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<桐光学園>大会最注目FW西川潤、夏に見た日本一の幻影を掴むか【選手権出場校紹介】

2018.12.29

[写真]=野口岳彦

 輝かしい夏になるはずだった。8月の三重県鈴鹿市。インターハイの決勝戦、1点リードで試合終盤を迎えた桐光学園は、2年生エースの西川潤が最終ラインを突破した。GKとの1対1、追加点を決めれば日本一は決定的だ。しかし、打ったシュートはGKに弾かれ、ルーズボールに相手の右DFが追いついた。大きく前に蹴り出したボールにFWが反応する。カウンターアタックからクロスが上がり、山梨学院のエース宮崎純真(3年)が同点弾を決めた。天国から地獄。桐光学園は延長戦で敗れ、涙をのんだ。

 足りなかった、あと一歩を踏むために、チームは再び全国大会へと駒を進めた。あのとき、西川がシュートを打たずにボールをキープしていたらどうだったか。試合を見た者は、そんな仮説も立てたが、鈴木勝大監督は「あの場面は、いつか(日本代表で)アジア予選を勝ち切るための1対1になるかもしれない。自分の将来、日本の未来、彼はそういうものを背負ってプレーしている。1本の景色を変えるプレーを学んでほしい。自分自身で優勝や代表権を勝ち取れる選手に成長してほしい」と話し、むしろ再挑戦と成功を求めた。

 それから3カ月後、西川潤はU-16日本代表のエースとしてU-16アジア選手権に出場。決勝戦で優勝を決めるゴールを挙げ、大会MVPに輝いた。身長180センチ、スピードがある左利きのストライカーは、悔しい夏を越えて、明らかな成長を遂げた。迎えた選手権の県予選では、4ゴール。決勝では厳しいマークがたった一瞬外れるやいなや、左前方へのドリブルから対角へのシュートを決めて見せた。終盤にはルーズボールを追いかけて奪い、追加点をアシストする場面もあった。

 自身のプレーでチームを優勝に導く選手となった西川は「走ってボールを取って仕掛けるプレーは、昨年にはなかった。味方からパスをもらって仕掛けることが多かった。経験の中で変えていく必要があると感じていたし、着々と経験を積ませてもらい、成長を感じている。選手権という舞台で良い結果を残すとともに、個人としても活躍できるように準備したい」と初めて臨む選手権の全国大会にかける意気込みを語った。

 入学前の親善試合から10番を与えた指揮官も「昨年は、狭いエリアでスペシャルなプレーをしていたが、その範囲を自分で拡大した。相手に与える脅威は、大きく成長した。人の予想を上回るスピードで成長していることは間違いない」と進化を認める。

 桐光学園は、決して西川のワンマンチームではない。一度は入部セレクションに落ちながら雑草のごとく這い上がって来た敷野智大(3年)や、突破力と機動力に優れるMF阿部龍聖(3年)も攻撃力は高い。守備でも、抜群の連係を見せる望月駿介(3年)、内田拓寿(3年)のセンターバックコンビは全国屈指の能力を誇る。それでも主将の望月に「潤がいないとチームの力が70%くらい落ちる」と言わしめるのが、今年の西川だ。初戦からプロ内定選手を擁する大津と組み合わせも厳しい。しかし、だからこそ、期待をしたくなる選手でもある。まだ2年生。普通なら、随分と重いプレッシャーだが、「桐光の西川というのは、そんなにすごいのか」という問いに、彼はプレーで応えるだろう。

取材・文=平野貴也

By 平野貴也

元スポーツナビ編集部。フリーに転身後はサッカーを中心に様々な競技を取材するスポーツライターに。

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