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大手前高松|“代名詞”のロングスローを武器にベスト8入りを目指す【選手権出場校紹介】

2020.12.23

[写真]=森田将義

 川上暢之監督就任の翌年から強化が始まり、10年目の昨年には初めて選手権に出場。2016年に昇格したプリンスリーグ四国にも定着するなど、右肩上がりの成長を続けるのが大手前高松だ。

 練習で止める、蹴るといった基礎技術やドリブル練習を反復し、個の成長を促すのがチームの特徴。スタイルとしては後方からのポゼッションが主体だが、前から奪いにくる相手に対してはDF裏へのロングボールを多用し、シュートまで持ち込むなど状況に応じた判断力も光る。

 初出場を果たした昨年度は、そうしたゲーム中の判断に優れた選手が多かった。相手や試合の流れに応じて攻撃方法をうまく選択し、相手エリアに侵入すると強肩のMF滝平昂也(現・高松大学)のロングスローからゴールネットを揺らすのが得点パターン。帝京大学可児との初戦では、強風に乗った彼のロングスローからゴールが生まれ、全国初勝利をつかんだ。しかし、矢板中央と対戦した2回戦は1−2で敗戦。スコア以上に力の差を感じる試合で、MF正木浩輔(3年)は「身長やフィジカルの違い、一つひとつのプレーに対する熱さに差を感じた」と振り返る。

 迎えた今年は、「選手権の2回戦で負けて悔しい思いをしたので、自分たちの代では全国ベスト8に行こうと決めた。そのために、香川のタイトルはすべて取ろうと決めていた」(GK三谷幸記、3年)。しかし、2月の新人戦は新チームに切り替わった直後ということもあり、準決勝で敗退。7月に行われたインターハイの代替大会も、3回戦で姿を消した。

 代替大会では昨年同様、攻撃の組み立ては選手の判断に委ねていたが、うまく機能しなかった。コロナ禍で活動が制限されるため、選手権までに昨年のレベルにまで引き上げるには時間が足りないと判断した指揮官は、攻撃の手順を明確に示した。ロングボールで相手のラインを下げてから、サイドと中央を攻め込み、相手エリアでは正木のロングスローやMF馬場﨑翔大(3年)のセットプレーからゴールを狙う。予選では、シンプルながらも迫力十分な攻撃が機能した。

 また、全国大会を経験できたのも大きかった。「一番伸びているのは、勝負強さやポイントの押さえ方。ボールの握り合いが目標になると、持てない時にストレスを感じる。でも、『持たれても、抑えればいいや』と我慢できるようになった」。そう川上監督が話すとおり、うまくいかない時間帯でも我慢強く戦い、チャンスを待てるようになった。予選で見せた力強い勝ち上がりを再現できれば、目標のベスト8入りも十分に射程圏内だ。

【KEY PLAYER】MF正木浩輔

[写真]=森田将義


 ピッチ内で見せる輝きは、誰よりも眩い。キープ力に長けたアタッカーで、自陣で奪ったボールを左サイドの深い位置まで運んでクロスからチャンスを演出できる。ゴール前での感覚にも優れており、予選決勝では全国に導くゴールをマーク。川上監督は「教えられないものを持っている。あの子に高い位置でボールを入れられるかが攻撃のポイント」と口にする。

 ドリブルにパス、シュートと何でもこなせるマルチなアタッカーで、昨年も主力として選手権を経験。最上級生として迎えた今年は、昨年以上にもう一つの持ち味であるロングスローを投げる機会が増えた。周りよりもスローインが投げられると気づいたのは2年生の終盤から。そこからは、飛距離を伸ばすために筋トレで上半身を鍛えた。最初はペナルティエリア手前までしか飛ばなかったが、今ではペナルティエリアの中心までボールが飛ぶ。チーム全体でセットプレーからゴールを奪う形も練習してきたため、今年の大きな武器となっている。

 2度目の全国に懸ける思いは人一倍強い。「そこがうちの強みだと思うので、セットプレーから点を取っていきたい。自分が点を取ればチームの勢いが出たり、落ち着くと思うので、そうした選手になれるよう頑張りたい」。歓喜を呼び込む彼の左足とともに、肩にもぜひ注目してほしい。

取材・文=森田将義

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