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「最高の結果ではなかったけれど」…2年連続の敗戦を“財産”に富山第一の戦いは続く

2019.08.02

富山第一は後半ラストプレーに決勝点を許し、2年連続で桐光学園に敗れた [写真]=川端暁彦

 2年連続の8強を超え、初のファイナルへ。縁の薄かった夏のインターハイで、富山第一は確かな躍進を見せた。自身の現役時代も夏の8強で苦杯をなめていたOBの加納靖典コーチは「昨年があって今年がある」と強調してきた。

 昨年シード権を取り、今年はその上へ再挑戦。「昨年は8強が終わってからスイッチを切ってしまって、準々決勝でもう一度上げようとしても上がらなかった」(加納コーチ)ことで桐光学園に大敗。2年生FW西川潤にハットトリックを許し、「彼をブレイクさせてしまった」(同コーチ)という何とも苦い結末を迎えることとなった。

 その反省を踏まえて臨んだ今年は3回戦と準々決勝の間にある「中1日」の休養日を単なるオフにせず、しっかりと調整メニューをこなした。実はこのやり方は「昨年の桐光学園さんに学んだもの」(加納コーチ)。まさに敗戦を糧にした戦いを続け、決勝まで勝ち残ってきた。そして迎えたファイナルで待っていたのは、昨年の夏に屈辱的大敗を喫した桐光学園。ある種のストーリーは出来上がっていた。

 だが、フィナーレに用意されていたのはそんな出来過ぎた、甘美なシナリオではなかった。金武町フットボールセンターのスコアボードに刻まれた数字は無情の0−1。戦術的に高い練度を誇る5バックシステムで因縁の西川こそ抑え切ったものの、後半のラストプレーでショートカウンターを浴びて失点し、直後に終了のホイッスルを聞くこととなった。

 流れとしてはむしろ富山第一のペースだった。ハーフタイムを挟んで迎えた後半、桐光が3−4−2−1から4−2−3−1へシステムを変更してきたが、これは想定内。しっかり対応し、むしろ相手の変化で生まれる隙をついて流れを掴んでいた。ただ、迎えた好機をモノにできずにいると、逆に「調子良く攻めに出ていた分、MFが戻れなくなってきていた」(大塚監督)。

 大塚監督は失点場面について守備の対応、ニアを破られたGKの意識といった個別的な課題も挙げつつ、「でも相手のシュートが上手かった」と桐光学園を称えた。「決めるべきところを決められるかどうか」という永遠の課題と、「攻撃のバリエーションを増やしていくこと」を今後の課題として挙げた。

 ほとんどが地元・富山県の選手で構成されている富山第一は、大会を見渡しても戦力的にそこまで突出しているわけではない。ただ、大塚監督がどっしり後方に構え、加納コーチが前線で現場の指揮を執る体制で鍛え抜かれたチームは戦術的に最も洗練されたチームであり、優れたチームワークがある。そして何より苦い経験も糧にして成長していくマインドも持っている。

「夏はこの大会こそ強化合宿だと思っていた。最高の結果ではなかったけれど、良い合宿はできたと思っている」

 昨年、桐光学園に敗れた記憶がチームの財産になったように、今年の桐光学園戦もまた彼らの財産になっていく。早くも次の戦いを見据えていた大塚監督の言葉は、そんな予感を覚えさせるのに十分なものだった。

取材・文=川端暁彦

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