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2つの危機を乗り越えた「負けず嫌いたち」…青森山田がつかんだ2度目の日本一

2019.01.14

胴上げされる青森山田の黒田剛監督 [写真]=山口剛生

取材・文=森田将義(提供:ストライカーデラックス編集部)

「後出ししてでもジャンケンで勝ちたいタイプ」。そう笑いながら自己分析するのは、2年ぶり2回目の選手権優勝を達成した青森山田・黒田剛監督だ。今年のチームは、そうした負けず嫌いな指揮官に似たタイプの選手が多いのが特徴かもしれない。

 勝ち上がりにも、彼らの性格はよく表れていた。準々決勝の矢板中央戦では先制点を許しながらも二階堂正哉の2ゴールで逆転勝ち。準決勝の尚志戦も後半終了間際に小松慧の同点弾で追いつくと、PKの末に勝利した。黒田監督は「プランが崩れても持ち直せるのが今年のパワー。負けん気が強くなければ、こうした舞台で勝てない。そうしたメンタルの部分は2年前の(初優勝した)チームに似ている」と口にする。

 ただ、負けん気が強い選手が多い故に、チーム作りとしては難しさがあったのも事実だ。今年の代は負けん気と同時に個性も強く、そうした性格がチームにマイナスの影響を及ぼすことも珍しくなかった。チームが下降線を描きそうになったタイミングで、指揮官が行ってきたのが一種のショック療法で、「心を動かすのは危機感が必要。慢心的な気持ちが過信につながって、パフォーマンスが落ちてくるので、常に悲劇を糧にしながらやってきた」という。

 チームが経験した悲劇は夏のインターハイだ。2回戦の昌平(埼玉)戦では、優勝候補との前評判どおり2点を先行したが、そこから4失点を喫し逆転負け。黒田監督は当時について、こう振り返る。

「負けた原因が明らかだった。2点リードしてからみんながやるべきことをやらなくなった。『3点目を取るのは俺かな?』って、前に4、5人くらい残って守備しなくなって、取り返しがつかなくなった。チームになってなかったと思う」

 夏の敗戦によって、現状に危機感を覚えたチームは、インターハイ明けのプレミアリーグEASTで5勝1分とハイペースで勝ち点を積み上げ、優勝争いを繰り広げた。が、第16節から2試合連続で白星をつかめず、プレミアのタイトルを逃した。

「いいところまで行くんだけど、勝ち切れない、(タイトルを)取り切れないのは何が理由かを考えた」

 黒田監督は12月に入ってから、自らの手でチームに悲劇を加える。選手権で優勝候補と呼ばれ、勘違いしてもおかしくない状況を打開するために、キャプテンを檀崎竜孔(コンサドーレ札幌内定)から、飯田雅浩に代えたのだ。

「失敗覚悟で科学反応を起こそうとした。ただ、今年の選手なら絶対にまとまってくれるだろうとも確信していたから、敢えてぶち壊して突き放して再構築するのを試みた」(黒田監督)

 プレミアリーグが終わってから組んだ練習試合は、直前の御殿場合宿で実施した1試合のみ。「試合なんかやっている場合じゃないという状況まで持って行ってからチームを作っていた。試合に飢えた状態だったと思う」(黒田監督)

 これが奏功した。「一つになればパワーはあるのに、ずっとバラバラだった。そうした状態でチームが崩れたので、ミーティングを繰り返し、選手権の決勝まで学び続けようと決めた」と振り返るのはバスケス・バイロンだ。

 チームを再構築したことで、ワンランク上へと成長したチームは、初戦となった2回戦で草津東に6-0と大勝。続く3回戦では、優勝候補との呼び声も多かった大津にも3-0で勝利した。準々決勝以降は相手に先手を許す展開が続いたが、指揮官が「大会というのは生き物。いいことばかりでは絶対に終わらない。悪い流れで勝ち上がって反省材料を持って次に進めることが、いちばん有難い」と話したように、危機感を持って次に進めたのは彼らにとって理想的だった。

 危機感をプラスの力に変え続けるのは決して簡単なことではない。だからこそ、負けず嫌いな彼らが刻んだストーリーは称賛に値するだろう。

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