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長崎総科大附を率いる名将、71歳の“小嶺先生”が身に付けた「おじいちゃんだから分かること」

2017.02.15

九州高校サッカー新人大会を初制覇した長崎総合科学大学附属高等学校 [写真]=川端暁彦

「71歳の純心」とか言ったら叱られてしまうだろうか。長崎総合科学大学附属高等学校を率いる大ベテラン、小嶺忠敏監督は今なお変わらぬ情熱を燃やしながら指導の現場に立っている。

 2月10日から14日まで行われた第38回九州高等学校U-17サッカー大会(九州高校サッカー新人大会)。新人大会としては恐らく全国最高の“真剣度”がこもる大会を初めて制したのは、かつて国見高校を率いて全国を席巻した重鎮に率いられた新鋭校だった。

 エースFW安藤瑞季がU-18日本代表のスペイン遠征に招集されて不在だったこともあり、今大会はダークホース的存在。だが、昨季並みかそれ以上にタフに戦える選手がそろっており、攻守に強健さを押し出すスタイルは健在で、準決勝で東福岡高校を1-0で破り、決勝では神村学園高等部を3-1で下して大会を制した。

 大会の山場となったのは準々決勝の熊本国府高校戦。1点を先行される苦しい展開の中で、練達の指揮官から「いいぞ、いいぞ」「そうだ、それでいい」というポジティブな声かけを繰り返していたのは何とも印象的。結果としてロングスローから土壇場に追い付いたチームは続くPK戦を制して勝ち残ったのだが、喜び爆発となった選手たちに対して、今度は「君たちはこんな試合内容でPK戦までいってしまったというのに、それで満足なのか?」と逆に厳しい問いかけを行った。乗せるところは乗せて、締めるべきところは締める。その使い分けは、さすがと言うほかない。

 昨季、総監督から監督となって本格的に現場復帰を果たすと、毎日の朝練へ顔を出しつつ、選手寮に泊まり込むこともあるという徹底ぶりでチームの改革を推し進めた。何より抜きん出ているのは70歳を過ぎているとは思えぬ向上心と行動力だ。甲子園常連校の選手寮を視察して回ってその成果を活用したかと思えば、昨年はスペイン、一昨年はドイツへと短期留学しているが、「今年はオランダに行こうと思っている」と意欲を燃やしているのだから、やはり並みの71歳ではない。

「若いころは我慢が足りなかった。ちょっと反抗する選手がいると『ダメだ、こいつは』と外してしまうこともあった。でも今は我慢して辛抱してやることで花咲くこともあると知っているから」(小嶺監督)

 中学年代の指導者が“ちょっと問題あり”と感じている選手を「小嶺先生に預けるしかないと思うんです」と連絡を取ってくることもあると言う。「『俺は“人間更生所”じゃないんだぞ』と言うんだけどね」と笑いつつ、そんな選手を迎え入れては鍛え抜いて活用してもいる。今回の九州新人大会で活躍した選手の中にも、そうやって開花した選手がいる。「かえってクセのある選手のほうが面白くなることも多いんだよ」と笑った練達の指揮官は、「もう杖ついたおじいちゃんのような年齢になったけれど、そうなってから分かることもたくさんあるからね」と言って微笑んだ。

文=川端暁彦

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