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危機を救うため今すべきことは行動。仙台・内野脩麻がリフティング動画に忍ばせた意図

2018.04.11

▼内野が訴えた

 2018年1月8日、駒沢ではFリーグ第33節、別の名を最終節が行われていた。そして17/18シーズン、Fリーグにおける最後の試合は、ペスカドーラ町田対ヴォスクオーレ仙台。内野脩麻が所属する仙台は1-2の敗戦、仙台は9位で全日程を終えた。

 試合後、内野が来るのを待っていた。先日公開したシューズの件の途中経過を軽く話した後、単刀直入に本題に触れる。そして「フットサルを始めて5年目が終わって……」と内野が話し始めた。

「最近店舗勤務をしていて、ちょこちょこお客さんにヴォスクオーレの選手ですよね?って聞かれるんだけど、認知度が少し増したのかな? それでもFリーグって存在を知らない人もいる。10年経ってるのに。スポーツ店のサッカー、フットサルコーナーで。これって危機感しかないよね。」

 内野のSNSにはこう記されていた。違和感がある。話してくれてうれしい、ではない。うれしいはずなのに、危機を感じていた。もちろん、批判めいたことは一切言っていない。だが、勘違いされる可能性がある。リーグ批判やクラブ批判になり兼ねない部分に触れてしまった。だが、そのリスクを承知で発信している。自分は彼に真意を尋ねるために駒沢に来た。試合は二の次だった。

 内野は自ら動いていた。

▼自分にも責任がある

「Fリーグが始まった時からテレビで観てきた」。内野はFリーグが大好きである。そして今、その憧れていた舞台に立っている。だが、そこは絶望の世界だった。本来なら、Fリーグの動員は右肩上がりで成長をしていかなければいけない。マイナーがメジャーになるためには、最低限のマストである。だが、11年右肩下がりである。

 そして言った。「プレーをしている自分にも責任がある」と。

 これは内野だけではない、すべての選手が苦しんでいる。目に見えるところで戦っているのは、彼らだからだ。最前線に立っている若者に、すべての責任が押し付けられているようなものである。

 だが、彼らは前を向けばいい。自分たちにできることは何か、そう考えればいい。もうインタビューではなくなっていた。アイデアを出す考える場となっていた。

 内野は語り続けた。

▼プロとしての自覚

 内野は選手としてプレーしながら、Fリーグのスポンサーでもあるゼビオに勤務している。そのお店での出来事が、あのメッセージである。

「僕は、直接お客さんとつながることができる」。内野は勤務先でそう考えていた。選手である内野が、お店でフットサルシューズの相談を聞いてくれる。働いていることがプロではないとは言うが、ファンサービスができる理にかなった仕事でもある。そして、直接ファンと接することができる場所にいるからこそ、「普及活動という部分では、プロとしての自覚を持たないといけない」と内野は言った。彼の心は、プロである。

 内野も『観てもらうこと』よりも前の部分、『知ってもらうこと』を見ていた。彼は店舗勤務である。客商売をしている人にはわかる、ただ商品を並べただけは売れないことを。それはFリーグにも言えること。ただプレーをしていても、観るわけがない。

 だが、『知ってもらうこと』が難しい。それができなかったのが、偉大な先人たちである。現役の有名な選手でもまだ弱い。スターだスターだともてはやされている選手たちは、フォロワーが1,000もいっていない者もいる。2,000あればいい方。外の世界では、誰も知らないレベルである。内野も1,000に到達していない。自らの社会的影響力のなさに、悔しそうな表情を浮かべていた。

 だからといって何もしないのか? その結果が崩壊寸前のFリーグである。内野は『知ってもらうこと』の例を出した。

「サッカーの延長線と思ってもらえるだけでもいい」。

 内野は貪欲だった。関連しているものも広告として使える。フットサルから入らなくてもかまわない、きっかけはなんでもいいのである。メインの横に添えられたものも立派な商品。選手がかっこいい、グッズがかわいい、おいしいグルメがある。様々な楽しみ方の提供がサービスだ。そして、いろんな楽しみ方をしている人々が共存する世界がスポーツである。スポーツは『お祭り』である。

 そして内野は動いた。言葉として訴えるのではなく、自らの意思を行動で示した。自らのSNSに全9回に渡るリフティング動画を掲載。本人曰く『内野チャレンジ』である。
「ひとまず内野チャレンジは終了します!!!
見ていただいた皆様ありがとうございました!
ぜひこれまでの動画の技に挑戦してみてください!
こういった形でもフットサルという競技に興味を持ってもらって、もっとたくさんの人が試合を毎試合観に来てもらえればと願っています!」

 すべてを終えた内野は、SNSに意図を明かしていた。

▼今しかできないこと

「フットサルを知ってもらいたいとか、よくしたい気持ちは一緒だと思う」。内野は真意を突いた。リーグ、クラブ、選手、すべてがそう思っている。それはメディアも同じ。自分も市場価値はない、誰も知らないいわゆる素人さんだ。でも、彼らの訴えを少しでも広めることで、後押しをすることができる。そして、サポーターもすでに後押しをしている。SNSにある、RTやいいねの数として見えている。それは、世界に拡散する力を持っている。積もりに積もれば、とてつもない力になる。

 現場にいるのは選手たちだ。その場にいることが許されない引退後ではできない、今しかできないことがある。考えているだけでは世界は変わらない。やらなければ世界は変わらない。

写真・文=佐藤功(デジタルピヴォ!)

仙台・内野脩麻が合図を送った……『内野チャレンジ』一挙まとめ!

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