FOLLOW US

Jリーグ激戦区、サッカー王国・静岡にあるフットサル。Fリーグ・アグレミーナ浜松の理念(新間智之・株式会社AGREY代表取締役)

2018.04.20

静岡はサッカー王国である。そして、4つのJクラブがある激戦区でもある。サッカーの文化が根付いた地域で、サッカーと似て非なるものフットサルはどのようにして存在しているのか。運営母体である株式会社AGREY代表取締役・新間智之氏がアグレミーナ浜松の理念を語る。(2018年2月5日収録)

写真・文=佐藤功(デジタルピヴォ!)

▼一度きりの人生、熱い思いを持って

――新間代表は、フットサルに関わる以前はどうされていたのでしょうか?
新間 ずっとサッカーでしたね。私は島田市出身ですが、小さい頃からずっとボールが近くにあるのが当たり前だったんですよね、サッカー王国・静岡ですから。私が高校3年生の時に、静岡県が高校サッカーで優勝した最後の年なんです。小さい頃から一緒にやっていた人がピッチにいましたね。

――では、ちょうどJリーグ開幕で盛り上がった時代ですよね。やはり、清水エスパルスファンだったのでしょうか?
新間 よくエスパルスは見に行きましたね。地元のスターたちがそのままエスパルスにいましたし、エスパルスの練習が高校の校舎から見れましたしね。当時は並んで観ていましたからね。

――高校時代はその同級生たちと、サッカーをプレーされて……。
新間 私は、高校サッカーはケガでやれなかったんですよ。高校卒業後に海外の大学行ったんですけど、そこで友だちがいなかったので、ずっとボールをリフティングをしていたんですね。すると急にメキシコ人たちが集まってきて、遊び感覚でサッカーを始めて友だちができたんです。ケガで辞めたもんですから、痛みもありながらやってましたね。そこから、日韓ワールドカップの後に帰国して、たまたまフットサルと出会ってたんですね。その当時はミニサッカーレベルで、ジュビロ(磐田)の方々とボールを使って遊ぶような感じでしたね。

――選手として活動もされていたのでしょうか?。
新間 そうなんですよ、やってましたよ。

――それで、どこかで引退という形になられたわけですね。
新間 そうですね。私も転職で東京に移り、所属していたチームがFリーグを目指すということでプレーヤーは辞めて下支えに回ったところからですね。

――そのチームが今のアグレミーナになったということですか?
新間 じゃないんですよ。そのチームは、リーマンショックの影響で規模が縮小してしまいました。アグレミーナの母体は、同じ時期に静岡でやっていた田原フットサルクラブというチームが母体です。

――そちらに移った経緯をお聞かせください。
新間 今から4、5年前ですが、私が体を壊して海外で倒れて1回心臓が止まったんですね。気づいたら家族が枕元にいたので、それ相当のことだったと思います。その後、リハビリ中に前代表の和泉から、観に来ないかと誘われてアグレミーナ浜松を初めて観たんですね。和泉とは、昔からフットサルを一緒にやった仲間だったんですよ。その時、地域のために何かできることはないか、と思ったのがきっかけですね。一度心臓が止まって死んでいますから、何か社会のために貢献しなければと考えていたんですね。ですので、フットサル業界はまだまだなところがあって苦しい部分もあるんですけど、熱い思いを持って継ごうと決意しました。アグレミーナがFリーグに所属して数年後にGMという形で営業をして、3年前に代表になりました。

▼地球規模は小さなことから

――経営規模についてですが、社員数は何名いらっしゃいますか?
新間 営業と事務員とスクールスタッフ合わせて、8名です。事業内容は、主にアグレミーナ浜松をメインでやっています。

――どのチームも外国人選手はおおむねプロで、他にプロ選手が何人かいるという形だと思います。浜松さんはいかがでしょうか?
新間 外国人選手プラス何人かいますね。ただ、私の考え方なんですけど、プロというのは10,000円でも1,000円でもいただいたらプロだと思うんです。ウチの選手はそういう意味で全員プロです。

――そういった意味で、選手にプロ意識を持ってほしいということですね。
新間 そうです。まだまだ全員がそれだけで食べられるというものではありませんが、そうでないとプロの機運は高まって来ません。

――経営をする部分で、一番お金がかかる部分はどういったことでしょうか?
新間 人件費ですね。スタッフだけではなく、選手も込みで半分以上ですね。

――Jリーグのような完全なプロというような扱いになると、さらに人件費がかさみますので大変ですね。
新間 そうですね。ただ、将来はそうしていかないといけないですから。

――体育館を借りたりといったことも、費用はかかると思います。
新間 かかりはしますけど、経営がひっ迫するというような状況ではありません。人件費の方がかかりますね。

――そのための活動として、スポンサー営業は重要だと思います。
新間 スポンサー営業もですが、地域の方々にとって夢になるように、おらがまちのチームになるような活動をしています。まずは知っていただく、フットサルを知っていただく、アグレミーナを知っていただく、選手を知っていただく、全部を同時にやっています。

