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[和歌山工業]快進撃で手にした30年ぶりの切符…貫徹した“スタイル”を全国でも【高校サッカー選手権】

2019.12.31

[写真]=川端暁彦

 令和元年度の選手権へ平成元年度以来の出場となった。和歌山はJリーグ開幕翌年の1994年度大会に初芝橋本が初出場を果たしてからの約25年間、近大和歌山と和歌山北を含めた3校で代表権を分け合ってきた。その流れに風穴を開ける形で出場権を掴んだのが和歌山工業だ。

 過去の出場は3回だが、1987年度大会から89年度大会に3年連続して出場を果たしたときのもの。元京都パープルサンガ(現・京都サンガF.C.)DF福重良一(現・東山高校監督)を擁した黄金世代によって勝ち取られた栄光だが、長続きはせず、近年は県内大会でも苦戦が目立つ。今年もインターハイ県予選は16強で早期敗退となり、和歌山県1部リーグでも8位と振るわなかった。このため、大会前は全く本命視されていなかった。

 ただ、蓋を開けてみれば、「みんな驚いています」と田中彪主将が笑って振り返るほどの快進撃を予選で披露。優勝候補・和歌山北との3回戦をPK戦の末に勝ち切ると、反対側の山では初芝橋本と近大和歌山が共に敗退。初めての決勝進出となった和歌山南陵を熱戦の末に退けて、実に平成まるごと30年ぶりの全国切符を掴み取った。

 ただ、決して地力のないチームではない。3-4-2-1のフォーメーションを組んで後方から丁寧にビルドアップを試みるスタイルを貫徹してきた成果が冬に実った感もあり、3バックがスペースに持ち出しながら、タイミング良く中盤にボールを当てて相手のプレッシャーを外していく。大型で技巧的なボランチのMF岩橋陽世を軸にボールを動かしつつ、「個の力がある」と大宅光監督も認める1トップ2シャドーの攻撃力を活かして攻め切っていく。

 注目は最前線を担う主将の田中、そして恐らく左のシャドーに入るMF武山遼太郎の両名だ。抜群の身体能力に加えて戦術的なセンスもある田中が前線をかき回しつつ、体を張ってクロスに競り勝てば、武山は「筋トレマニア」(大宅監督)として鍛え抜いたボディでボールをキープしつつ、豪快なミドルシュートからゴールを陥れる。守っては3バックのメリットを活かしてしっかり中央を固めて相手の攻勢を跳ね返す。

 工業高校の特性もあり、今大会を最後にほとんどの選手がスパイクを脱ぐことになる。「すごい楽しい」(武山)と笑顔で語っていた県予選を無欲の勝利で突き抜けて得た延長戦としての全国舞台。思いっきり楽しんで、今年貫徹してきた自分たちのスタイルを表現するのみだ。

取材・文=川端暁彦

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By 川端暁彦

2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

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