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星稜|他を寄せつけない戦いぶりで予選を突破…アグレッシブなサッカーで上位を狙う【選手権出場校紹介】

2020.12.22

[写真]=森田将義

 県勢最多出場を誇る星稜は2014年度に日本一を経験しているが、昨年は鵬学園に敗れて選手権出場を逃した。

「先制して、自分たちは行けるんじゃないかという雰囲気になってしまった。どこかで勝てるだろうという気持ちが生まれたのが、負けた原因」。そう振り返るのは、昨年の経験者であるMF川本虎太郎(3年)だ。

「1年生から試合に出させてもらって、勝ちも負けも経験した。勝つチームはどういうことをしてきたのか、負けた時には何が足りなかったのかを考えた。日頃の過ごし方というか、掃除というか、一つひとつの細かいことまで頑張れないと、上には行けない」。そう川本が続けるとおり、敗戦を機に、今年のチームはピッチ外の部分から見直した。学校生活の細かな部分まで気を配るとともに、例年よりも練習や試合後のミーティング回数が増加。自分たちがどういうサッカーをしたいのか、どんなチームになりたいのかを話し合い、全員が同じ方向を見続けた。

 今年のチームは「パス回しできれいに崩すのが好き」と話す川本を筆頭に、今年のチームには足元の技術に自信がある選手が多い。ただ、選手がやりたいことをしているだけでは、試合に勝てない。話し合いを重ねる中で、「勝つためには泥臭いゴールが絶対に必要。そういうゴールを奪いながら、自分たちのサッカーをしていきたい。自分たちのサッカーをするには、星稜の伝統であるサイド攻撃やハードプレスも必要になってくる」(川本)と、全員で目指すべきサッカーを共有できたのは大きかった

 話し合いを重ねた甲斐もあり、予選では今年の良さと星稜らしさを感じさせるサッカーを展開した。ベースとなるのは、MF中村領優(3年)と廣島大雅(3年)のダブルボランチを中心としたパス回しから、後方の選手が積極的に前の選手を追い越していくアグレッシブなサッカーだ。ゴール前で見せる連携からの崩しも見ていて楽しい。しかし、それだけでは相手にプレッシャーをかけられた際に、うまくいかないケースも出てくる。試合展開に合わせて相手DFの背後にロングボールを入れながら、常にゴールを目指し続けた。ボールロスト後に、素早く守備に切り替えて繰り出すショートカウンターの切れ味も鋭い。序盤からギアを全開にして挑んだ予選では、前半のうちに試合の大局を決める試合も多く、他を寄せつけない戦いぶりで2年ぶりに王座を奪還した。

 昨年の敗戦から積み上げた伝統と今年らしさが融合したサッカーは、魅力十分。初戦で当たる作陽を筆頭に猛者が集まるブロックだが、トーナメントを勝ち上がっていくだけの力はあるはずだ。

【KEY PLAYER】FW千葉大護

[写真]=森田将義


「相手を背負った状態から、どっちに転ぶか分からないボールを自分のものにできるのが特徴だと思っています」。憧れの選手として挙げるバイエルンのロベルト・レヴァンドフスキ同様に、力強いポストプレーが最大の持ち味。圧倒的なキープ力で前線のターゲット役として突破力に秀でたアタッカー陣の良さを引き出しながら、決定機ではシュートの正確さを生かしてゴールを仕留める。前線からの守備意識も高く、ストライカーとしてこれほど頼れる選手はいない。

 スピードを生かしてDFの背後へと抜け出していくFW佐々木真之介(3年)との相性もいい。二人とも前線に張るのではなく、片方が引き気味でボールを引き出してアシスト役に回るなど、得点を奪うための意思疎通もうまくいっている。予選では、5試合で15得点を奪った佐々木の陰に隠れた感もあるが、引き気味の位置から佐々木の持ち味を引き出そうとした千葉の貢献は見逃せない。

「チームとしても個人としても、決めるべきところで決めないと全国では勝てない。そういうところをチームとして磨いていきたい」と意気込むとおり、1得点に終わった予選の悔しさは全国の舞台で必ず晴らしてくれるだろう。彼のパフォーマンスが星稜の勝敗を左右するのは、間違いない。

取材・文=森田将義

By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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