2013.01.19

[鵬翔-京都橘]2度のビハインドを追いついた鵬翔、PK戦の末に初優勝/選手権

鵬翔
PK戦を制した初優勝を果たした鵬翔 [写真]=高見直樹

第91回全国高校サッカー選手権大会 決勝 鵬翔-京都橘
2013年1月19日/12:05キックオフ/東京・国立競技場/観客24937人/試合時間90分+延長20分

鵬 翔 2-2 京都橘
   (0-1)
   (2-1)
延長前(0-0)
延長後(0-0)
PK   5-3

<得点者>
前半41分 林(京都橘)
後半4分 芳川(鵬翔)
後半19分 仙頭(京都橘)
後半39分 矢野(鵬翔)

 前半41分に京都橘がセットプレーの流れから先制点を奪う。しかし、後半開始直後の4分に、鵬翔もCKからすぐさま同点に追いつく。一進一退の攻防が続く中、勝ち越したのは京都橘。自慢の2トップ、(10)小屋松と(7)仙頭のコンビが機能し、鵬翔ゴールを打ち破る。だが、あきらめない鵬翔は後半39分にPKを奪取し、再び同点に。試合は延長戦でも決着せず、PK戦に突入。先行の鵬翔は5人全員が成功したのに対し、京都橘は1人目(7)仙頭のシュートがポストをたたいた。決勝までの6試合中4試合をPK戦で制した鵬翔が、宮崎県勢初となる栄冠を手にした。

◆2度のビハインドを追いついた鵬翔、京都橘をPK戦の末に破り、初優勝を飾る

 両チームとも死力を尽くした、ファイナルにふさわしいゲームだった。降雪のため順延になり、両チームとも休養は十分。心身ともにリフレッシュして臨んだ大一番、詰めかけた24937人の観衆の前で、魂のこもったプレーを繰り広げた。

 京都橘は自慢の2トップ、(7)仙頭啓矢と(10)小屋松知哉を中心に、ボランチの(6)釋康二、(9)宮吉悠太、両サイドの(8)伊藤大起、(11)中野克哉など中盤の選手が絡み合い、ボールを保持しながら攻め込んでいく。対する鵬翔は163センチの小柄な1年生、(10)北村知也が前線を縦横無尽に動き回り、京都橘のDFラインにプレッシャーを与える。

 一進一退の攻防が続く中、先制したのは京都橘。前半41分に今大会、絶好調の(7)仙頭が右サイドで粘ってCKを得ると、鵬翔DFのクリアボールを(3)林大樹がダイレクトでシュート。堅守・鵬翔を支えてきた守護神(1)浅田卓人の手をはじき、ゴールに吸い込まれていった。

 1点ビハインドの鵬翔・松崎博美監督は、後半開始とともに「相手の背後のスペースを突くには、スピードのある選手が必要」と判断し、ケガから復帰してきたエース・(13)中濱健太を投入。鵬翔のスピードスターが前線に投入されたことで、攻撃が活性化し始める。後半4分にその(13)中濱が2人をドリブルで振り切り、CKを奪取。正確なキックで攻撃をけん引してきた(8)小原裕哉の蹴ったボールに、(14)芳川隼登が頭で合わせて同点に追いついた。

 しかし、2人で準決勝までの5試合で9点を挙げた、京都橘の強力2トップが黙ってはいない。後半19分に(11)中野からパスを受けた(10)小屋松が快速を飛ばして左サイドを切り裂くと、中央へパスを送る。「((10)小屋松は)最高のパートナー」と公言してはばからない、(7)仙頭が右足で押し込んだ。自身5点目であり、得点ランクトップの(10)小屋松に並ぶゴールで勝ち越しに成功した。

 だが鵬翔も執念を見せる。後半39分に(7)日高献盛がペナルティーエリアで倒され、PKをゲット。これをキャプテン(3)矢野大樹が冷静に蹴り込み、再び同点に追いついた。2‐2のまま突入した延長戦でも試合は決着せず、優勝の行方はPK戦にゆだねられた。京都橘の最初のキッカーは、大会を通じて圧倒的な技術とシュート精度、抜群のキープ力で決勝進出の立役者となった(7)仙頭。「好きな選手はロベルト・バッジョ」と話す(7)仙頭のキックは、右ポスト直撃。あこがれのバッジョは1994年アメリカワールドカップ決勝、印象に残る活躍を見せながら、PKを外して失意とともに大会を後にした。そして(7)仙頭もまさかのPK失敗。今大会、ビッグインパクトを披露した(7)仙頭は、関東大学リーグ1部の東洋大に進学し、プロを目指す。彼のサッカー人生はこれからだ。ロベルト・バッジョの「PKを外すことができるのは、PKを蹴る勇気を持つものだけ」という言葉を送りたい。

