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悲願の全国制覇へ…「苦しい試合だからこそ」大津10番・水野雄太、走り切って“雪辱”の決勝点

2018.08.10

大津の背番号10・水野雄太 [写真]=安藤隆人

 お互い消耗していた。12時キックオフとなったこの試合は、むせるような高温の気候の中で行われた。

 ともにインターハイは1回戦から戦い、“中0日”の3試合目。特に大津は10時キックオフの予定だった1回戦の試合が大雨で3時間ずれ込み、翌日の2回戦・前橋育英との大一番が10時キックオフであったため、前の試合から24時間経っていない状態で迎えた。

 その大一番は3-0で突破できたが、選手たちの疲労は大きく、3回戦の國學院久我山戦は立ち上がりからいつもの大津のダイナミックな攻撃が影を潜めていた。だが、國學院久我山も前述の通り3戦目で、足取りは軽くはなかった。

 その中でもお互いが持ち味を出そうと、大津はCB福島隼斗とボランチの松原亘紀のミドルパスを中心に、大竹悠聖と奥原零偉のツートップ、左のアタッカー・水野雄太が縦への推進力を出して崩しに掛かる。それに対し、國學院久我山もアンカーの高橋黎を起点に、得意のショートパスを繋いでリズムを作る。しかし、両者ともに精度と決定打を欠き、0-0のまま前半終了を迎えようとしていた。

[写真]=安藤隆人

 迎えた終了間際の35分、重苦しいこう着状態を打ち崩したのは、大津の10番・水野だった。

「昨日決めきれず悔しい思いをしたので、この試合は絶対に点を獲ろうと思っていました」

 前橋育英戦では3点を奪ったが、得点者の名前に水野の名前はなかった。左サイドから得意のドリブルと、長距離スプリントを活かした裏への飛び出しでゴールを射抜く彼にとって、長所を出し切れなかった一戦だった。

 水野は続ける。「自分は全力で走る。チャンスと思ったら走り切る。苦しい試合だからこそ、チャンスが来たら走り切ろうと思っていた」という言葉が実を結んだのは、中央でボランチの富永大翔がインターセプトして、大津の攻撃のスイッチが入った瞬間からだった。水野が左サイドから高速スプリントを開始すると、大竹も縦パスを受けるべく走り出した。大竹に富永から縦パスが届くとドリブルを開始。相手DFを牽制しながらタイミングを図り、大外を駆け上がってきた水野へ絶妙なスルーパスが出た。トップスピードでボールを受けられた水野は、飛び出したGKを冷静にかわして、角度の無いところから正確に流し込んだ。

[写真]=安藤隆人

 この一撃で均衡を崩した大津は、後半は危なげない試合運びを見せ、効果的な攻撃でチャンスを作り出した。國學院久我山GK生垣海渡のファインセーブに何度も弾かれたが、47分に左CKから水野の上げたボールを奥原が繋いで、最後は大竹がヘッドで沈めて追加点。大津は國學院久我山をシュート1本に抑え、2-0の勝利を手にした。

 試合後、大津の平岡和徳アドバイザーは、「水野や奥原がもっともっとシュートまで強引に持って行かないといけない。点は取りましたが、あの形をもっと増やさないといけないですね」と、厳しい注文をつけたが、それはすべて彼らへの期待の現れ。だからこそ、「水野も大竹も工夫ができる。ものすごく良くなっている」とすぐに彼らの成長を称する一言を付け加えた。

 期待をかけられる水野も、「今日の出来は良くありませんでした」と引き締める言葉を口にしつつ、「しっかりと点を取ることができました。チームとしてもここまで無失点で来ていることも大きいです。目標である全国制覇に向けて、準々決勝以降もきっちりと点を獲って、無失点も続けて行きたいです」と殊勝に話す。

 厳しい3連戦を無失点で乗り切り、エースも調子を上げてきた。これまで巻誠一郎、谷口彰悟、車屋紳太郎、植田直通ら錚々たるOBたちを持ってしてもなし得なかった悲願の全国制覇に向けて、大津はその勢いをさらに強めた。

取材・文=安藤隆人

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