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ビッグマッチで見せた青森山田の真骨頂…強力なライバルを退け次なる戦いへ

2019.07.26

前橋育英との強豪対決で青森山田が強さを発揮した [写真]=川端暁彦

 高校サッカー令和最初のビッグマッチがいきなり実現した。令和元年度全国高等学校総合体育大会(通称インターハイ)男子サッカー競技の1回戦で顔を合わせたのは、青森山田高校と前橋育英高校。前年度の高校選手権王者と前々年度の高校選手権王者が初戦で相撃つ形となった。

 Jユースの強豪も参加している高円宮杯プレミアリーグEASTにおいてここまで無敗で首位を走ってきた青森山田は今大会も優勝候補の筆頭格。浦和レッズへの加入が内定しているU-18日本代表MF武田英寿を中心としてまとまりのあるチームへと早くも仕上がっている。対する前橋育英も前評判は非常に高く、志高いテクニカルなサッカーも健在。主将のMF渡邉綾平やJクラブスカウトから注目を集める2年生ボランチの櫻井辰徳など役者も揃っていた。

 それだけに、両監督の試合前の様子は「苦笑い」といった雰囲気。いきなりこことやるのかよというのが正直な感覚だったかもしれない。ただ、タフな日程をこなす夏の全国大会において、ベストコンディションで戦えるのはこの初戦のみでもある。その意味で言えば、好ゲームの期待感がいやが上にも高まるシチュエーションだった。

 まず立ち上がりに先制パンチを入れたのは青森山田。2分、自陣から入れたロングFKに前線の金賢祐が競り勝ってこぼれると、これを武田が冷静に頭で落とし、最後はMF後藤健太が右足を振り抜く。強烈なボレーシュートが突き刺さった。そしてこの1点は「あれが痛かった」と前橋育英・山田耕介監督が振り返ったとおり、重くのしかかることとなる。

 ここからゲームの主導権を握ったのは前橋育英。渡邉と櫻井を中心に中盤の中央を制圧し、効果的な縦パスを入れて青森山田を崩しにかかる。青森山田は暑さの影響か、やや動きに精彩を欠く選手もおり、なかなかボールを運べなくなっていく。前半のクーリングブレイク明けからの時間帯は特にそれが顕著で、オフサイドでノーゴールとなったものの『幻のゴール』も生まれ、サイド攻撃から前橋育英FW佐藤宇のヘディングシュートがゴールバーを直撃するなど前橋育英ペースとなった。

 ただ、ある意味ここからが青森山田の真骨頂だった。「とにかく青森山田はゴールを中心に守ってくる」と渡邉が振り返ったように、もはや伝統となった『ゴールを隠す』ディフェンスで、簡単にシュートは打たせない。U-17日本代表DF藤原優大が競り合いで抜きん出た存在感を見せたほか、10番の武田がゴールライン上で体を投げ出してシュートを防ぐシーンもあり、モットーである全員守備を貫徹して前橋育英をゴールから遠ざけ続けた。

 終わってみれば、アディショナルタイムにも1点を加えた青森山田が2-0と快勝。ボール支配率で言えば前橋育英が上回ったゲームだったと思われるが、シュート数は6対5と青森山田が優勢。特に後半は押され気味ながらも前橋育英のシュートを1本に抑え込んでおり、中盤ではなくゴール前の攻防で差が出たゲームとなった。

 青森山田は暑さ対策で合宿を張った大阪が思わぬ涼しさで準備万端とはいかず、この試合も決して良い内容ではなかった。ただ、「例年に比べてできることが少ない分、やることを徹底できる強さがある」(黒田剛監督)部分をしっかりと表現。強力なライバル校を退け、シード校の大津が待つ2回戦へと駒を進めた。

取材・文=川端暁彦

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