 対する鵬翔は5人全員がきっちりと決め、指導生活30年の松崎監督が「気持ちの強い子たちばかり。最高です」と褒め称えるメンタリティーを発揮し、宮崎県勢初の優勝を勝ち取った。鵬翔のストロングポイントを分析するなら、セットプレーと堅守だろう。セットプレーは「それほど練習しているわけではない」(松崎監督)と語るが、準々決勝以降、すべてのゴール(7点)をセットプレーから挙げている。試合の流れに関係なく、CKやFKからゴールを奪うことができるのは、とてつもない強みだった。

 守備面はGK(1)浅田とアンカー(5)矢野を中心に強固。2人が的確な指示を出し、相手にコースを限定させてボールを奪う。あるいは(1)浅田が驚異的な身体能力と鋭い読みでシュートをストップした。「攻撃が好き」と語る守護神は、ボールをキャッチした後の素早いフィードで、何度も攻撃の基点になっていた。「攻撃の優先順位を見分けて、スローイングやサイドボレーキックなどを使い分けています」とは(1)浅田の言葉だ。

 トーナメントを勝ち抜くためには、守備の安定が不可欠である。破壊力のある攻撃陣を擁しながら、守備の乱れやGKの軽率なミスで失点をし、大会を去ることになったチームを多く見てきた。そのなかで、鵬翔は堅守でリズムを作り、セットプレーで試合をものにしてきた。6試合中、4試合をPK戦で勝っての優勝。決勝で2度PKを蹴り、2本とも成功させた(5)矢野。準決勝では「決めれば勝ち」の場面で外し、決勝でも同じ場面を迎えた(1)浅田。「決めれば優勝。迷いはなかった」と、大舞台でもぶれることのない、強じんなメンタリティーで蹴り込んだ一撃が、歴史を塗り替えるキックになった。

 一方、準優勝の京都橘はPK戦の末に敗れはしたが、改めていいチームだった。チームの合言葉は「塊(かたまり)」。その言葉どおり、選手が流動的にポジションを取り、攻守に穴を作らず、ボールを保持しながら攻め込んでいく。塊という言葉からイメージする堅さではなく、アメーバのように柔らかく、つかみどころのない塊として、攻守に相手の嫌なポイントを突いてプレーする姿が印象的だった。守備では2年生守護神の(1)永井建成のプレーが目を引いた。京都橘の(1)永井と鵬翔の(1)浅田。決勝に進出した両チームに絶対的な守護神がいたことも、トーナメントを勝ち抜く上でひとつの要因になったといえる。ファイナリストとして国立の舞台に立ったのは、攻守にバランスが取れ、決定力を備えたチームだった。

◆試合後の選手・監督コメント

鵬翔・松崎博美監督
「最後に追いついた苦しい試合でしたが、子どもたちの笑顔が素晴らしかった。大会を通じて、精神的にも技術的にも強くなる姿が、日々目に見えていました。4試合、PKで勝ちましたが、気持ちの強いPKをずっとやってくれました。今年は宮崎県を勝つために、大学生との試合を通じて守備を強化してきました。今年から、子どもたちと年齢が近い上永(智宏)コーチが入りました。技術的な指導ができて経験のあるコーチですので、それがいちばんの成果かなと思います。今日は、国立の舞台を楽しもうといいました。気持ちの強い子たちばかりで、最高です。30年間指導をしてきて、楽しませてもらいました。サッカーをやってきてよかったです。県勢初の優勝ということで、大きな扉を開くことができました。宮崎のサッカーはこれからもっと強くなると思います」

鵬翔・(1)浅田卓人
「(この1週間は)いつもどおりの生活ができました。試合では、粘り強い守備を意識しました。PK戦は自信があったので、負ける気がしませんでした。(最後の場面は)決めたら勝ちなので、迷うことなく思いっきり蹴りました。(PKを勝てた要因は)集中力とか気持ちの部分です」

京都橘・米澤一成監督
「選手はよくやってくれたと思います。結果は残念でしたが、ここまで来られたことも含めて、選手をたたえたいです。鵬翔のセットプレーの強さは分かっていたので、対策はしていました。それでもやられたのは、相手のほうが上手だったということです。チームを立ち上げた当初は、ここまで来られるとは思ってもいませんでした。素敵な選手に出会えて、監督冥利(みょうり)につきます。選手にありがとうといいたいです。今日の悔しい思いを持って、来年また頑張ります」

京都橘・(7)仙頭啓矢
「いろいろな人の支えがあって、ここまで来ることができました。支えてくれた人のためにも、日本一になりたかったです。最後、PKを決められず、申し訳ない気持ちでいっぱいです。自分がゴールできたのはうれしかったですが、勝つことができなくて悔しいです。これからのサッカー人生で活躍して、応援してくれた人に恩返しがしたいです」

京都橘・(10)小屋松知哉
「大一番で点を取ることができず、実力不足を感じました。チームを楽にすることができなくて……。このチームで優勝できなかったことは残念ですが、この悔しさをバネに努力をして、またこの舞台に戻って来られるようにしたいです」

取材・文=鈴木智之(スポーツライター) 写真=高見直樹

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