――スクールの子たちも観戦に来られていますが、選手自らが営業をしているのでしょうか?
新間 選手が営業をしてくれることももちろんありますけど、ウチは選手がスクールのコーチをやっていることもあって相乗効果があるんですよね。子供たちに頑張る選手を見てもらうことと、子供たちが観ているから恥ずかしいプレーはできないということです。

――また、自治体や学校の協力もされていると思いますが。
新間 私たちは地域の訪問活動を本当に多くやってまして、年間に30回近くやります。そういう活動で、幼稚園だったり小学校だったり、いろんなことをやる中でみなさんをご招待したりしています。地道な活動ですが、大切なことですね。

――広報活動についてはいかがでしょうか?
新間 スポンサーさんの静岡新聞さんに協力をしていただいています。あとはSNSの活動は一生懸命やっていますね。インスタもそうですし、ツイッターからフェイスブックからすべてです。

――SNSはFリーグの中で、浜松さんは活発に活用されている印象があります。
新間 広報だけではなく、それぞれ選手もアグレミーナのアナウンス部も、あとファンの方々もですね。そういう方々が一生懸命発信してくださっていますね。

――浜松ファンの方々は本当に楽しそうで、発信源が多いと思います。
新間 そうですね、意識してはいないと思いますけど、生活の一部になっているのかなと思えますよね。本当にうれしいです。

――会社としての理念をお聞かせください。
新間 会社の理念はポスターにも出していますが、シンクグローバリー・アクトローカリーという言葉を使っています。これは地球規模で考えるためには小さなことからコツコツとやりなさい、というエコやリサイクルの話から来ているんですね。転じていけば、すべての事柄が一緒だと思います。大きなことを成し遂げるためには、コツコツやっていくことはすべて同じだと思いますし、地元に寄与できなければ優勝することもできませんし、フットサルがこんなにいいんだよということすら言うことができません。
そこにプラスで、グラスルーツという言葉を使って、いろんな方と横のつながりを作って支え合い草の根活動をしていきましょうと考えています。一番大きな理念といいますか考え方としては、人と人をつなぎましょう、それがすべて、ということなんですよね。自分自身が、海外で言葉がしゃべれない生活でコミュニケーションツールとしてボールを使った経験から、現代の子供たちにもゲームではなくボールを使ってひとつのルールの中でやってもらいたいですね。ボールはひとつのネットワークツールだと思います。その中に自分たちが存在していきたいという話をしてますね。

――また、バスケの3on3の.EXE(ドット エグゼ)をやられていましたが、総合スポーツクラブのようなイメージをお持ちでしょうか?
新間 少しはそうですね。地元の名前を広げたいということと、スポーツとの垣根を越えたいなということでやっていました。あとは1、.EXEは3対3ですよね。バスケの5人制がサッカーと同じとすれば、フットサルと同じようなイメージでおもしろいなという感じで2シーズンやらせてもらいました。

――静岡はサッカーどころであり、Jリーグクラブが4つ(清水エスパルス、ジュビロ磐田、藤枝MYFC、アスルクラロ沼津)あります。その中で、どのようにサッカーとフットサルは共存していくべきでしょうか?
新間 静岡県民にとってのフットサルは、まだまだサッカーには遠く及ばないのかなと思います。ただ、少しずつフットサルの有効性に気づかれている方々もいますし、少子高齢化もありますからサッカーよりもフットサルを幼少期にやっていこうという方々もいるのは事実です。JクラブもFクラブも、ホームタウンを活性化させて裾野を広げて、日本代表選手の輩出が共通の目的なんですね。JだからとかFだからとか関係なく、地域の子供の中から日の丸を背負う子供たちを作っていきたいという考え方は同じです。だからいろんな地域にいろんなチームがあるわけです。ただそういう中ででも、子供の頃にフットサルをやることがサッカーにとっても有効です。最近は、世界的にもGKの技術に少しずつフットサルの技術が入って来たりしています。そこは、自然の流れで一緒に歩むことができるんじゃないかと思っています。決して敵ではないですし、サッカーとは歴史も違いますし、20数年やっているところとまだまだ半分以下のフットサルとは全然違います。同じファミリーという考え方で我々はいます。

――他にもいろんなスポーツがあります。サッカーと同様に他競技と敵対するわけではなくて、横のつながりをお考えだと思いますが。
新間 いろいろやろうということは考えていますし、双方で応援し合って選手が行ったりスタッフが行ったりということはもちろんすでにやっています。スポーツで子供たちの未来を変えたり、経済だとか地域の活性化ができるのは私たちが信じてやまないところです。それがフットボールだからだとかではなく、スポーツ全体で地域の下支えができて、かついろんな障害をスポーツの力を使って乗り換えられるようなことができたらいいなということで私たちはやっています。

