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【コラム】途中出場から復活の2得点…前橋育英の“スーパーサブ”馬場拓哉「与えられた時間で結果を出すだけ」

2016.12.31

途中出場で2得点を挙げた馬場拓哉 [写真]=鷹羽康博

 高校サッカー選手権1回戦。前橋育英高校と明徳義塾高校の試合は前半終わって、1-0。次の1点を狙う中で後半6分、前橋育英・山田耕介監督は最初の交代カードとしてFW馬場拓哉をピッチに送り出す。183cmの“ジャイアント”はその期待に見事に応えて、2得点。それは復活を告げる2ゴールだった。

「しんどかった」と率直に振り返ったとおり、今年は馬場にとって苦難のシーズンだった。前年度の高校サッカー選手権では途中出場のスーパーサブとして2ゴールを決めるなどブレイクを果たし、今季さらなる飛躍を期待されていたが、チームがインターハイ群馬県予選で「ちょっと記憶にない」(山田監督)というまさかの初戦敗退を喫すると、自身も椎間板ヘルニアを患い、長期離脱を余儀なくされてしまった。

 高校選手権県予選前に何とか復帰できる見通しもあったが、ここでは胃腸炎で再びメンバー外に。「情けない」という気持ちの中で、暗澹たる秋を過ごすこととなってしまった。それでも夏からの逆襲を果たして全国切符を勝ち取った仲間たちの姿を観て発奮しないはずもなかった。そして指揮官は、今年のチームを仕上げるラストピースとして、馬場の帰りを待ち続けていた。

「山田監督もずっと気にかけてくれて、進路の面談でもケガのこととか色々な話をしてくれた。『お前が戻ってきてもポジションないぞ』なんて言われましたけれど、それも自分を頑張らせるための言葉だと分かっていたので」(馬場)

 この日の会場となったフクダ電子アリーナは昨年の選手権で印象的な活躍を見せたスタジアムでもあった。馬場は「結構そういうの気にするタイプなので」と笑いつつ、仲間たちからは「お前、このスタジアムで持ってるんじゃね?」といった言葉をポジティブに受け止めて出番を待ち、そして結果を残した。

 2ゴールはGKのロングキックから裏へと抜け出して右足トラップから右足ループシュートへつなげたものと、FW飯島陸がディフェンス裏へと出したボールを左足でコントロールして左足ループでGKを外した見事な2得点。「デカくてスピードがある。ああいうの(技巧的なシュート)もある」(山田監督)、実に“らしい”ゴールだった。

 まだコンディションは完全ではなく、フルタイムでのプレーは難しい。ただ、“スーパーサブ”の仕事は前回大会でも結果を出した感覚が残っていて、本人は「与えられた時間で結果を出すだけ」と前向きだ。

「(次の相手である市立船橋DFの)原(輝綺)くんと杉岡(大暉)くんはU-19日本代表選手で、この世代を代表するディフェンス。どこまで自分の力が通じるか試したい。そのためにもしっかりご飯を食べて、しっかり寝て、しっかり準備します」(馬場)

 どん底を経験したからこそ、決してベストではない現状を前向きに解釈できていて、自分の役割に対しても意欲的だ。結果として群馬のタイガー軍団は、この選手権に際して得難い切り札をベンチに確保することとなっている。

文=川端暁彦

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