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各校が掲げた“打倒・青森山田”…高校サッカー界の“ラスボス”が他校に与えた影響とは?

2020.01.15

[写真]=野口岳彦

 令和最初の高校サッカー選手権は静岡学園(静岡)の優勝で幕を閉じた。

 24年ぶり2度目となる冬の日本一――。1995年度は鹿児島実(鹿児島)と同校優勝となったため、今回が初の単独優勝となる。静岡県勢としてもそれ以来の大会制覇になった。

 今大会を振り返ると、技術に秀でた高校が上位に進出した。大会を制した静岡学園や新潟県勢初のベスト4入りを果たした帝京長岡(新潟)。いずれも技術に特化したチームで、個人技や細かいパスワークを生かした攻撃が特徴だ。初めて8強まで勝ち上がった昌平(埼玉)も含め、新たな時代の到来を予感させた。

 チームが積み重ねてきた結果が、今大会の躍進に繋がったのは間違いない。とはいえ、大舞台で青森山田(青森)の存在は際立っていた。
 
 今回も含め、直近4大会で3度の決勝進出。うち2度は頂点に立っている。今年は2種年代の王者を決めるU-18高円宮杯プレミアリーグを制するなど、高体連だけではなく、Jユースや街クラブを含めた中で王者の称号を手にした。

プレミアリーグを制した青森山田は優勝候補筆頭だった [写真]=梅月智史

 そうした実績も踏まえ、大会前から優勝候補の筆頭に挙げられていた青森山田。攻守の切り替え、球際の強さは他ではお目にかかれない強度があり、勝負にこだわる姿勢は他の追随を許さない。武田英寿(3年/浦和入団内定)らを擁する前回王者に死角はないと見られていた。決勝で敗れたものの、強豪揃いのブロックを勝ち上がったのは流石の一言。2000年代初頭の国見(長崎)が持っていた“王者の威圧感”を感じさせるほどだ。

 だからこそ、どのチームも“打倒・青森山田”を掲げていた。試合前に対戦相手の監督に話を聞いても、出てくる言葉は同じ。しかし、その凄みは対戦しないと分からない。決勝後に静岡学園の川口修監督はこう話した。

「選手たちには、日頃から高いレベルでやることがチームと個人の成長になると話しています。我々はプレミアリーグのチームと戦う機会がないので、選手権で勝ち上がれば、プレミアリーグのチームと戦える。決勝の前半を見れば分かると思うのですが、青森山田はプレーの強度が違った。それは覚悟していたけど、球際や寄せるスピードも異なったし、実際に体感してやっぱり違う。前半を見ながら、自分たちのリズムになればと思ったけど、そこがプレミアリーグとプリンスリーグの差だった」

24年ぶり2度目の選手権優勝を勝ち取った静岡学園 [写真]=山口剛生


 プレミアリーグに参戦するチームと戦う意義。青森山田に準決勝で敗れた帝京長岡の古沢徹監督、同じく準々決勝で涙を飲んだ昌平の藤島崇之監督も、それは感じたという。

「勝負強さとチームとして徹底する力。サッカーのスタイルは違うけど、アプローチの仕方は学ぶべき点が多かった」(藤島監督)

「守備で相手が締めて、頑丈なブロックを作ってきた。入れ替われそうなところで身体をぶつけられて、相手より一歩先に動いても寄せてきた。そこは1枚も2枚も上手だった」(古沢監督)

 そのほかのチームや選手に話を聞いても、「一番強かったチーム」という言葉が多く聞かれた。戦うだけで経験値を得たのは間違いない。

 逆に青森山田はファイナルで静岡学園に敗れ、学ぶべき点があった。黒田監督は言う。

「やるべきところでやることがサッカーの原理原則。敗戦を素直に認めないといけない」

 選手たちの努力で準優勝を成し遂げた一方で、決勝で負ける経験は全国で1チームしかできない。この敗北を次にどう繋いでいくか。その貴重な体験が青森山田をさらに強くするはずだ。

 青森山田が先頭を走り、他のチームが切磋琢磨する。その中で静岡学園は圧倒的な技術を全面に押し出し、王者の牙城を崩した。だが、準優勝に終わった高校サッカー界の“ラスボス”が他校に与えた影響は大きい。青森山田とライバルチームのせめぎ合い。来年もそのサイクルが続けば、選手権のレベルはさらに高まるはずだ。

取材・文=松尾祐希

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