2019.01.16

J昇格、海外移籍、チリ代表…青森山田を卒業しバスケス・バイロンが描く未来

青森山田を全国制覇に導き、バスケス・バイロンはさらに“上”を目指そうとしていた [写真]=野口岳彦
育成年代を中心に取材活動を展開。

 54,194人もの大観衆に埋め尽くされた埼玉スタジアム2002での選手権ファイナル。流経大柏(千葉)のCB関川郁万(3年、鹿島アントラーズ内定)の先制ヘッドにスタンドがどよめき、青森山田(青森)のエースMF檀崎竜孔(3年、北海道コンサドーレ札幌内定)の2ゴールに観衆が沸いた。また、192cmの青森山田CB三國ケネディエブス(3年、アビスパ福岡内定)もその圧倒的な高さでインパクトを与えた。J内定選手たちがその実力を遺憾なく発揮していた。ただしこの日、最も観衆の記憶に残ったプレーヤーは、青森山田の背番号11だったのではないか。
 
 バスケス・バイロン。非常に記憶しやすいその名を多くの人が覚えて埼スタを後にしただろう。チリ出身でチリ国籍のバイロンだが、彼にとって埼玉は“地元”だ。小学校3年生の時に両親の仕事で来日してから青森での挑戦をスタートさせるまで生活してきた土地。現在も自宅は埼玉にある。その“地元”で「色々な人が応援してくれています。だから、楽しく、魅せたかった」というバイロンが躍動した。

全国制覇へ導いたキックフェント

決勝戦では急激な切り返しからDF2人を置き去りにしてチャンスを演出した [写真]=野口岳彦

 立ち上がり、チームは硬い入りになってしまっていたが、8分にバイロンが右サイドで2人を抜き去って決定機を演出する。この日、流経大柏は今大会準々決勝、準決勝で相手のポイントゲッターを封じてきたDF横田大樹(3年)をマークにつけてきた。一瞬のスピードと、マーカーにボールが入らないようにインターセプトを狙う守備が特長の横田だが、バイロンは食いついてくる相手をその技巧とパワーで翻弄してみせる。

 時にフィジカルコンタクトの部分でねじ伏せ、時には簡単に逆を取ってボールをキープ。 横田も必死に食らいついていたが、バイロンは前半からサイドの攻防で完全に主導権を握っていた。後半も鋭い切り返しを交えた突破で相手の脅威となると、1-1の63分にビッグプレーをやってのける。再び右サイドからドリブルで仕掛けると、左足のキックフェント一発で横田らDF2人を置き去りに。そして、グラウンダーのラストパスをファーサイドへ通し、檀崎が右足ダイレクトで決勝点を決めた。

「流経はボールに食いついてくる。どんどん切り返して入っていけ」という黒田剛監督の指示を実行し、切り返しから見事な決勝アシスト。指揮官もビッグプレーをしたバイロンについて「2人3人背負っても失わなかった。最高に勢いのつくプレーだった」と絶賛していた。ボールが入れば、強気の1対1でDFを振り回していたバイロンに観衆も興奮。際立つ個を大観衆の前で示した彼は、青森山田の日本一に大きく貢献した。

ライバルを刺激に続けた努力

[写真]=兼子愼一郎

 バイロンは草津東(滋賀)との初戦でDF2人の間を鮮やかに突破してからの左足シュートでゴールを決め、続く大津(熊本)との大一番でも相手DFを翻弄。尚志(福島)との準決勝では、絶妙なボールコントロールで抜け出し、スピードに乗ったドリブルでPKを獲得し、試合の流れを変えた。決勝だけではない大活躍。“当然”、大会優秀選手にも名を連ねていた。

 前回大会の決勝では東松山ペレーニアFCジュニアユース時代にコンビを組んでいた前橋育英(群馬)FW榎本樹(3年)が、後半アディショナルタイムに劇的な決勝ゴールを決めた。一躍名を世に知らしめた榎本はその後、松本山雅からのプロ入りを決めた。バイロンはそのライバルから刺激を受け、負けないように、サッカーに取り組む姿勢から変えて努力した。だが、下級生時から注目されてきた才能もなかなか全国では結果を出すことができなかった。

 3年夏のインターハイは2回戦で昌平(埼玉)に逆転負けを喫した。それでも、「シーズン入ってからの努力が努力不足だったかなと受け止めて、筋トレだったりトレーニング後とか自主練後とか努力していけば必ず結果はついてくる」と、自分を信じて努力を続けてきたレフティーは、最後の選手権でブレイク。1年前に旧友が輝いた埼スタでヒーローになった。

次は壮大な“夢”への挑戦

悲願の全国制覇を成し遂げ、新たな戦いに挑む [写真]=山口剛生

 卒業後は東北社会人リーグ1部のいわきFCに加入することが決まっている。仮にチリ国籍のバイロンがJクラブに入団するには外国人枠を使わなければならない。通常、どのクラブも即戦力の外国人助っ人に枠を充てるため、バイロンがJクラブに入団することは難しかった。それでも、「日本のフィジカルスタンダードを変える」ことを掲げるいわきFCへの加入を決めたのは自身の成長のためだ。

「いわきFCはJよりも施設が良い。考えられないくらいです。筋トレ中心に鍛えて、身体をデカくしたら自分が目指している海外でのプレーが見えてくる。現在のスピードや身体の強さは、まだ上のレベルでは通用しない。鍛えつつ、上を目指してやっていきたい」

 母国語であるスペイン語を操ることができるというバイロンは努力を続ければ、必ず夢は叶うと信じている。

「嘘偽りなく日本一を目指す」と掲げてこの1年間努力し、日本一を勝ち取った。J内定選手を上回るほどに選手権を沸かせた男は、新天地でも妥協することなくトレーニングを続けて成長を遂げること。そして、いわきFCをJへ導き、海外進出、チリ代表という自身の夢も叶える。

取材・文=吉田太郎

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