝負を決めるのは3年間頑張ってきた3年生の力だと思うので、自分のために、チームのために頑張ってほしいと思います。



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