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履正社|スタイルの変化は勝利に対する貪欲さの表れ…縦への鋭さがチームの武器に【選手権出場校紹介】

2020.12.21

[写真]=森田将義

 高校年代最高峰「高円宮杯プレミアリーグU-18」への在籍経験を持ち、関西屈指の強豪として知られるが、近年は選手権出場から遠ざかっていた。前回の出場は、DF田中駿汰北海道コンサドーレ札幌)、大迫暁アスルクラロ沼津)、MF牧野寛太AC長野パルセイロ)、FW林大地サガン鳥栖)と大学経由でJリーガーとなった選手が4人もいた2014年以来、実に6年ぶりだ。

 年月の流れとともに、チームスタイルの変化を感じる。前回の選手権出場時は、最終ラインから徹底してパスを繋ぐポゼッションに拘ったチームだったが、今は違う。ボールを簡単には失わないよう意識しながらも、隙あればミスを恐れずゴールへのチャレンジを繰り返す縦への鋭さがチームの武器だ。変化の理由について平野直樹監督は、こう口にする。「今まで選手権のベスト8で負けた四中工戦も、星稜戦もボールを握りながら、結局得点が取れなかった。勝負に勝つ確率を上げていくために、どうしていこうか考えていく。バルサスタイルやポゼッションというのはすべて勝つためにあり、戦術は後からついてくる。ボールを大切にするスタイルは育成に大事な部分だけど、何のために『俺たちはパスをつないでいるの?』という部分は明確にしている」。

 能力だけ見れば、選手権に出られなかった6年間の間にも、今年より上の代があったかもしれない。ただ、今年の代は、ゴールと勝利に対する貪欲さがすさまじい。ボールを失ったら瞬間から仕掛ける、前線からのハイプレッシャーは鬼気迫るほど。相手に圧力をかけて奪ったボールを、湘南ベルマーレ内定のMF平岡大陽(3年)と赤井瞭太(3年)のダブルボランチが攻撃陣へと展開するのが一つのパターンだ。攻撃には、俊足のMF井谷洸一郎(3年)や、肉体派のFW李晃輝(3年)。守備にも、DF李泰河(3年)と要所に実力派がいるのも心強い。

 彼らの勝利に対する思いが顕著に出たのは、予選で一番苦戦した準決勝の阪南大高戦だ。2度のビハインドを許しながら、3-2で逆転勝ち。主将の赤井は、「絶対に返せるという自信はあった。すごく真面目な学年なので、これまで積み上げてきたものに対する自信はあった」と振り返る。コロナ禍で活動できない時期でも、腐らず個人でのレベルアップに励んできた。選手権が開催されるか不明だった活動再開後も、勝敗を左右するセットプレーの質を高めてきた。夏に青森山田高と対戦して学んだ気迫あふれるプレーを続けてきた。すべては、日本一になるためだ。全国でも、彼らが積み上げてきた実力や思いを余すことなく披露し、頂点への階段を駆け上がる。

【KEY PLAYER】MF赤井瞭太

 攻守ともにアグレッシブなプレーが目を惹く今年のチームの要となる選手だ。運動量の多さと球際の強さを生かしたボールハントが持ち味で、1年から出場機会をつかんできたが、昨年はケガで思うようにプレーができなかった。主将を務める今季は、試合に出れば印象に残るプレーでチームを牽引してきたが、細かなケガで欠場することも多かった。選手権予選も、「個人としてのインパクトは足りていない。ボランチが走るのは当たり前。運動量の中に、ボール奪取能力など守備面で目立つ部分を出さないといけない。前向いた時のプレーのクオリティや、シュートやラストパスの数を増やしていきたい」と自身の出来に満足していない。

 彼とボランチを組むMF平岡大陽(3年)の出来が、チームの生命線。所狭しと動き回る二人の存在感が際立つほど、チームとしての勢いは増していく。ここまでは消化不良な試合が続いているが、全国では日本一にかける想いへの強さとともに、就活の場として挑む意識がプラスの場として働くのは間違いない。高卒でのプロ入りを目指しながらも、進路は未定であるため、「選手権はアピールの場。勝って行くごとに見られる機会も増える」と意気込む。圧倒的な運動量と守備力で、チームと自身の明るい未来を切り拓けるか期待したい。

取材・文=森田将義

By 森田将義

育成年代を中心に取材を続けるサッカーライター

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