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<国士舘>総力挙げて掴んだ全国の切符、まずは学校悲願の選手権初勝利【選手権出場校紹介】

2018.12.25

東京都予選決勝、試合前にスタンドへ挨拶する国士舘イレブン [写真]=野口岳彦

 まだ蝉が激しく競って鳴いていた8月16日。彼らの高校選手権は、インターハイの全国王者が決定したわずか3日後、すでに幕が上がっていた。そこから繰り返された“負ければ終わり”の8試合すべてに勝って、15年ぶりの全国切符を手にした国士舘。その原動力になったのは、「毎回16人全員使い切っているので、本当に今年は全員で繋いで、ここまで来てくれたなと思っています」と上野晃慈監督も言及する、サブメンバーたちの献身と奮闘だった。

 2次予選2回戦の多摩大目黒戦。チームは正ゴールキーパーの小松直登(3年)を負傷で欠くことになる。1回戦ではPK戦で2本のキックを弾き出し、勝利の立役者となった守護神の不在。ただ、指揮官は「本当にマジメにやってくれていたし、よく準備してくれていた」と評価する、小松と同じ3年生の山田大晴に絶対的な信頼を置いてピッチへ送り出す。

 すると、開始早々にフリーキックのピンチを防いだ山田は、後半にも2つのビッグセーブを披露して完封勝利に貢献してみせる。「あの試合は大晴が全部止めて、周りで見ている人にも『オマエもういらないんじゃね?』って言われましたし、本当に嬉しい半面、危機感があって『大晴、ちょっとやり過ぎかな』と思いました(笑)」と笑って振り返る小松は、戦列に復帰した準々決勝と決勝でも試合中のPKをストップ。一躍脚光を浴びる形になったが、その陰で“やり過ぎた”山田の存在がポジティブに作用していたことは間違いない。

 準決勝の都立国分寺戦。なかなかゴールを奪えない展開の中、61分に井上優太(3年)が、63分に福田竜之介(3年)が相次いで投入される。そして何とか先制し、さらに突き放したい時間帯の71分。井上のスルーパスに抜け出した福田がエリア内で倒されると、主審の笛が鳴る。自らスポットに向かった福田は「決める自信しかない感じが最近あるんです」というPKを真ん中にグサリ。途中出場した2人の連係で大きな2点目を手にしたチームは、1年前に越えられなかった西が丘の壁を突破し、ファイナルへと勝ち上がった。

 試合後に福田は正直な気持ちを明かしてくれる。「サブ組に回されて、一時期ちょっとふてくされていたんですけど、だんだん勝つにつれて『チームのためにやるべきだな』と思い始めて、気持ちを入れ直してやりました」。今では彼が登場すると、応援団のボルテージは一段階上がる。「それはたまに親から聞くことがあります」と照れくさそうに笑った福田。上野監督も「チームに対して凄く献身的な部分が出てきたので、頼りにしています」と語る“スーパーサブ”がチームを救うタイミングは、またきっと来るはずだ。

 目標は過去3度の出場で果たせていない初戦突破。ファイナルで決勝ゴールを挙げた濱部響乃介(3年)が「まずは1試合目を勝って、また新しい歴史を刻めたらなと思います」と言い切れば、キャプテンの長谷川翔(3年)も「まず1勝して国士舘の歴史を塗り替えて、仲間と全国の舞台を楽しみたいと思います」と強い意気込みを口に。16人の出場選手や、30人の登録メンバーだけではなく、180人の部員全員で醸し出す一体感を武器に、国士舘は1勝の先へ秘めたる野望の実現を虎視眈々と狙っている。

取材・文=土屋雅史

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