FOLLOW US

【インハイプレビュー】”赤い彗星”は彗星のごとく…「3冠」達成へ、伝統校の戦いが始まる(東福岡)

2018.08.06

東福岡は井本寛次(写真中央)をはじめ、攻守に役者をそろえている [写真]=川端暁彦

 彗星(すいせい)は別名を「ほうき星」とも言う。ガスの尾を引いて天を彩る神秘的な光景は古代から人々にいろいろな空想をさせたようである。「彗星のごとく」と言えば、一般に期待の新星が突然現れることを言う。1990年代半ばから、当時の高校サッカーの常識的な部分を覆しながら各大会を席巻し続けた東福岡高校に「赤い彗星」と名付けたくなった記者のセンスはなかなかのものだと思う。元ネタは高名なロボットアニメにあるのだが、今日まで定着した理由はピタリとハマるものがあったからこそだろう。

 1997年度に公式戦無敗で全国タイトル3冠(インターハイ、高円宮杯、高校選手権)を達成したチームは、今でも「高校サッカー史上最強」の声が根強い。10番を背負った本山雅志(現・ギラヴァンツ北九州)を軸とした最強集団は、単純に強さだけでなく展開したサッカーの魅力と合わせて今も語り草だ。

 当時から特長的だったワイドに張ったウイングを使った4-1-4-1(4-3-3)のシステムは東福岡の伝統とも言える形であり、もちろんディテールに変化は加わっているし、3バックにトライしたときもあったりするが、今日までチームの基本的な陣形として採用され続けている。ちなみに同校OB最大の出世株である長友佑都は、4-1-4-1システムの心臓部である中盤の底、アンカーのポジションを担っていた。

 当時の戦い方と特に変化が出ているのはSBを使った攻撃だろう。今季は右の中村拓海と左の中西渉真の両翼が前線に厚みを加える形が非常に強力。特にU-18日本代表にも選ばれた中村拓海は複数のJ1クラブの競合となりそうな注目株となっているが、中にも行けて外も回れる変幻自在の攻撃参加は必見だ。もちろん「SBはDF。まず守備から」と森重潤也監督が釘を刺すように、守りあっての攻めであるが、彼らの攻撃参加がチームの武器になっているのは間違いない。

 かつて本山も背負った伝統の10番を背負うのは篠田憲政。「体を張ったプレーやヘディングが得意」と自ら語るとおり、技巧的なプレーを特長とする選手が多かった歴代の10番とは少々異なる色を持つ選手だが、中盤中央ならどこでも起用できる芸域の広さがあり、タフに戦えるだけにチームに欠かせぬピース。かつて長友がプレーしていたアンカーでのプレーになる可能性もあるが、十分にこなせるだろう。

 そのほかにも豪快なキックが光る大型GK松田亮、U-17日本代表の2年生CB丸山海大、篠田と共に中盤のインサイドを担う主将の中村拓也、福田翔生、ストライカーとして期待の懸かる大型FW大森真吾など多士済々。もちろん、伝統のウイングにも技巧派の野寄和哉や進境著しい井本寛次といった役者をそろえる。森重監督もチームが乗ったときの破壊力には「持っているモノはある」と手ごたえを感じている様子だったが、試合の中でパフォーマンスに波が出る部分は課題として残っている。

 夏の連戦となるインターハイは、35分ハーフで延長戦がないというレギュレーションであり、試合開始からアクセルを踏み込めるかどうかが問われる戦いでもある。プリンスリーグ関東で首位を走る実力校・矢板中央との初戦は、受けて立つのではなく、「彗星のごとく」チャレンジャー精神をもってアクセルを踏み込めるかがポイントとなりそうだ。

文=川端暁彦

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO