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“ドリブルするボランチ”昌平MF原田虹輝、持ち味発揮の2発で勝利導き先輩越えへ

2018.08.12

昌平MF原田虹輝 [写真]=安藤隆人

 インターハイ準々決勝、注目の大津との一番で、試合を決めたのは昌平の“ドリブルするボランチ”原田虹輝だった。

 昨年からボランチのレギュラーとして、攻撃力がウリの昌平の攻守の要となっていた原田だが、ドリブラーというよりもバランサーの印象が強かった。豊富な運動量を駆使して、相手の危険なスペースに先回りし、ボールを奪ったら長短のパスを配って攻撃のリズムを作り出す。そんなイメージだったが、今年はがらりと変えて大会に臨んできた。

 その変化を本人は、「ドリブルはもともと得意としていて、自分の長所でもありました。でも、昨年は年齢的も周囲は1個上ですし、フィジカル的にもちょっと行けないかなと思っていました。なのでなるべく散らして、バランスを保って、タイミングを見計らいながら攻撃のスイッチを入れるという意識でした。でも、今年は3年生になりましたし、コンビを組む丸山聖陽がカバーリングをしてくれるので、点やアシストにこだわって、積極的に前に行っています」と語る。

 この変化に拍車を掛けたのは、新人戦と関東大会予選での自身のプレーだった。埼玉県の新人戦、関東大会予選ともに準々決勝で成徳深谷に敗れた。持ち味である攻撃力が発揮出来ないまま、同じ相手に2度敗れたことで、原田の意識も大きく変わった。

「もっと大胆にやらないと、相手は崩れない。ボランチでドリブルを使ってボールを運ぶ選手はあまりいないと思うし、相手が嫌がると思った。丸山と4バックとGKを信頼して、僕はもっと攻撃で貢献しようと思った」

[写真]=安藤隆人

 チームが勝つためには、自分のドリブルが有効であると感じ取った原田は、そこから積極的なドリブルを駆使して攻撃に厚みを加えた。県予選では5試合で27ゴールを叩き出したチームにおいて、決勝の2ゴールを含む8ゴールをマーク。

 3年連続3回目の出場となったインターハイでは、一回戦で高知中央を6-1と圧倒すると、二回戦では青森山田を相手に0-2を跳ね返して4-2の劇的勝利。三回戦の札幌大谷戦でも0-2から原田が放った2本のCKを起点として2点を奪うなど、2試合連続の逆転勝ちを収めた。

 そして迎えた準々決勝・大津戦。原田がまさに名の通り“虹”のような出色の輝きを見せた。

「前半は失点をしないことを第一に考えて、不用意なミスを減らすことを意識した。後半勝負だった」と語ったように、得意のドリブルは時間を作ること以外はあまり出さず、昨年のようにバランサーに徹した。そして、目論見通り0-0で迎えた後半、原田は一気にエンジンをフル回転させた。

 後半立ち上がりは圧倒的な大津ペースだった。先制点をもぎ取ろうと、大竹悠聖と奥原零偉のツートップ、左サイドのU-18日本代表MF水野雄太を軸に、攻撃の圧力を強めて来た中、原田は冷静に戦況を見つめていた。

PK獲得にガッツポーズ[写真]=安藤隆人

「前半から相手は自分の横へのドリブルを嫌がっていたので、後半は縦に行こうと思っていました。ただ、向こうも攻撃的に来たので、ずっとドリブルするタイミングを見計らっていました。猛攻を仕掛けて来るということは、それだけ後ろが薄くなるということ。そこで自分がドリブルで縦に運んで一枚交わすことで、大きなチャンスになると思ったし、相手の消耗を引き出せると思ったので、背後のパスではなく、自分のドリブルで行くと決めていました」

 そしてその時はやってきた。0-0で迎えた58分、相手の猛攻を凌ぎ、ハーフライン手前自陣でボールを受けて前を向くと、一気に視界が開けた。

「ボランチも高い位置をとっていたので、『確実に1枚剥がせる』と思ったので、一気に縦に仕掛けました」と、あっという間に相手ボランチを交わして完全にフリーに。「最初はパスを出そうと思ったのですが、相手の両CBの間が開いていたので、『あの間を割って入れる』と思ってドリブルを続けました」と、さらに仕掛けて両CBの間に潜り込むドリブルを仕掛けてペナルティーエリア内に進入。「相手CBが食いついて来た瞬間に、中央にフリーになった味方が見えた。足を出してきたので、その上を越えるボールを出した」と、右足アウトサイドで浮かせたボールを中に入れると、それが寄せに来たCB吉村仁志の手に当たり、ハンドの判定となった。

 自ら得たPKを冷静に蹴り込み、一回戦以来の先制点をチームにもたらした。その後、大津の反撃に合い、PKを決められ同点に追いつかれるが、後半アディショナルタイム2分に、再び原田が仕掛けた。

飛び出しから決勝点 [写真]=安藤隆人

 中央左寄りの位置で相手のクリアミスを拾うと、先制点のときのようにドリブルで仕掛けると見せかけて、中央に潜り込んだMF森田翔へパス。そのまま猛然とペナルティーエリア内左のスペースに走り込むと、森田のリターンパスを冷静に蹴り込んだ。劇的な決勝弾で昌平が2-1で大津を振り切り、2年ぶりのベスト4進出を果たした。

 これで針谷岳晃(現・ジュビロ磐田)、松本泰志(現・サンフレッチェ広島)を擁した一昨年大会の成績に肩を並べた。原田はこの時はベンチにもいることができなかった。

「青森山田を倒したことで、より注目されるようになった。でも、次の三回戦で負けたら、『まぐれだったんだろう』と言われてしまう中、そこで勝ち切れて、今日も相手が格上ということでチャレンジャー精神でやれたことが大きかったと思います。次の桐光学園も強豪だし、自分達より格上なので、チャレンジャー精神で挑んで歴史を塗り替えたいです」

 偉大な先輩たちはベスト4で市立船橋に敗れた。あのときのピッチを見つめるだけだった原田が、今度は主役となって歴史を塗り替えるべく。“ドリブルするボランチ”の本領発揮の時がきた。

取材・文=安藤隆人

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