2018.08.08

サッカー部入部“1年足らず”の3年生…桐光学園・敷野、仲間の気持ち背負うガッツマンが勢いもたらす

相手クリアに反応した桐光学園・敷野(右)のプレーが2点目につながる [写真]=川端暁彦
2013年までサッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』で編集、記者を担当。現在はフリーランスとして活動中。

 全国高等学校総合体育大会、通称インターハイの男子サッカー競技が7日に開幕。三重県内各地で1回戦が一斉に開催された。

 四日市中央公園緑地陸上競技場では桐光学園(神奈川)と一条(奈良)が対戦。前半終えて0-0と拮抗したゲームになっていたが、鈴木勝大監督に一喝された桐光学園イレブンは後半から逆襲開始。後半早々のPKから1点を先行すると、主将の望月駿介がCKから2得点を挙げて合計3得点。3-0の快勝で2回戦へ駒を進めた。

 試合のマン・オブ・ザ・マッチを選ぶなら、堂々の守備と2得点の活躍から望月主将ということで異論は出ないだろう。ただ、前半「運動量は出てないし、声もマイナスの声ばかり。噛み合っていなかった」(望月)という状態だったチームに後半から入った男の働きも見逃せないものがある。

 前半途中の段階で、ベンチスタートのFW敷野智大には「後半頭からあるぞ!」という声がかかった。「リーグ戦から使ってきていますし、信頼している。流れを変えるためにランニングできる選手が欲したかったし、(投入に)ためらいはなかった」(桐光・鈴木勝大監督)

 敷野は中学から「桐光」に通う3年生だが、サッカー部へ入部してきてまだ1年に満たない選手でもある。前所属チームは「FC川崎栗の木」。桐光学園に通う選手が中心となって活動を続ける高校年代のクラブチームである。

 桐光のサッカー部は長らく少数精鋭主義を掲げてきた。おおむね一学年20人程度に人数を制限して質の高いトレーニングを維持することを狙っていて、一般生徒の入部は難しい。敷野のように桐光学園中学校の部活でプレーしていた選手も例外ではない。このため、こうした生徒の受け皿になることを一つの狙いとして作られたのがFC川崎栗の木だ。事情を知らない他校から「桐光の2軍」のような理解のされ方をすることもあるが、選手の入れ替えが起きるようなことはこれまでなく、基本的に別チームだった。

 敷野にしても、桐光サッカー部でのプレーは「考えてもいなかった」と言う。ただ、たまに行われるサッカー部との練習試合については「相当燃えていました」と猛烈なプレーを披露。ここでのプレーが「あいつは誰だ?」と目にとまったことから、思わぬ申し出を受けることとなる。

「桐光のサッカー部に移らないか?」

 話が来たのは昨秋の高校サッカー選手権予選開催期間中のこと。普通に同級生を応援するモードだった敷野にとっては青天の霹靂。ただ、FC川崎栗の木と桐光の首脳陣の間では、夏からしっかり話をしてきた上で出てきた申し入れだった。

「うれしい半面、自分は栗の木のキャプテンになっていたし、仲間に怒られるんじゃないかと……」

 ただ、この心配は杞憂で、栗の木の仲間たちはむしろ大いに喜んで敷野を送り出した。こうして「『あいつらのためにもやるしかない』といつも思っている」という男が桐光サッカー部へ加わることになった。

 鈴木監督は言う。

「雑草のようにガムシャラな選手が入ってきてくれたことで、あぐらをかいていられなくなる選手が出てきた。栗の木の選手たちの励みにもなると思うし、(敷野の加入は)多角的にプラスしかない」

 1回戦の後半から投入された敷野は「とにかく献身的にやるのが自分のスタイル」と言うとおりに守備から入ってチームを盛り立て、2点目はこぼれ球に反応しての“アシスト”も記録。「狙ってなかったのでアシストじゃないです」と正直に告白したプレーだったが、“らしさ”が出た場面でもあった。

「次は点も取れるようにしたいけれど、でも自分はまずガムシャラにやることなので。それで周りの上手い選手が点を取ってくれるならそれでいい」

 そう言って笑ったガッツマンの存在は、今季の、そして今後の桐光サッカー部にとって、小さからぬ意味を持つかもしれない。

取材・文=川端暁彦

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