▼浜松自慢のクラブを支えてくれる人たち

――アシスタントMCのアナウンス部が5人います。珍しいパターンだと思いますが、何か理由があったのでしょうか?
新間 最初は1人ないし2人ぐらいと考えていましたが、応募がたくさんあったというところと、それぞれ面接してスタッフのアイデアで5人になりました。みんなそれぞれよかったと思いますね。

――これはお聞きしたかったのですが、アグレックマのSNSアカウントですが、中の人は誰でしょうか?
新間 あれはですね、誰だかわからないんですよ。アグレックマはうちの公式グッズのひとつでクマがユニフォームを着ているぬいぐるみ(編みぐるみ)なんですけど、いつのまにかSNSアカウントが出てましたね。アグレックマもそうですけど、もう一個非公式botがあるんですが、それも知りたいんですよ。

――スタッフではないのですか?
新間 違います、違います。なんとかアグーとかやらないですよ、手一杯ですから。

――では、サポーターの方でしたか。
新間 私も知りたくて聞いたんですけど、みんなわからないんですよ。サポーターの方も、この人じゃないんですか、いや違うの繰り返しなんですよ。

――私もサポーターの方に聞いたことがありますが、ファンタジーとはぐらかされました。彼らは隠しているんですね。
新間 本当にファンタジーなんですよ、僕もはぐらかしているわけじゃなくて、本当に知りたいんです。だからわかったら教えてください(笑)。

――勝手に名乗るなというわけではないんですね。
新間 そうですね。お会いしてお話はしてみたいなと思いますね。本当にウチは面白い人が多いんですよ。それが自慢ですね。

――F2発表があった時、絶対残留の横断幕はドキっとしました。
新間 あれはずっとやっているんですよね、ギャグで(笑)。

――『サッカーの真似がしたかったんだよ』とサポーターも言ってました。
新間 サポーターとボランティアスタッフさんと、連盟の方々とスポンサーさん、これはウチはどこにも負けないと思いますよ。

――そういった方々を惹きつける魅力はどういったものでしょうか?
新間 どうなんでしょうかね、どうなんですか?

――ホームの時のグルメなど力を入れられていると思います。そこは理由のひとつだと思います。
新間 私はあれでも足りないと思っているんですよ。非日常的空間を作るということがアリーナスポーツとして絶対やらないといけないことだと思います。そこに来ていただいたら、自分を忘れられるぐらい没頭して楽しんでいただきたいですね。まだまだ足りませんが。こ難しいのは、5,000人がマックスの会場に対して出展者の割合を絞らないとペイできなくなるんですよね。これがJと違うところなんですよ。そこも考えながら被らないようにしながら、いろんなものを出店していただく。夏場は生ビール無料でキリンさんにやっていただきましたし、タコスだったりブラジルのポンデケージョだったり、地元の和菓子店さんがアグレックマどら焼きを作ってくれています。

――一番やられていると思います。
新間 ぜひ、そういう取り上げ方をしてください(笑)。もっともっとやりたいですね、外に的屋さんが出ているぐらい。

――サッカーのイメージがそうですよね。サッカーのサポーターさんが『月に1回か2回ある大きな祭り』と言われていました。そこを目指されているのですね。
新間 名物グルメみたいなものがいいなと思いますね。どら焼きやカレーなど名物はありますけど、もっともっとですね。おもてなしの精神が日本人特有だと思いますので、アウェーの方々や初めて来られる方々に楽しんで帰っていただきたいというのはあります。アウェーの方が二度と来たくないと言ったら、私たちがFリーグやフットサルのファンを削ってしまうことになるので、それだけは意識していますね。

――他には、どこのクラブも選手はファンと近いと思いますが、特別近いのでしょうか?
新間 そんなに近くはしてないんですよね、あんまりベタベタしすぎてもと考えていますので。もちろん、お見送りでハイタッチやサイン会はしますけど、特別何かはやってないんですけどね。

――あとはサッカーどころということで、スポーツを応援することに慣れていることもありそうですね。
新間 かもしれないですね。浜松のトップリーグ所属の競技はウチだけなんですよ。そういう意味では応援しやすいのかもしれないですね。

――では、なんでしょうか……。
新間 浜松はお祭りが町を上げてとても盛り上がるので、ひとつのことに盛り上がる習性がある地域性なのかなと思いますね。

――いろんな要因が重なって、クラブの人気となっていることですね。
新間 そうですね。ひとりひとりが、自分のチームだと思っていただけてありがたいですね。クラブが何をしたかとそういうことではなくて、サポーターの方々が素晴らしいということだと思いますよ、単純に。

代表自らが振り返るアグレミーナ浜松の17/18シーズン。そして、フットサル・Fリーグの未来は?(新間智之・株式会社AGREY代表取締役)

SHARE

LATEST ARTICLE最新記事

SOCCERKING VIDEO