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「本当に難しかった」…青森山田の攻守の要が分析した尚志の攻撃

2019.01.13

青森山田の天笠泰輝が尚志との準決勝を振返った [写真]=瀬藤尚美

取材・文=安藤隆人(提供:ストライカーデラックス編集部)

 3-3という壮絶な打ち合いは、青森山田のボランチ・天笠泰輝の言葉を聞けば、すべて状況を把握できる。

「最初、相手の11番(加瀬直輝)がFWに来たのはびっくりしたけど、彼の特徴は分かっていたし、ターンして前を向いて9番(染野唯月)との関わりだと思ったので、まずは前を向かせないことを考えた」

 尚志はこれまで不動のトップ下だった二瓶由嵩をベンチに置き、右サイドハーフだった加瀬をトップ下に起用。右サイドハーフに高橋海大、左サイドハーフには伊藤綾汰を起用した。最初は冷静に対応できた青森山田だったが、すぐに尚志は加瀬を右サイドハーフ、高橋を左サイドハーフ、そして伊藤をトップ下に移し替えたことで、青森山田の守備陣は混乱に陥った。

「サイドをより警戒するようになって、僕は中央を(ボランチコンビを組む)澤田(貴史)に任せて、サイドハーフとサイドバックの関係でボールを取ることを意識した。そうしたら、今度は(1トップの)染野唯月への対応が難しくなった」(天笠)

 最も警戒すべき尚志のエース・染野へのマークがずれ、徐々に劣勢に立たされた。26分にセットプレーから染野に先制を許すと、その後一度は逆転に成功するが、68分に右サイドを加瀬に破られ、折り返しを受けた染野に3人がかわされ、同点弾を浴びた。

 そして、75分には天笠の裏のスペースを伊藤に突かれると、右の加瀬にボールが渡った瞬間、後方から飛び出してきた染野を誰もマークしていなかった。全員がボールウオッチャーとなり、加瀬のスルーパスから染野に3点目をたたき込まれた。

「リードをしたのに染野に意識が行きすぎて、10番(伊藤)と11番(加瀬)の関わりのところでついていけなくなっていた。僕らダブルボランチのところにその2人が入ってきたことで、ボランチで染野を含めた3人を見ないといけない状態になって、少しバタついてしまった。そこで3人に意識をやると、今度は相手のボランチの6番(坂下健将)が絡んでくる。彼らに常に嫌なポジションに立たれて、本当に難しかった」

 それでも、青森山田はCB三國ケネディエブスを最前線に上げてパワープレーを仕掛けると、87分に三國のヘッドから途中出場のFW小松慧が執念の同点弾をマーク。PK戦の末になんとか勝利をつかみとった。

「今日はプレスバックも甘かった。もっと守備をしないといけない。3失点食らうとは思っていなかった。ダメージがでかいので、立て直していかないと結果につながらないと思う」

 試合後、天笠はこう自分たちを戒めたが、「正直、僕はすでにイエロー1枚もらっていたので、今日の試合はあまり強く行けない部分もありました。決勝は激しく行けるので、それを発揮したい」と前を向いた。

 警告を恐れたが故に、確かに彼のプレーはどこか縮こまっているように見えた。だが、試合直後にここまで戦況を分析できているということは、それだけ彼のフットボールインテリジェンスの高さを示しており、かつチームの攻守の要になっている所以でもあった。

 流通経済大柏との決勝戦後、天笠はどう試合を振り返るのか。日本一が決まる大一番に向けての楽しみが1つ増えた。

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